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マネジャー諸氏に向けてのコラム

MBOのホント −MBOこそ、業績向上・人材育成をともに達成するマネジメントのカギ−

  • 公開日:2008/08/18
  • 更新日:2024/05/16
MBOのホント -MBOこそ、業績向上・人材育成をともに達成するマネジメントのカギ-

成果を重視する人事制度において、もはやその導入が当たり前になった感のあるMBO(目標管理制度)。しかし、現実のマネジメントにおいてはうまく機能していないケースも多く見受けられるようです。「もっと業績向上につながる目標設定を行いたい」「メンバー個々人の成長を考えた目標設定を行いたい」「MBOを通じて、部下のやる気を引き出すコミュニケーションを行いたい」・・・。今回は、こんな悩みを抱えたマネジャー諸氏に向けてのコラムです。

MBOは誤解されている。それはスキルではなく、マネジメントそのもの。
研修を通して、MBOへの誤解を解き、マネジャーの役割を再確認する。
マネジメントに正解はない。一人ひとりの違いを楽しもう。

MBOは誤解されている。それはスキルではなく、マネジメントそのもの。

MBOはすでに多くの企業で導入されていますが、マネジメントの領域においては二つの点でまだ大きく誤解されているように思えます。
一点目は「マネジャーがメンバーを従わせるためのものである」と思われていることです。
業績が向上し、メンバー個々人が成長している組織となるには、メンバーが自発的に目標を掲げて、さまざまなことに対して自ら働きかけていく必要があります。MBOはこうした状態が起こり、継続するようにマネジメントするためのものであって、決してメンバーを一方的に従わせるためのものではありません。

二点目は「MBOが評価のためのものである」と思われていることです。
確かに評価はマネジャーにとって非常に難しい仕事になっています。かつてはマネジャーの評価によって賃金に差がつくことはさほどありませんでしたし、ベースアップの仕組みもありました。
今はまったく違います。マネジャーの評価によって、大きく賃金に差がつくこともありますし、ベースアップどころか賃金が減ることもありえます。私にもマネジャー経験がありますが、評価が一番苦手でしたね。評価が難しいことの原因をついつい制度そのものに求めたくなるのですが、かといって査定や給与を決める評価のためにMBOがあるかというとやはり違うと思うのです。

MBOは誤解されている。それはスキルではなく、マネジメントそのもの。

以上がMBOに対して抱かれがちな誤解なのですが、実は私自身もかつてはまったく同じように誤解していたため、正直言って制度まわりの研修があまり好きではありませんでした(笑)。
では、MBO・評価制度は一体何のためにあるのでしょうか。
そもそもマネジャーの役割は組織の要請とメンバーの成長を同時に実現していくことにありますが、そのためにはコミュニケーションが欠かせません。中でも目標設定や評価の場面は非常に重要です。
なぜならそこは目標を伝えたり、評価を下したりするだけの場ではなく、マネジャーとメンバーがお互いの期待や思いをぶつけ合える場でもあるからです。MBOはそのマネジメントプロセスをサポートするものなのです。
つまり単なるスキルではなく、マネジメントそのもの。そう思えた時、私自身のMBOへの見方が根本的に変わり、研修に対する意識や姿勢もまったく違ったものになりました。

研修を通して、MBOへの誤解を解き、マネジャーの役割を再確認する。

弊社が提供する『HRMクエスト』は、マネジャーがMBO・評価制度を効果的に活用し、マネジメントの実践力を高めることを目的として開発された研修プログラムです。
ここでは様々な企業の受講者の皆さんを対象とする公開コースを例に、プログラムの中身の一部をご紹介することにします。
ちなみに公開コースにおいては、目標設定に関することのみを対象としており、評価場面は扱いません。
(※評価力向上や被評価者向けのセルフマネジメントなどのテーマも公開コース以外では行っております。)
2日間にわたる研修では、いくつかのケース研究・実習に、受講者同士のディスカッションを織り交ぜながら進めていきます。
例えば、最初のケースとして扱うのは、自転車に乗るのを覚えようとする子どもとその父親の話です。小学生でもわかるような話をなぜ?と思う受講者の方もいらっしゃいますが、このケースでの狙いは「目標とはそもそも何だろう」という意識のリセッションです。「目標」と聞くとどうしても辛いもの、シンドイものと思ってしまいがちですが、果たして本当にそうでしょうか。目標があるからこそ人は成長できるし、喜びを分かち合うことができるのではないか。目標がなくても生きてはいけるが、ある方が充実するのでは・・・。考えてみると当たり前のことかもしれませんが、ハッとされる方が多く、自分の日頃のマネジメントと照らし合わせて考える方も多いですね。私はこのファーストステップが、この研修の肝だと思っております。場に慣れていただくためにも、じっくりと時間をかけて行うようにしています。このケース以降は、MBOを取り入れた企業のマネジャー事例などを題材に、より実践的なケースを使ってプログラムを進めていきます。

研修を通して、MBOへの誤解を解き、マネジャーの役割を再確認する。

『HRMクエスト』は単なる知識学習の場ではありません。いくら概念を理解しても自分の体験や実感と結びつかないと実践には至らず、現場では役に立たないものです。その結びつけの役割を果たすのが受講者同士のディスカッションです。
例えばあるケースでは目標設定の場面を再現するのですが、マネジャーとメンバーの両方を体験していただきながらそれぞれの立場で感じた意見を出し合っていきます。

「マネジャーは体系的、長期的にものごとを考えるけれど、メンバーにとっては目の前のことが大事なんだな」
「目標を伝えるだけでなく、もっと背景を噛み砕いて説明しないと伝わらないな」

意見を交わす中でいろんな気づきが生まれてきます。こうしたプロセスを通してMBOへの誤解が徐々に解きほぐされていくのです。そしてMBOという制度に命を吹き込めるかどうか、またマネジメントそのものとして活用できるかどうかは結局マネジャー次第なんだ、さらにうまく使うと自分のマネジメントに大いに活用できるんだということを感じ取っていただくのです。

マネジメントに正解はない。一人ひとりの違いを楽しもう。

今の時代、マネジャーは大変厳しい環境に置かれています。業績圧力はもちろん、雇用の多様化、専門分化の進展、内部体制の強化・・・・。いろんなプレッシャーの中、「自分がやるしかない」と思いながら孤軍奮闘しているマネジャー。私の時代とは比べものにならないほどマネジャーの置かれた状況は厳しく、今のマネジャーの皆さんは本当によくやっているなあ、と尊敬の念を抱かずにはいられません。そんなマネジャーの皆さんが貴重な時間を使い、研修に参加してくださるのは「何かを掴みたい」という気持ちがあるからだと思います。その気持ちになんとかして応えたいといつも私は思っています。

私がトレーナーとして大切にしていることは三つあります。
一つは受講者が自由に話すことができる雰囲気をつくることを心掛けています。
公開コースの場合は、受講者一人ひとりの立場や事情や表現が異なる場合が多いので、特にこの点は心掛けています。リラックスした雰囲気ができれば、受講者同士の関係がフラットになり組織の中では言えないようなことも言えてしまうという公開コースの良さが出てきます。
残りの二つは、正解を出そうとしないこと、そしてお互いの違いを楽しんでいただくことです。
私はマネジメントに正解はないと思っています。一人ひとりいろんな意見があっていい。時には自分とはまったく違う意見が出て、既成の自分の概念の崩壊に近いようなことが起こることがありますが、それは自分を再生・拡大するチャンスでもあるのです。ですから研修の場では自分を解放して、ぜひ違いを楽しんで欲しいですね。その中で少しでも気づくことができれば、研修は受講者の皆さんにとって、とても価値ある時間になると思っています。

執筆者

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人材開発トレーナー

中川 靖浩

1961年生まれ。人材開発・情報出版企業に入社。経理部門でシステム開発・運用、収支管理などを担当。その後、情報誌の広告営業を担当。その後、営業マネジャーに。スタッフ経験・営業経験をベースに代理店統括部門へ。代理店施策の改革などを推進。その後、人材総合サービス事業部門の統括部門で、事業計画の作成、組織の再編、事業運営ルールの策定・運営などに携わる。2002年リクルート(現 リクルートマネジメントソリューションズ)のトレーナーになり現在に至る。

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