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『8つの基本行動』による受講者の変化

新入社員の特性を理解することが、成長につながる

  • 公開日:2012/01/06
  • 更新日:2024/03/25
新入社員の特性を理解することが、成長につながる

忙しさからなかなか新入社員に関わりきれない職場が増えていますが、弊社リクルートマネジメントスクールが主催する新入社員研修『8つの基本行動』は、1社1名から受講を承っております。ビジネスマナーと仕事の進め方の基本を実践的に学んでいただけることから、毎年多くの企業に新人社員導入研修としてご利用いただいています。
今回のコラムでは、『8つの基本行動』で数多くの新入社員育成に携わってきた高野亜季子トレーナーから、最近の新入社員の傾向と、『8つの基本行動』による受講者の変化を語っていただきます。

「迷惑をかけたくない」という気持ちが強い
意図がわかれば苦手なことでも逃げずにやり抜く
トレーナーも「相手の期待を考える」
たった2日間でこんなに変わる!
<新サービスのお知らせ>

「迷惑をかけたくない」という気持ちが強い

現在私は『8つの基本行動』のトレーナーを担当するとともに、企業のみなさまに対し研修内容を紹介するセミナーも担当しております。その際必ず最近の新入社員の特長と課題をうかがうのですが、特長として真っ先に「真面目で一生懸命」という声があがります。確かに研修でもテキストを一生懸命読み込み大事な所はマーカーやメモ、「時間内繰り返し練習を」と私が言えば何度でも繰り返す。適当に手を抜いてやろうという受講者は見受けられません。吸収しようとするその姿勢は本当に感心です。

一方で課題は何でしょうとうかがうと「教えられたことは一生懸命やるのだけれど、そこから先が物足りない」。例えば「資料作りにしてもこうした方がいいよと指摘するとその都度言われたまま直してくる。忙しい中毎回同じように指示しなければならず、そもそも資料を作る目的がわかっていればこうはならないはず」などのご意見が多いです。

実際に研修中も「声の大きさはこれくらいでいいのですか」「お見送りのおじぎの角度は何度が適切ですか」といった「正解」を求める質問も少なくありません。また研修のスタートにあたってまず今の心境を話してもらうのですが「失敗して迷惑をかけたくない」という声が最近多いように感じます。必ずしも新入社員をステレオタイプに決めつけたくはありません。しかし、分からないままやって間違えたら相手に迷惑をかけるし、そもそも挑戦して失敗したら格好が悪い。まずは正解や手本のとおりやれば無難だし叱られることもないというような傾向が多いです。そこで私が「テキストを閉じてください」、「失敗しても良いから自分の言葉で伝えてみましょう」、と言うと途端に動くことができなくなるところからも、その傾向が見てとれます。さらに気がかりなのは、表情が乏しく声が小さいことです。初対面同士、研修という非日常の環境に置かれているのですから緊張するなという方が無理でしょう。しかしグループワークやペアセッションなど自由に発言してもよい状況においても同様なのです。まるで指摘されることを恐れ、目立たないように存在を消しているかのようです。

そんな状態のまま職場に戻ったらどうなのでしょう。周囲は忙しさに追われる中、新入社員だからと手厚く親切にしてあげるのでしょうか。自分からサインを出さなければその存在にすら気づいてもらえない、一生懸命やりたいという気持ちはあるのにそれを発揮できない状況に陥り、そのままではストレスを生み、ポキンと折れてしまうのはないかと心配になるのです。

意図がわかれば苦手なことでも逃げずにやり抜く

今年の新入社員は真面目で一生懸命な特性を持っているので、学ぶ機会を与え、方向を明示すれば懸命に吸収します。失敗を恐れず挑戦することが大切なのだと気づけば、課題に取り組み、克服していきます。決して悲観せず、彼らは学び成長したいと願っている、その気持ちを受け止め関わり続けることが私の役割だと思っています。
挨拶ひとつとってもこの場合はこの角度でやってください、とは言いません。「なんのために挨拶するの?」というように、その行動の意味や相手に与える印象について全員で考えてからロールプレイに入ります。すると「指示されたから」「仕方なく」ではなく「挨拶くらいちゃんとできるようになったほうが良さそうだ」という動機付けにつながります。体で覚えてほしいところはDVDやスライドで手本を示してからペアになってロールプレイを行います。到達点をあらかじめ確認できることで初めての動きもイメージを持って練習できますし、「手本とはここが違うのでこうしたら」と相手へのアドバイスもしやすくなるはずです。

そうは言っても、ペアになった相手へのフィードバックで、明らかに手本とは違っているのに「いいと思います」と言って静かに終わろうとするケースも少なくはありません。「自分もできていないのに言えない」「人から欠点を指摘されるのは嫌だろう」と思っているからでしょうか。そのような時に私ははっきり伝えます。「目の前の人を見てください。この方はできるようになりたいのです。そしてあなたの一言でもっとできるようになるはずです。自分の勝手な気持ちでこの方の可能性をつぶすつもりですか」。すると「もっとこうしたら?」「さっきよりずっと良くなった」と、自ら感じたことを素直に相手に伝え始めます。ここにいるみんなはできるようになりたいし、このままじゃいけないと思っている。お互いが動かなければ誰のためにもならない。開始して1時間足らず、まさに相互学習を始める瞬間です。自分が今、目の前の人にできることは何か。徐々にですが自分中心だった世界が、他者の存在を認識することで変わり始めます。これこそがまさに全てのビジネスパーソンが持つべき基本姿勢かつ研修のテーマである「相手の期待を考える」なのです。

トレーナーも「相手の期待を考える」

「相手の期待を考える」の意味を理解した新入社員は精一杯自分で考えながら挑戦し始めます。
しかし先日、こんなことがありました。研修中、お昼で食べ終わったお弁当がひどい状態で積み上げられていたのです。さらに用意したスタッフへの労いの言葉もなければ、ごちそうさまの言葉もない。お昼明けの第一声、私は問いました。「『相手の期待を考える』はどこへ行ったのですか。この部屋の中ではやるけど、一歩外に出たらやらなくていい、その違いは何なのですか」と。言葉では理解をしているつもりでも、しっかりと体に落ちてはいないのです。答えは翌日に出ました。きれいに片付けられたお弁当箱。ごちそうさまの声。どうすべきかの答えを自分達で出したのです。誰に言われることなく、いつでも相手の期待を考え行動に移すこと。もちろん期待以上の行動であったことを私は褒めました。

細かいことですが遅刻はもちろんのこと、休憩前後のいい加減な挨拶、ポケットに手を入れて歩く姿、すべて私は厳しく注意をします。実際の職場では好んで細かな点まで注意したいという先輩・上司がいるでしょうか。何のためにここに送り出されたのかという企業側の期待を考えれば、摘んでしまえる危険な芽を全て摘んでしまおう、どんな細かいレベルのことでも改善できることは全て行おう、というつもりでおります。余談ですが、新入社員に反抗されたことはありません。なぜなら全ての行動の評価は相手が決めることを既に新入社員は研修を通じて理解しているからですから。

たった2日間でこんなに変わる!

研修も2日目ともなると、新入社員の変化も明らかです。テキストに則って繰り返すことが精一杯だった初日。それからたった1日で「もっとお客様のためにできることがあるのではないか」と自ら試行錯誤するようになるのです。「お客様の質問に答えられたらそれで終わりですか? 」と問えば「なぜ問い合わせがあったのか原因があると思うので調べてみます」「ご要望に応えられる商品がなかったので、社内で企画を出してみたいです」などと次々と手が挙がります。気がつけば表情も生き生きとしています。

新入社員達は、この研修で完璧にできるようになりましたとは正直言い切れないところもあります。しかしどうしてよいか分からなかった課題だらけの昨日とは明らかに違っているはずです。成長とは、これまで学んだことを取りこぼさず新しいことを積み重ねていくこと。新入社員達ならきっと頑張ってくれる、やり続ける、その確信をもって私は新入社員を送りだします。

終了したあと、嬉しいことに「名刺交換をしていただけますか」と列をなしてくださることがあります。一人ひとりの顔はさっきまでの研修受講者ではなく、会社を代表する一社員の顔です。「トレーナーはもういません。だからこれからは常に自分で考えちゃんと振り返られる人になります」と決意表明をする方も少なくありません。まさに研修の間ずっと言い続けた「相手の期待を考え自ら行動する」というメッセージが、新入社員にきちんと伝わったと思える瞬間であり、トレーナーという仕事のやりがいを実感する瞬間です。

<新サービスのお知らせ>

光栄なことに、多くの人事の方から「受講前後で明らかに行動が変わってビジネスマナーが身についていることが分かる」というお言葉をいただきます。『8つの基本行動』は、自信を持って社会人のスタートをきるための第一歩ですので、学んだことを是非職場で実践し、振り返り、さらに成長していただきたいと思っております。
とはいえ、新入社員が自律して成長していくのは、なかなか難しいことです。また企業としても自社内で社員の育成の場を多数準備することは労力を要するかと思います。リクルートマネジメントスクールでは、ビジネスパーソンに必要とされる約60種類のプログラムを厳選して用意しておりますので、必要に応じて是非ご利用ください。
もし、「長時間の研修に参加する余裕がない」という場合には、2012年4月より開講のリクルートラーニングクラブをご活用いただけます。3時間という短時間で、必要なポイントに絞ったスキルアップがはかれるプログラムを約80種類ご用意し、リクルートマネジメントスクール同様1人から受講いただけます。
『8つの基本行動』受講後、さらに新入社員を継続的に育成していくためのプラスαとして、リクルートマネジメントスクール、リクルートラーニングクラブを、是非ご活用ください。

執筆者

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HRDトレーナー

高野 亜季子

私立専門学校・短期大学にて14年間学生募集業務に携わる。その後進路アドバイザーとしてフリーに。年間約160校の高等学校より依頼を受け、キャリアに関する講演・マナー指導・面接指導を行う。 同時にキャリアカウンセラー教育のサポートや再就職支援活動、大学生の就職支援など、若年層を中心としたキャリア支援に力を注いでいる。 2008年、リクルートマネジメントソリューションズのトレーナーとなり現在に至る。 2011年文科省委託高等学校学習指導要領にかかわるキャリア支援プログラムの作成委員に任命される。

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