連載・コラム
バブル世代は黄金世代
置き忘れてきた「人と人とのマネジメント」を求めて
- 公開日:2007/03/01
- 更新日:2024/03/25
大量採用で、4人に1人が大手企業に入社。バブル期に入社した世代がマネジメント世代となりつつあります。日本が、かつて経験したどの時代とも異なる時代を生き抜いてきた適応力を称える声がある一方で、「部下のマネジメントがちょっとねぇ」といった声を耳にすることもあるこの世代。本当のところは、どうなのでしょうか? 日頃、マネジメント研修を通して彼らと接することの多いトレーナーに話を聞きました。
- 目次
- 未曾有の環境変化が生んだ、バブル世代のマネジメントへの戸惑い。
- 自分の志、人に対する思い、マネジメントの本質を呼び覚ます研修。
- 人や組織で勝負する時代。カギを握るのはバブル世代のマネジメント力。
未曾有の環境変化が生んだ、バブル世代のマネジメントへの戸惑い。
私が担当するマネジメント研修は、マネジャー経験1、2年の方を対象とした振り返り研修が多いのですが、最近はバブル期に入社した皆さんと接する機会が増えてきました。「あの時の世代が・・・」という感慨は覚えますが、かといって、彼らがよくいわれるように世代的に何か固有の特質を持っているわけではないと感じています。そんな彼らがなぜ部下のマネジメントに戸惑いを感じているのか? やはり企業人として過ごしてきた期間に起こった環境変化があまりにも凄まじかったからだと思いますね。実際、これほど短期間に会社の組織や方向性を変えられた人たちもいないでしょう。多い人で3、4回は人事制度の変更にあっている。こうした激流の中を何とか踏ん張って生き抜いてきたのがこの世代です。
彼らは現在もプレイヤーとしての力を求められることが圧倒的に多い世代ですが、それは問題なくやっていける。自分の業績を上げたり、専門性を高めることに関してはものすごく長けています。本質的に何が大事かもわかっている。ぼやっとしていても成果は上がらないことも。業績に対する責任感も強い。その一方で、人と人とが関わり合いながら仕事をするとか、一緒になって何かやるといったお互いの関係で動いていく経験は少なかったといえます。制度がどんどん変わり、自分のやらなくてはいけないことは増え続けていく中で、確かに個の力は付いた。しかし本来ならばその期間に先輩と一緒にできたはずの成功失敗の積み重ね、後輩の面倒を見ながら業績を上げていくといったことができなかったわけです。こういう経験がないままに、やがて先輩はいなくなり、自分たちがマネジメントする時代がやってきた。けれど、どうにも勝手が違う。「おいおい、新人ってどうやって育てるんだっけ?」「自分がメンバーの時って、どんなことで悩んでいたんだっけなぁ」一体どうしたらいいんだ? と、戸惑っているのがこの世代の多くのマネジャーたちではないでしょうか。
ただし、幸いなことに彼らは人と人との関わり合いでマネジメントをする時代を知っています。入社して数年のことかもしれないけれど、かすかに記憶に残っている。そこに突破口となるヒントがあるはずなんです。まだ上司が椅子に座ってゆっくり新聞を読んでいられた時代、「自分と上司はどんな関係だったんだろう」、私たちの研修はそんなシーンを一緒に思い出すことから始まったりします。
自分の志、人に対する思い、マネジメントの本質を呼び覚ます研修。
マネジメント研修に参加する人たちというのは、基本的にノウハウやハウツーに期待するケースが多いのですが、バブル期入社世代は特にその傾向が強いかもしれませんね。多くの人が「どうすればマネジメントがうまくいくのか」「どのように部下に接すればこっちをむいてくれるのか」という姿勢で研修に臨んできます。でも、実は大切なのはそういうことではないんです。
自分がマネジャーとして「ほんとに大事にしたいことは何なのか?」「そもそも部下という存在をどう思っているのか?」「人ってそもそも何を信じているのか?」・・・。人や組織を動かす力は突き詰めていくとこういうことで、ルールやノウハウじゃないんです。そこに気付いた人は、自分の中にしまいこんで忘れていたことをぱっと思い出すんですよね。当時の上司との関係の中で何を思っていたのか、どんな時に成長を感じたのか、自分が悩んだ時にどうやって立ち直ったのかを一瞬にして思い出す。そして、「そういえばこの前メンバーにちょっと声を掛けたら、やけに元気になっていたけれど、アレもこういうことだったんだ」といったように過去の経験が今とつながっていく。「そうか、そういうことが大事だったんだ」「考えてみればオレだってそうだったんだもんなー」自分の志や人に対する思い、本質がわかってくる。その段階に行くと行動が変わっていきます。それこそメンバーへの声掛けとか、出勤時間を早めてメンバーと話すとか。先日の研修でも実際にいらっしゃいましたよ。「木村さん、正直言って朝1時間前に出社するのはほんとに辛い。けどそうやって机に座って、メンバーが来た順番に話を聞く、そのことがきっと何かの力になってメンバーに伝わっていくと思うんですよね」ってね。「あいつのために」と考えてくれる上司のために、部下が頑張れないわけがないでしょう。ほんと、それだけなんですよ。マネジメントというのは。
マネジメントというのは時代が変わってもそう大きく変わっていくものではなくて、人が人に対して関係していくことが原理原則なんです。研修の場では彼らが大事にしたいことを確認する、ちょっと置き忘れてきたことを思い出してもらう、我々が提供できるコアも突き詰めるとそこにあり、他にはない強みだと思っています。コンテンツを学んだり理解するのは、彼らには簡単。スキル研修をするくらいなら本を読んでもらった方がいいんじゃないでしょうか。
人や組織で勝負する時代。カギを握るのはバブル世代のマネジメント力。
バブル崩壊後の時代は、日本の企業に貴重な経験をもたらしてくれました。企業はいろんなものを磨き上げていって、世代間競争を生き抜いてきています。そうした中でもはや戦略やマーケティング力の違いでは勝負できなくなっています。では、これから競争力となるものは何か。例えば、ある会社を訪問した時に「この会社、なんか元気でいいよね。気持ちがいいよね」と感じることがあります。こういうものが企業間の差をつけるような時代になっていく。それを創り出していくのは組織や仕事へのロイヤリティや、一緒に仕事をしている仲間への誇りとか信頼感ではないでしょうか。昔とは違った意味で、人で勝負する時代。日本企業は本気になって人や組織に対するマネジメントを身に付けないと弱っていきます。実際にチームや人への動機付け、マネジメントの軸足を移していかないと成果も上がらないし、モチベーションも上がっていかないことに多くの企業が気付き始めています。
私はバブル世代と呼ばれている人たちがこうした時代のカギを握り、企業のあり方を変える大きなインパクトを持っていると思っています。バブルの前、中、後、そして回復期である現在を知り、これまでの日本にもなかった価値の大転換が起こった時代を生きてきた彼らの経験は非常に貴重です。本質的なことを理解でき、語ることができ、危機をどのようにしたら乗り越えていけるかも経験している。彼らなら若い世代にもきちんと向き会えるはずです。さらに、これは研修の現場でびんびん感じることですが、彼らはほんとに頑張る。ミッションをやりきっていく力にはすごいものがあります。昭和40-50年代に世界と伍していこうとしていた団塊の世代と同じくらいのエネルギーを秘めている。ここへマネジメント力が付いてきたらまさしく鬼に金棒。
かつての世代から引き継いだ遺産と、彼ら自身が未曾有の体験の中から学びつかんできたものが、今の環境の中でマネジメントとして実践できた時、私は盲目的な欧米追従型ではない日本型の組織運営ができると思います。そして、その結果として、成果主義が本当に日本に合った形として定着していくのではないかと期待を寄せています。彼らにはたくさんの幸せな部下を育ててほしい。そのためにはどれだけ苦しんでも構わないというくらいの意気込みで取り組んでほしい。それは自分自身を成長させることにつながっていくのだから。
執筆者
人材開発トレーナー
木村 益穂
1975年リクルート入社。新卒採用企画営業を担当。さまざまな規模・業種でお手伝いを行う。その後、教育機関の学生募集の企画営業を担当。マネジャーとして債権管理部門を立ち上げ、西日本経理部門を担当した後、西日本教育機関広報部の責任者に。1997年、リクルート(現リクルートマネジメントソリューションズ)のトレーナーとなり、現在に至る。
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