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企業事例

自ら考え行動することの楽しさへの気づきを創出する NECソリューションイノベータ

管理統制型だった現場革新活動を自律型変革活動へ転換

  • 公開日:2024/06/10
  • 更新日:2024/06/10
管理統制型だった現場革新活動を自律型変革活動へ転換

VUCAといわれるこの変化の時代、過去にうまく機能していたはずの管理統制型の仕組みがあちこちで齟齬をきたしている。その場合、何を、どう変えていけばいいのか。NECグループのシステムインテグレーター、NECソリューションイノベータ株式会社の例を見てみよう。カルチャー変革室シニアマネージャーの野田留美子氏にお話を伺った。

現場の改善活動チームを全社で管理
現場からはネガティブな声「やらされ感いっぱいで疲れる」

現場の改善活動チームを全社で管理

この2月、NECソリューションイノベータの東京・新木場にある本社で「サーバー解体ショー」なる勉強会が開かれていた。クラウド環境が普及するなか、「物理的サーバー(ハードウェア)に触ったことがない」という若手社員向けに、開発系事業部が開催したものだ。総額1000万円を超える廃棄予定のサーバー5台を参加者が自ら解体していく。その様子を背中に「鯖」という文字が大書された赤い法被を羽織る社員が見守りながら、サーバーの構造や特徴を説明していく。教わる社員は興味津々だ。

同社では、こうした現場発の取り組みが各所で行われている。その総称が「MeRISE(ミライズ)」である。カルチャー変革室シニアマネージャーの野田留美子氏が語る。「NECが2018年からスタートさせた大改革、社員の力を最大限に引き出すProject RISEを意識した言葉です。それに共感しつつ、Me、つまり『自分ごと化』を強調し、社員一人ひとりが自分で未来を描き、変革を実現していく当社のあるべき姿を表しました」

そうした変革がなぜ必要だったのか。1899年設立のNEC(日本電気)は、1946年に日本で初めて品質管理を導入するなど、品質への強いこだわりをもつ。お客様志向をもち全員参加で継続的改善を実践する5~6名の小集団活動が古くから行われていた。2005年には、ハードウェアのみならずソフトウェアの領域にも拡大。

2014年、NECソフトやNECシステムテクノロジーなど、グループ7社が統合し、社員数1万2000名のNECソリューションイノベータが誕生。賃金体系から従業員規則まで調整や統合を図るなか、現場革新もその1つとなる。顧客満足度向上を目指し、プロジェクトマネジメント、エンジニアリング、リソース、人材育成といった領域に対して目標などを置き、全社一丸となって取り組む。それらに注力しありたい姿を実現することを目標に、各5~6名の改善活動チームを結成し全社として管理した。

チームの成熟度を測る細かい尺度が導入された。「B2レベルが活動開始、B1レベルは問題発見、A2レベルでは改善サイクルの確立、A1レベルはありたい姿への挑戦、Sレベルが大きな貢献の達成と定めました。さらに、一定レベル以上のチームを何%まで引き上げるのかを全社のKPI(重要業績評価指標)に紐づけました。改善活動チームの状況を標準化し、可視化することは統合した7社のシナジーを発揮するために合理的な方法でした」

2017年、国を挙げての「働き方改革」の波が社会に押し寄せた。「それまでは現場革新を顧客満足度の向上に結びつけることを目指していましたが、さらに従業員満足度の向上も目指すことになりました」

現場からはネガティブな声「やらされ感いっぱいで疲れる」

翌2018年には先述したNECのProject RISEが始動、2019年には同社にも導入された。「RISEは社員の声を大切にする取り組みでもあり、エンゲージメントサーベイを重んじています。当社でも実施したところ、改善活動に関する不満が多数上がってきたのです。管理される意味が分からない、やらされ感いっぱいで疲れると。改善活動の成果は各自の業務目標の一部に組み込まれていましたが、それだけでなく、社内に良い取り組みを共有するため、良いチームは自分たちのやってきたことを社内各所で発表することが求められていました。社長や役員はもちろん、NECから見学者が来る大がかりなケースもあり、事前に発表資料をレビューする場も設けられ何度もダメ出しを受けることもありました。こうしたことが大きな負担となっていたのです」

この状況に危機感を抱いた役員により、2021年に発表された中期経営計画の「カルチャー変革」には「現場革新のリデザイン」が盛り込まれた。このタスクフォースのリーダーに任ぜられたのが野田氏である。「これまでの管理統制型を脱却し、自律型の取り組みがどんどん立ち上がっていく組織にしたいと思いました。最初は組織が目指す方向性を示すキーワードを掲げようとしました。ですが、この規模の組織でそれを合意していくのは難しいことです。時間をかけて合意しているうちに、また時代が変わってしまいかねません。そこで最終的に、2022年、社員が自分たちの抱える課題やありたい姿を自律的に定義し変革していくことの総称を『MeRISE』と命名し、同時に従来のチームを全社的に管理する仕組みは廃止しました。全社で管理統制を推進していた私たち自身も、それを支援していく機能へと役割を見直しました」

同社は「公助」「共助」「自助」の三位一体経営を標榜している。公助とは会社として仕組みや環境を整えること、幹部やミドルによるコーチングや支援で社員の自助(後述)を促すのが共助、社員が自ら考え自ら行動することを自助と定義する。野田氏のチームはこのうち、自助および共助への働きかけを行っている。「自ら考え自ら行動したのかを管理するのではなく、横のつながりを増やすことや行動することの楽しさ・価値に気づくことを創出する役割として再出発しました。社内のさまざまな取り組みを取材し、サイトやメルマガで発信しています。先の解体ショーもその1つ。社外への発信にも力を入れています。共助に関しては、各事業のリーダーに話を聞き、解決に結びつくような他組織の事例の紹介や、施策実施の相談や支援をしています」

最近のことだ。野田氏に現場革新のリデザインという命題を与えた役員と1on1で話した。役員はこうたずねた。「2年前に君たちがこうなっていたいと描いた姿と今を比べてどうですか」。その役員自身が自分たちに対して管理統制ではなく自律的な活動を支援してくれていたのだと感じながら、野田氏はこう答えたという。「近づいてはきましたが、まだまだやりたいことがあります。私たち自身も未来を描き、これからも進化し続けます」

【text:荻野 進介 photo:平山 諭】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.74 特集1「オーバーマネジメント─管理しすぎを考える」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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