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背景にあるのは「採用を面で捉える」という考え方 パナソニックグループ

大学低学年時から入社3年後の活躍を見据え多様な採用活動を

  • 公開日:2024/12/16
  • 更新日:2024/12/16
大学低学年時から入社3年後の活躍を見据え多様な採用活動を

世界でも稀な日本の新卒一括採用。企業側からすれば、実務遂行能力が未知数の若者のポテンシャルに賭けるものであり、学生側からすれば、必ずしも希望の職種に就けないリスクがある。両者をどう調整し、マッチングを図るべきか。パナソニックグループの例を紹介したい。お話を伺ったのは、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社の櫻井修治氏(リクルート&キャリアクリエイトセンター 採用部 タレントエクスペリエンスデザイン二課 課長)と、渡邉尚美氏(同タレントエクスペリエンスデザイン一課 課長)のお二人だ。

「人は社会からのお預かりもの」の思想を受け継いで
トータル150コースもある初期配属確約採用を実施

「人は社会からのお預かりもの」の思想を受け継いで

パナソニック オペレーショナルエクセレンスは、2022年4月、旧パナソニックが持株会社であるパナソニック ホールディングス株式会社と8つの事業会社で構成される事業会社制(持株会社制)への移行と共に誕生した、それら事業会社の経営を支える専門職が集まった会社である。そのうち多様な人材獲得やキャリア開発に関わる採用・キャリア支援を担っているのが、同社リクルート&キャリアクリエイトセンターで、採用部は主にグループ9社全体の大卒新卒採用を担当している。

課名のタレントエクスペリエンスデザインは耳慣れない言葉だが……。同二課課長の櫻井修治氏が説明する。「大学1・2年生を含めた学生の体験価値を向上させながら、パナソニックグループ各社に腹落ちして入社してもらおうという思いが込められています。われわれの取り組みは単なる採用活動にとどまらず、もっと幅広いんです」

同一課課長の渡邉尚美氏は「パナソニックグループのみならず、納得してファーストキャリアを選択できるよう、学生の自律的なキャリア形成を支援していく、という思いで、大学低学年時からの一連のタッチポイントのなかで『はたらく』ことを考える多様なプログラムの提供を行っています」と話す。

一課は、大学と連携しながら取り組むキャリア教育、インターンシップの実施、さらには採用ブランディングなどを、二課、三課は採用母集団を、事業会社と連携しながら、各社の採用に結びつける役割を担う。特に二課は技術系を対象とする。それぞれの活動内容を見ていこう。

まず一課が、2023年から取り組んでいるのが、パナソニックキャリアデザインプログラムだ。それは、各種セミナーやWEBコンテンツなどを通じ、パナソニックグループを知ってもらう活動、大学のキャリアセンターと連携し、大学1・2年生を対象にしたキャリア観の醸成を支援するプログラム、大学3・4年生や院生を対象にした仕事体感型ワークショップおよびインターンシップで構成される。

旧パナソニックがインターンシップを開始したのが1997年。大手企業では当時新しい取り組みで、以降、インターンシップには非常に力を入れている。この夏は各事業会社が、700を超えるテーマのもと、選ばれた約1000名の学生を1~2週間受け入れた。当然だが、あくまで就業体験であって、参加したことが即、採用に有利になるわけではない。

現場には大きな負担がかかるはずだ。「現場の皆さんがインターンシップの意義をよく理解してくれ、手を挙げてくれます。『人は社会からのお預かりもの』という創業者・松下幸之助の言葉があり、人づくりを大切にする風土が脈々と受け継がれてきた結果だと思います」(渡邉氏)

学生側もテーマが700あると選ぶのが大変だろう。「早い段階から自分はこのテーマと決めている学生も多いのですが、私たちとしては企業の仕事にはもっと幅があることを知ってほしい。マッチングの幅をもっと広げたいんです」(同)

そのために今夏より、自分の専攻や興味・関心ごと、今までの経験や工夫などを入力すると、複数テーマを提案してくれる生成AIを活用している。事務系の本選考エントリー時にも生成AIを用いた採用に関する情報提供をすでに行っている。

仕事体感型ワークショップはさまざまなプログラム・実施形態があるが、仕事の疑似体験ができるビジネスゲームも開催。「ゲームは架空のメーカーを舞台とし、6職種1組でビジネスを推進し、単なる売上・利益向上だけではなく、環境にも配慮したよりよい世界の実現を目指します。こうした疑似体験を通じて、キャリア観を醸成し、家電だけではないパナソニックグループのイメージも理解してもらいながら、メーカーで働くことに魅力を感じる学生が1人でも増えたら、と思っています」(同)

トータル150コースもある初期配属確約採用を実施

二課は事業会社の実際の採用活動を支援する役割を担う。「事業会社の採用担当と二人三脚で取り組んでいます。面接者の教育や選考基準の策定はうちの担当ですが、実際の面接は事業会社側が担当し、採否の判断も彼らが下します」(櫻井氏)

パナソニックグループでは、2023年度新卒採用から初期配属確約採用を行っている。配属が意に沿わず辞めてしまう「配属ガチャ」を回避するため、技術系では2015年から社内分社別、すなわち、技術分野別の選考を行っており、2019年からは事務系の一部でも配属職種確約採用がスタートした。

当時は事業領域までは確約できていなかったが、事業会社制移行に伴い、2023年、すべての学生に事業領域と職種を確約することが可能になった。

技術系だけで約100コース、トータルで約150コースもある。「学生は希望する事業と職種の2つが叶うわけです。ただ職種ごとに職務定義書があるわけではなく、初任給は一律。もちろん本人の当初の希望を100%聞くわけではなく、面接のなかで、別の職種の提案もします。この確約採用には初期配属の3年間を今後のキャリアを考える機会にしてほしい、というメッセージが込められています」(同)

こうしたパナソニックグループの新卒採用の背景に「採用を面で捉える」という考え方がある。「『認知・共感・発掘・誘引・採用・配置・育成』をワンセットで考えるという意味です。新卒であれば、大学1年の頃から学業のなかで自然と接点をもってもらい、『認知』と『共感』が得られるようにする。その後、自社に合いそうな学生を『発掘』『誘引』『採用』するというように、段階を追った取り組みを実行しています」(同)

最後、2人に採用全般に向けた思いを聞いた。渡邉氏はこう語る。「人は社会からのお預かりもの、という創業者の思いは昨今いわれている人的資本経営の原点だと思うんです。引き続き“人づくり”への姿勢を大切にし、パナソニックグループで働くことに共感する仲間づくりを行う採用活動を展開し、社会への更なるお役立ちを果たしていきたい」

櫻井氏はこうだ。「採用ブランドスローガンは『誰かの幸せのために、まっすぐはたらく。』。社会への貢献意識が強く、真面目で愚直に働ける方と共に、これからの幸せをつくっていきたい、というメッセージなんです。この考え方は創業100余年、変わっていないのだと思います」

【text:荻野 進介 photo:角田 貴美】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.76 特集1「『選び・選ばれる』時代の新卒採用」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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