- 公開日:2025/03/03
- 更新日:2025/03/03

株式会社ベルシステム24は、就業前のスキル習得支援を行う「SUDAchi」に、生成AIを活用した自動応答ロールプレイング研修アプリをいち早く導入している。また、ビジネスのさまざまな局面で生成AIの活用を力強く進めている。HR本部 事業人事部 兼 デジタル人材戦略部 部長の岩堀司氏と、業務統括本部 FHR部 人材戦略局 人材戦略G グループマネージャーの雫石有沙氏に詳しく伺った。
AIが相手だと電話用の声を出すのが恥ずかしくない
ベルシステム24が生成AIを活用したロールプレイング研修アプリを導入しているのは、コンタクトセンター業務への就業前に必要なスキルや専門知識の習得など幅広い研修を実施するトレーニング施設「SUDAchi」である。
「SUDAchiは、2018年から始めた就業支援プログラムです。働きたいという想いはあるけれど、スキルが不足している皆さんを支援し、活躍を後押しすることを目的としています。5~7日間のプログラムで、電話応対、タイピング、ビジネスマナーなどの基礎スキルを学んでもらうと共に、働く上でのマインドセットを醸成します。受講後は実務に就き、現場で基礎スキルを磨きながら、担当クライアントのサービス知識を実践的に身につけてもらいます。SUDAchiは、定着率向上に貢献しています。受講者は未受講者と比較して、配属後の初期離脱者が少なく、その後の定着率も明らかに高いのです」(雫石氏)
「SUDAchi」は、段階を踏んで少しずつ学んでいけるプログラム構成を心がけているという。
「1日目、受講者は電話には一切触れず、パソコンの基礎やビジネスマナーを学びます。2日目から、電話応対の学びが始まります。何か1つを覚えたらロールプレイングするのを繰り返すのが特徴です。知識詰め込み型ではなく、電話応対スキルを実践的かつ着実に身につけられるプログラム構成になっています」(雫石氏)
この2日目に使うのが、ロールプレイング研修アプリである。「私たちは今、初歩の電話応対のロールプレイングに、生成AIを取り入れたアプリを活用しています。以前は、受講者同士がペアで電話応対を練習していました。しかしそのやり方だと、相手に電話用の声を出すのが恥ずかしくて、上手に話せない受講者が多くいました。最近はプライベートで電話する機会が全般的に減っており、電話応対への抵抗感が高まっている傾向もあります。また、ペア間のレベル差が大きいと、うまく練習が進まないケースもありました。
ところが、生成AIが話し相手だと、ほとんどの人が恥ずかしさを感じることなく、電話用の声を出せるのです。そこで私たちは今、受講者の電話応対スキル向上だけではなく、電話応対の抵抗感をなくすことも目的に、アプリを活用しています。最初に、AIアプリで電話用の声を出す練習をしてもらうわけです。各自が自分のペースで学べることもメリットです」(雫石氏)
また、本アプリは受講者の評判も良く、「電話で話すのが楽しくなった」などの好意的な感想が多いという。シンプルなインターフェイスも好評だ。
応対品質のチェックには、ヒトの存在が欠かせない
とはいえ、現状のロールプレイング研修アプリは、決して万能ではない。「3日目からは、AIアプリではなく、講師とのロールプレイングで電話応対スキルを高めてもらっています。なぜなら、今のアプリは、正誤判定はできますが、応対品質の細かいチェックができないからです。シナリオどおりに問題なく会話できているか、必要事項を漏れなくヒアリングできているか、間違った案内をしていないか、といったことの正誤判定は可能ですが、感じの良い話し方かどうかの判定など、細かいニュアンスのアドバイスはできないのです。例えば、『もう少し抑揚をつけて話した方がよいです』とか、『焦って会話スピードが速くなったので、速度を落としましょう』とか、『このタイミングで、“ありがとうございます”と一言付け加えると印象が良くなります』といったフィードバックは、現時点では講師による対応が必要です。より高度な電話応対ロールプレイングには、講師の存在が不可欠なのです。今は電話応対ロールプレイングでの活用ですが、これからも生成AIの活用を広げて、受講者の学びを支援していきたいです」(雫石氏)
生成AIとヒトの「ハイブリッド型コンタクトセンター」を実現
岩堀氏によれば、ベルシステム24は他にもさまざまな局面で生成AIの活用に向けた取り組みを推進している。
「1つ目に、私たちは2023年8月に『デジタル人材戦略部』を新設し、デジタル人材育成に取り組んでいます。社内公募によって、AIエンジニア・データアナリスト・コンサルタント・WEBクリエイターなど、多様なスキルをもった約20名が集結しました。さまざまなバックグラウンドをもったメンバーがスキルを伸ばしています。早くもAI活用の研究を進めたり、社内向けに生成AIプロンプティング研修を実施したりして活躍しています。その他、プロンプティングスキルと、当社がコンタクトセンター業務において培ってきたコミュニケーションノウハウを生かし、社内Slackチャンネルで利用できる、社員のマイクロストレス解消を支援するAI『すっきりbot』の開発なども手がけています。
2つ目に、私たちは2024年6月に『生成AI Co-Creation Lab.』を立ち上げました。これはクライアント企業様と提携し、コンタクトセンターに生成AIをどのように生かすかを共同で研究開発するラボです。例えば、新人育成の課題解決に向けた、コンタクトセンターのベテラン社員がもつノウハウの伝承を実現するサービスや、ナレッジ整備の課題解決に向けた、通話データからナレッジを自動生成する機能とヒューマンチェックを組み合わせて回答精度を高める『Hybrid Operation Loop』の開発などに着手しています。
私たちは今、生成AIなどの急速な技術革新によって大きな岐路に立っていると思っています。ビジネスモデルの変革に加え、人材育成においてもヒトがやるべき領域とAIに任せる領域の分界点を見極め、それぞれの得意分野を組み合わせることで、より質の高いサービスを生み出していきたいと思っています」
【text:米川 青馬 photo:柳川 栄子】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.77 特集1「テクノロジーで変わる職場の学び」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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