「自己実現」のための仕事 新人・若手が研修でつかむもの

執筆者情報
人材開発トレーナー
江原 薫

私の場合、新卒者の導入研修から、2年目、3年目のフォロー研修までをお手伝いさせていただくことが多々あります。企業の人事・採用担当者の方々から多く聞かれる言葉として「いい人材がなかなか採れない」「最近の若者は何を考えているのかよく分からない」「どうも元気が無くて困っている」「若年層の離職率を何とかくい止められないものか」というものがあります。
そんな新人・若手の研修の現場で起きたことをお話しさせていただこうと思います。


「今年の新人たちは、本当に素直でいい子たちですよ。特に問題もありません。面談にも前向きですし」

入社時に新入社員研修を担当させていただいたある企業の半年後の人事の方の言葉です。
フォロー研修直前に打ち合わせをさせていただいて、その後の様子を伺ったときのことでした。
ところが実際にBCSP研修を行った現場では、不満、悩みが出るわ出るわ・・・(苦笑) 「辞めようと何度も考えている」「自分はもっとこうした方がいいと思っても上が動いてくれない」「面談では、評価に関わるから元気です、って言ったけどホントは全然元気じゃない」
「顧客のため、とか言っているけど内部はそうじゃない。がっかりしている」などなど。
BCSP研修では、「そうは言っても、前に進まなきゃいけないのが現実。そんなときに自分が今までの経験の中からつかんできたものは何ですか?」と徹底的に問いかけていきます。
初めは文句だらけだった受講者の方々が重い口を開きます。「・・・・・・う〜ん、自分の場合は初めはプライドがあって人に聞けなかった。でも聞くことで早く問題が解決するのなら、と考えてみんなに聞き回った。そうしたら、周囲が自然に協力してくれるようになった。ダメだと思っていた物事が前に進んだ」
「・・・ふ〜ん。そういう話なら、私も・・・」と次から次へと受講者の方々の体験談が続きます。みんなが体を乗り出して、お互いの話に聞き入っています。

「江原さん、私、ショックでした。自分が新人だったとき彼らと同じ気持ちだったのに。
それを全然分かってあげられてなかった。忘れてしまっていたなんて…」

実は、この企業の人事担当Aさんは、3年前に私が担当した新入社員研修の時ときのメンバーでした。
自己申告制を活用して「若手の私だから、新人の方たちの気持ちも分かってあげられる、年が近いから、悩みや通ってきた道も共有できるはず」と人事採用と育成チームに立候補して、担当者としての第1弾の研修だったのです。
Aさんは「分かっていたつもり」が全く違ったことにショックを受けられていました。
「江原さんには素直に言うのに、私には言ってくれていなかったんですね。でも、私も確かに前はそうでした。会社の人たちには言えなかった自分がいました」とおっしゃっていました。
BCSP研修の場ではこういうことがしばしば起こります。ただ、単に自分の体験を語る、そしてその中からつかんだもの、自分が集中するときのポイント、持続させるコツを言語化することによって、もう一度自分自身にできること、やりたいことを再確認する、そういう研修だからです。
この研修の面白いところは、受講者の方々だけではなく、後ろでオブザーブをしている人事育成担当者の方々の中にも「何か」が起こってくるところです。

「こんなにも人に自分の言いたいことを伝えるのが難しいなんて…」

BCSP研修では、「入社動機」「将来の夢」「会社へのイメージ」「仕事を進めるときの判断基準」「日ごろ大切にしている姿勢」をシールシートに思い思いに書いてもらい、グループで声を出して一人ひとり読み上げながら模造紙にわいわいがやがや貼っていきます。
そこへ、「日ごろ仕事を進める上での判断基準ってどんなものがありますか?」と問いかけます。
「えっと…、上司の言うこと。自分ではまだまだ分からないことが多いから、まずは上司の言うことをやる」
「じゃあ、上司が死ね! と言ったら死ぬの??」ここで受講者の方々は苦笑します。
「まさかあ〜〜〜(笑い)」
「そうすると、上司の何を判断基準にしているのですか? もっと具体的に言ってみて」
「う〜〜ん、難しいなあ…。私の上司は仕事がすごくできる人で、分からないことがあると何でも答えてくれる。そこを尊敬している。仕事の知識、かなあ?」
こんなふうにあいまいだった言葉を明確にしていきます。判断基準が同じ「上司」という言葉でスタートしても、掘り下げていくと、それが「その人の持っている知識」であったり、「その人自身の人柄」であったり、さまざまであることに気づきます。
自分と人との考え方、感じ方の共通点・相違点を明確にすることによって、本当のコミュニケーションを体感していきます。
つまり、「自分が伝えたいことをダイレクトに相手に伝えること、それが伝わってこそ自分のやりたいことの実現に一歩近づくこと」を学んでもらうためです。

「何を考えているか分からない」といわれている若手の受講者の方々の本当の姿が、どんどん明らかになってくる瞬間です。
また、受講者自身も、言葉を明確に掘り下げていくことによって、自分の考え方、感じ方、仕事への姿勢が明らかになっていくことに驚き、前に進むきっかけをつかんでいきます。

「仕事って、自分を殺すことだと思っていました。普段の自分とは全然違う自分をつくってやることだと…」

研修開始時にはこんなショッキングな言葉を言っていた受講者の方々が、研修終了時には、「自分らしく、自己実現のために仕事をするということ」の意味をそれぞれつかんで帰る、そんな素晴らしい瞬間に立ち会えることはトレーナーとしてとても幸せなことです。
疲れ切っていた顔が、新人研修のときのようにまた、きらきら輝いているのを見て、心から「頑張れ!」と声をかけずにはいられません。

また、研修開始時の受講者の方々の様子にショックを受け、距離を感じていた人事育成担当者の方が、積極的に受講者の輪の中に入っていって熱心に話している姿もよく見かけます。
ある人事採用担当者の方は、泣きながら「この研修の間、後ろに座っているのが苦痛でした。ずっと、みんなの中に入って私も話したい、って思っていました」と最後におっしゃいました。
そんなときは、もう我々トレーナーの存在はみな、忘れています。
ちょっと寂しいのですが、「研修の終わりには受講者の方々が自分たちでしっかり立ち上がっていて、トレーナーなんか必要なくなっている」というのが私の目指す最高の研修の場なのです。

まとめ

どんな研修をしていても、必ずいつも信じられるのが「みんな自分を、仕事を通じて活かしたいと思っている」ということです。その「思っているんだけど・・・・・・」を口に出してもらう、「思い」を共有する、「思い」の共通点、相違点を「味わう」ことによって、お互いを深く理解し、新たな発見をし、また日々を一歩一歩進んでいくことのお手伝いをさせていただいていると考えています。
たった2日間、3日間の研修の場で「一生付き合う」つもりで受講者の方々とは向き合っていますが、トレーナーの仕事は、そのわずかな時間の中で、受講者の方々が自分の足で立ち上がって前に進むきっかけを提供することだと私は思っています。
受講者の方々、人事の方々が、目を輝かせていつまでも話をし続けている中、「こっそり」去っていく寂しさはありますが、それこそ本当に「研修が活きた」と言えるのではないでしょうか。

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