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モチベーションリソースが見つけづらい昨今に光明を

最近、部下とうまくいっていますか? 〜想いをつなげるコミュニケーション〜

  • 公開日:2009/05/11
  • 更新日:2024/05/31
最近、部下とうまくいっていますか? ~想いをつなげるコミュニケーション~

マーケットの成熟化が進んで成功体験が積みにくく、モチベーションリソースが見つけづらい昨今、部下とのコミュニケーションに悩んでいるマネジャーが増えているようです。弊社ではそんなマネジャーのために公開コース『部下育成のためのコミュニケーションスキル』をスタートさせました。今回は同プログラムの実施経験があり、そのほかのマネジャー向け研修の経験も豊富なトレーナーからのコラムです。

部下を苦しめてやろうなんて思っているマネジャーは一人もいない。
目先の現実の渦に巻き込まれずに、部下の過去や未来にも視野を広げる。
「自分のようなマネジャーをつくりたくない」・・・過去の体験が生んだ強い想い。

部下を苦しめてやろうなんて思っているマネジャーは一人もいない。

いわゆる“有無を言わさず部下を追い詰めていく”タイプのマネジャーの印象ってどう思われますか?
『部下育成のためのコミュニケーションスキル』では、こんなマネジャーを例に取ったビデオを冒頭にお見せし、簡単なエクササイズを行います。
受講者の皆さんにビデオの感想をお聞きすると例外なく「最低のマネジャーですね」という答えが返ってきます。「こんなやり方じゃ、部下がついてくるはずがないですよ」と。 さらに、「こういうマネジャーさん、皆さんの周りにいませんか?」と尋ねると、やはり思い当たるのでしょうね。一様に「いる。いる」と(笑)。

でも、
「この人はほんとに部下を苦しめてやろうと心から思って追い詰めているんでしょうか」
と投げかけると、皆さん「うっ」と言葉に詰まる。
「ちょっと待てよ。自分は今までその人のコミュニケーションのうわべだけで判断していたのか?」という気づきが起こるわけです。

私は、部下を苦しめてやろうとかダメにしてやろうなどと心の底から本気で思っているマネジャーは、世の中に一人もいないと思っています。
どんなマネジャーにも、部下が成長して、成果を挙げるためになんとかしてあげたいという想いがあり、それなくしては会社の業績を上げられないこともわかっているはずです。
しかし現実には、内面にある想いをうまく伝えられないケースが多いんです。本人はものすごく一生懸命に伝えようとしているのだけれど、部下は全くその想いを感じ取れていない。
こういうマネジャーと部下の関係は、互いにとって不幸であるばかりでなく、組織にとってもパフォーマンスが発揮できず望ましくない状態です。

こういった背景をふまえて 『部下育成のためのコミュニケーションスキル』は、マネジャーの「部下を成長させたい」という想いを部下の「一生懸命仕事に向かいたい」想いと照らし合わせ、部下を育てながら業績に結び付けていくためのフレーム(考え方)とスキルを身に付けていただくことを目的としています。

目先の現実の渦に巻き込まれずに、部下の過去や未来にも視野を広げる。

営業職のマネジャーを例にとってみましょう。営業目標に届かず、突破口が開けないような状態ってけっこうありがちですよね。
こうしたケースでは、部下の気持ちは限りなく目先の営業目標にだけ向けられた、「視野狭窄」の状況に陥っています。
こんなとき、マネジャーはどのように部下に接していくでしょう?
多くのマネジャーや組織が解決方法としてとるのは、現実を見つめて徹底的に問題の原因を探り、それを一つひとつつぶしていく方法ではないでしょうか。
「目標の数字にあと2000万円足りないから、その分の数字はどこからつくるんだ!?」
「どうしてアプローチできていないお客様が20件もあるんだ!?」
しかし、「今、ここにある」現実のみに固執してしまうと、マネジャーも部下と同じように視野狭窄に陥ってしまい、現状を打開できる突破口、いわば「兆し」のようなものはなかなか感じられないでしょう。また、問題点は部下もきっと頭では分かっているはずなんです。それを否定的にフィードバックされれば意欲も下がっていくに違いありません。

私たちがお伝えするフレームは、マネジャーが目の前にある現状から一度離れ、部下のこれまで(過去)とこれから(未来)に目を向けて、広い視野・視界でとらえていこうというものです。その際には問題の原因より兆しに注目し、伸ばしていこうというアプローチをとります。
「目標にはまだ遠いかもしれないけど、今は3000万円しっかり受注できてる。どうやって受注できたか思い出してみようよ」
「今の数字だけ見ると確かに苦しくもなる。でもいったん今の数字から離れて、目標達成できた自分を想像したらどんな気分かな?」
さらに、部下の過去に遡り、忘れかけていた想いをリマインドさせます。
「そもそもどうしてこの会社に入ったんだろう」
「将来はどうなりたいと思っていたんだろう」
「その気持ちはどうしてなくなったんだろう」
「ほんとになくなったのかな。どっかにあるはずだよね」
「ここまで頑張ってこれたのはなんでだろう」・・・
そんな対話の機会を持ちながら部下の想いを引き出して持ち味や、その人らしさを再確認し、それをモチベーションリソースにしていくコミュニケーションの方法が身に付けるべきスキルの部分です。

特にフレームについては新鮮に受け止められる方が多く、先ほど例に挙げた現状の問題解決型アプローチで行き詰まっている方ほど「目から鱗」です。この点が私たちに提供できる独自の価値ではないかと思っています。
もちろんわずか1日のプログラムなのでできることには限界がありますが、私には自分で決めているゴールがあります。それはプログラムが終了したあとに、受講者の皆さんが自分の部下一人ひとりについて想いをはせること。
昨今の組織環境では、すぐ近くにいてもマネジャーは意外に部下のことを知らないものです。「そういえばあいつの得意なことって聞いたことなかったな。明日聞いてみようか」
小さなことかもしれませんが、そんな兆しが大きな変化に結び付いていくのだと思っています。

「自分のようなマネジャーをつくりたくない」・・・過去の体験が生んだ強い想い。

トレーナーとしてさまざまな研修プログラムを担当しますが、中でもマネジャー研修には強い思い入れがあります。
業績達成と部下育成の両方を求められるマネジャーの皆さんは本当に大変だと思いますが、それを乗り越えていける強いマネジャーになってほしいのです。普段は部下の正直な気持ちをしっかり受け止めてくれる上司、でもいざというときは部下に厳しく要望する。ただ、その人の言うことには何か一本「芯」が通っている。そんな「強いマネジャー」なら部下はついていきますし、おのずと強い組織にもなっていくものです。

私にマネジャーへの想いが強いのは、自責の念があるからなのでしょうね。
私もトレーナーになる前はマネジャーを経験しましたが、決していいマネジャーではなかったと今でも振り返る時があります。自分ではマネジメントというものをわかっていたつもり、できているつもりでしたがそうではなかったんです。
研修で昔の自分のようなマネジャーの方と会うと、過去の場面がフラッシュバックしてつらい思いにかられます。もっとこうしておけば成長させてやることができたんじゃないか?
でも、残念ながら時間を戻すことはできません。
今の私には、トレーナーとしてできる精いっぱいのことをやるしかないんですよね。
不幸な関係のマネジャーと部下が生まれないように、お互いが想いをともにして、より生き生きと働ける方が一人でも増えるように・・・そんな気持ちを忘れずに、トレーナーとして受講者の皆さんと向かい合っていきたいと思っています。

執筆者

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人材開発トレーナー

高橋 常祝

1960年生まれ。大手旅行代理店に入社。支店で法人営業を7年間担当。その後、本社に異動、グループリーダーとして法人営業施策や営業担当者の教育を担当。この時の経験がトレーナーとしてのベースに。一方で地域の活性化というテーマに興味を抱くようになり、通産省(当時)の外郭団体に転職し、中小企業振興事業に携わる。販路開拓課長、情報企画課長、指導課長を歴任するが、指導課長として職員の人事評価システムをはじめとする人事制度構築や、人材開発関係の業務が中心となる。2001年、リクルート(現 リクルートマネジメントソリューションズ)のトレーナーとなり、現在に至る。

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