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面談という機会を活かしているだろうか?

「あくび保留」に見る人事評価制度の運用

  • 公開日:2007/01/01
  • 更新日:2024/05/31
「あくび保留」に見る人事評価制度の運用
「あくび」がきっかけで契約保留に
「評価面談・目標設定面談」はプロ野球の「契約交渉」である
「決まりごと」ではない「業績向上と人材育成」のための人事評価を目指して

「あくび」がきっかけで契約保留に

プロ野球が契約更改シーズンだ。(この原稿は12月中旬に書いている)
最近では大リーグに行く選手の話題ばかりがニュースになっているが、日本国内でも契約更改で、各選手が球団フロントと交渉を行っている。大リーグと違って、代理人が立つことはほとんどなく、日本ではまだまだ選手本人が直接交渉するのが主流のようだ。そこで、冒頭の「あくび保留」という言葉がニュースになった。
概要はこうだ。
契約更改交渉の際、年俸の増額を提示されたにもかかわらず、その選手は契約更改を保留した。理由は「球団幹部に交渉中、“あくび”をされたから」というものだった。

ただ、これを「プロ野球という世界の特別な出来事」と見ていてはいけないと思うのだ。

「評価面談・目標設定面談」はプロ野球の「契約交渉」である

成果主義人事制度の導入や、それにともなう目標管理制度による業績考課制度の導入、そしてその賃金との連動。こういった仕組みを導入している企業は多い。とある調査では、成果主義人事制度の導入は7割を超えているという。この制度がプロ野球の世界と同じ、というとさすがに極端かもしれないが、昔より近いものになっていることは確かだ。
プロ野球でいう契約交渉は、いわば目標管理制度(MBO)の「評価面談」「目標設定面談」にあたると思う。そしてプロ野球選手が「部下」、球団フロントが「上司」だ。
さて、球団フロント的立場である「上司」だが、皆様の会社の上司たちは面談であくびなどしていないだろうか?
筆者はこのニュースを見て、世の中の管理職…特に部下と評価面談や目標設定面談を行う評価者たちが、どれほど自分に引き寄せて考えたのだろうか…、とふと考えた。多分ほとんどが特別な「プロ野球」というシビアな世界での出来事だと思って自分と関係あるとは思わなかっただろうし、たとえ少し考えてみても自分はあくびなんぞしていないと思っただろう。

もちろん、当該球団側も「あくびをした覚えはない」と言っているし、本当のところはわからない。しかし、たいていの場合、評価される側は、評価する側のちょっとした態度について敏感であるものだ。ここに評価する側と評価される側の立場の違いによる意識の違いがあらわれていると思う。たとえあくびはしていなくても、不思議なもので「面倒だな」「嫌だな」「納得させてやろう」そういう思いは相手に伝わるものなのだが、意外と評価する側はそれを忘れている。

「決まりごと」ではない「業績向上と人材育成」のための人事評価を目指して

さて、これを読んでいるのは人事の方が多いと思うが、皆様の会社の管理職と部下の間ではどんな面談が行われているだろうか。
上司は部下の過去半年(もしくは1年)をともに振り返り、次期に向けて話し合う場となっているだろうか?また、部下の側もそれを承知して十分に準備をしたうえで面談に臨んでいるだろうか?それより何より、お互いが「ただの決まりごとだから」ではなく、目的や意味をしっかり理解して面談という機会を活かしているだろうか?
うまくできていないとしたら、上司側にも、部下側にも原因があると思う。

・面談の機会を活かそうと思っていない(意識の問題)

・制度のルールを知らない、面談のやり方がわからない(知識・スキルの問題)

・そもそも目標設定がしっかりできていない(MBO全体の問題)

特に意識の問題が背景にあり、目的や意義の理解から必要な場合、単に「説明する」だけでは不十分なことが多い。本来伝えたいのは、評価制度を通じてPlan-Do-Seeサイクルをまわし、組織の業績向上と、社員の成長を実現していく、ということである。
これらを伝えるためには、「トレーニング」と「ガイダンス」という手法が考えられるが、皆様の会社ではどのように行っているだろうか?

下記に「トレーニング」と「ガイダンス」の違いを示した。知識を身につけてほしい、短時間で実施したい、そういうことが理由で「ガイダンス」形式になることは多いと思う。

< トレーニングとガイダンスの違い >

< トレーニングとガイダンスの違い >

ただ、私自身、コンサルタントとして企業の人事制度改訂を行い、MBOの意義や目的を説明することは多かったが、その場は良くても実際にはなかなか伝わっていかないと感じていた。

例えばこんな方がいらっしゃった。
人事のご担当として制度ガイダンスを行った直後、参加していた以前の部署の同僚に、こんなことを言われたそうだ。
「『結局、MBOって面倒が増えるってことだよね?』と言われてしまったんです。そんなことは一言も言ってないし、そういうつもりも人事としては全くないのに、なぜそんなふうに伝わってしまうのでしょうか・・・」

今思えば、目的や意義を説明し、やり方を丁寧に説明してはいても、なかなか社員には伝わりにくかったのだと思う。それが「ガイダンス」という手法の限界だ。
目標設定はどんどん時期がずれ込むし、内容もレベルアップしない。そして面談は人事に言われてやるものになり、部下も意義を感じなかったり、場合によっては、部下が上司に対して不満を感じる場になってしまう。結果、「あくび保留」なんてことになるかもしれない。

その点、「トレーニング」という手法は有効だとつくづく感じる。
時間はかかるが、そもそも、人の行動を変えようとしているとき、時間は必要なものではないだろうか。
尚、「気づきをもたらすトレーニング」については、弊社組織行動研究所のMonthly Reportに詳しく掲載されているので一度ご覧いただくとわかりやすい。
中でも、図表2 自己概念の変容プロセスについて、特に注目していただきたい。

図表2 自己概念の変容プロセスについて

新しい概念(この場合は「評価制度の意義・目的」など)を獲得するには、集合研修形式で、専門の養成を受けたトレーナーのもと、グループワークで周囲の受講者の考えと自分の考えを比較し、気づきを得ていくのが効果的であることがわかる。

意義を感じた上でやり方を学ぶことができるのと、「面倒なもの」としてやり方を教えられる(場合によっては「押し付けられる」と感じる)のではずいぶん違うだろう。
それは評価者、被評価者どちらにも言えることだと思う。

皆様の会社で、MBOがうまくまわらないと感じていらっしゃるのなら、できないことを嘆くだけでなく、ぜひ一度「ガイダンス」ではなく「トレーニング」という手法の可能性も視野に入れてみてはいかがだろうか。

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