コラムCOLUMN
公開日:2024/03/11
更新日:2024/03/13

THEME 組織開発

企業事例制約を離れた余白・遊びが創造性を羽ばたかせる コンセント

効率重視に陥らない遊び心のある場づくりで仕事の到達点が高まっていく

効率重視に陥らない遊び心のある場づくりで仕事の到達点が高まっていく

企画やデザインといった創造的な仕事は、効率一辺倒ではうまくいかない。ちょっとした遊び心や一見、仕事とは無関係なことが大切だったりする。それらはどのように作り出せばよいのか。創業から半世紀が経過した老舗デザイン会社、株式会社コンセントの事例を紹介したい。お話を伺ったのは、代表取締役会長 上原哲郎氏(写真左)、コンテンツストラテジスト 前田瑞穂氏(中央左)、コミュニケーションデザイナー アートディレクター 白川桃子氏(中央右)、クリエイティブディレクター 中條隆彰氏(右)の方々だ。

 

仕組みで使える時間・資源をより柔軟にし表現力を強化


コンセントは母体となった集団が1971年に誕生し、数度の合併を経て現在の組織になった。社員数は約250名で、雑誌やWEBのみならず、事業開発や経営、行政分野にもデザインという切り口で関わる総合デザイン会社である。掲げるミッションは「デザインでひらく、デザインをひらく」。

代表取締役会長の上原哲郎氏が語る。「うちはトップダウンの要素が少ないと思います。上からの命令ではなく、現場レベルの議論で物事が決まっていく傾向が強い。会社の規模自体を大きくすることにこだわりはありません。ベンチャーキャピタルなどの資金も入っていなければ、上場の予定もない。何より大切なのは、社員全員が、やりがいがあって、お客様にも喜んでいただける良い仕事をどうすればできるか、ということです」

同社には2018年にスタートした「0.2s(れいてんにびょう)」というユニークな制度がある。名称は「0.2秒で心が動くデザイン」の略だ。「私たち自身が表現力の向上にさらにコミットしたいと考え、会社を挙げてプロジェクトの実行を支援する制度です。使える時間や資源等をより柔軟にすることで、表現力を強化する仕組みともいえます」という上原氏の説明に、コミュニケーションデザイナー兼アートディレクターの白川桃子氏が続ける。「さまざまな制約から一旦離れて考えたとき、デザイナーの頭のなかには余白や遊びが生まれ、ビジュアルにせよ、コピーにせよ、あれもできそう、これもできそう、といろいろなアイディアが湧いてきます。のびのびとクリエイティブの力を発揮できる環境です」

2020年にコロナ禍が起こり、同社でも多くの社員がオンラインによる在宅勤務を余儀なくされた。「うちの社員は真面目なタイプが多いので、時には一心不乱に物事に取り組んでしまうことも。それ自体は良いことだけれど、仕事がオンラインになり、仲間の働く姿が視野に入らないと、その傾向が強まり、視野が狭くなってしまうのではないか、という危機感がありました」(上原氏)

全社員参加のカンファレンス 同僚や会社とつながり、深める


そうしたなか、開催されたのが、全社員参加型のイベント「コンセントカンファレンス」である。コロナ禍が一時的に落ち着きを見せた2022年に第1回が開かれた。

午後の半日を使い、まずは、経営陣やマネジャーが、会社や各部門が今後の1年で取り組むことを発表した。その後、軽食をとりながら自由に歓談する時間が設けられた。企画運営を担当したコンテンツストラテジストの前田瑞穂氏が語る。「当時はまだコロナ感染が心配という社員もいたので、オフラインとオンラインの併用開催としました。アンケートの総合満足度は5点満点中4.3点と高い評価を得ることができました。就活からずっとリモートだった新入社員が『皆が実在していたことを実感できた』と感想をくれて、開催の意義を痛感しました」

2023年には第2回を開催。前回のアンケートによって、対話の大切さが分かっていたため、今度は丸1日を使い、4、5名ずつに分かれたワークショップ中心のプログラムが組まれた。「各自がどんな考え方をするのか、どんなことを大切にしているのかを開示し合いながら、自分や他者の新しい側面を発見していくという内容です。最後には各自のビジョンが見えてくるようなシナリオで、今後やりたいことを書き出してもらい、非希望者のものは除き、全社に公開しました。社員一人ひとりのビジョンを見えるようにしたのです。この人とは何か一緒にできそうだ、と社員同士がつながることで、新しい動きも生まれています」(前田氏)

先ほどコンセントではトップダウンの要素が薄い、という上原氏のコメントを紹介したが、そのことを裏付けるボトムアップの一例として、2022年には全社横断のタスクフォースであるイニシアチブ組織というものが作られている。

同社の事業部門(約180名が在籍)は7つのグループに分かれている。イニシアチブ組織は、各グループに共通する目標を掲げ、横串で連携したものだ。「技術のアップグレード」「知識創造とデザインの民主化」「クオリティ安定化」など、計6組織がある。

白川氏が話す。「私は『知識創造とデザインの民主化』組織で活動しています。先人が作った知識体系を活用しながら、知識創造の新たな技術や仕組みを作ることで、すべての人がデザインできたり、デザインって楽しい!と思えたりする世の中になるきっかけになればと考えています」

そこからプレイフルボックス*というツールの着想につながった。同じイニシアチブ組織に所属するクリエイティブディレクターの中條隆彰氏が話す。「私たちはデザインやクリエイティブを生業としているのですが、その大本にある創造性がまだまだ不足しているのではないか、という問題意識があります。それを改善していくためにはもっと遊び心が必要だと考えて作りました」

その基底には「3つの『ほぐし』アプローチ」がある。場をほぐす、常識をほぐす、仕組みをほぐす、の3つだ。「最も大切なのが場をほぐすこと。うちは社員数も多く、新卒採用や中途採用も盛んで、人員構成がかなり多様になっています。これを使い、個々人の仕事や内面が明らかになることで、相互理解を深められたら、と思います」(中條氏)

誰もが使えるように近々公開も予定(取材時点)しているというプレイフルボックスでは各プロジェクトの最初、中間、終わり、ドリルの4つのシートで「ほぐしアプローチ」を活用する。そのうち、ドリルの具体的内容は、好きな平仮名を1つ選び、理由を示して順番に共有する、付箋をブロックのように使って今の気分を表現し、順番に共有しながら、相手の気分を想像する、といったもの。「仕事にはこうした余白や遊びが大切で、また直接的な成果を求めるものではないと思っています。そういう価値観と空気が充満していると、最終的な仕事の到達点は高くなることが多いんです」(上原氏)

同社では部活動も活発に行われており、陶芸部、映画部など、およそ30の部があり、会社から予算がつく。副業も承認されており、漫画や小説などの作品を発表している社員もいる。「ぎちぎちの効率重視に陥らないよう、社内環境を整えるのが経営の役割だと思います。その上で、会社のミッションや価値観を浸透させていこうと考えています」(上原氏)

【text:荻野 進介 photo:柳川 栄子】


*プレイフルボックスについてのニュースリリース
創造性あるチームづくりに活用できるツール「プレイフルボックス」を、Miroのテンプレートとして公開


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.73 特集1「仕事における余白と遊び」より抜粋・一部修正したものです。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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