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公開日:2023/09/04
更新日:2023/09/04

THEME 組織開発 ダイバーシティ

企業事例その人の持つ可能性を引き出し支援する ベネッセホールディングス

すべての人が、よく生き、成長し続ける社会を

すべての人が、よく生き、成長し続ける社会を

今、多くの企業がDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)を推進している。企業の持続的成長の実現には、多種多様な人材が、個々の強みを発揮できる環境づくりが欠かせない。ベネッセが特例子会社を含むグループ全体で追求する、「一人ひとりの“よく生きる”」を応援する取り組みを、株式会社ベネッセホールディングス 常務執行役員 サステナビリティ推進本部長の岡田晴奈氏に聞いた。

 

ベネッセが事業の中心に置く「よく生きる」という理念とは



「ベネッセ(Benesse)」はラテン語の造語で、「よく生きる」を意味する。中核の教育事業と、それに続く介護事業を通じて、すべての人の「よく生きる」を支援し、社会課題の解決を目指すことを使命としている。

ベネッセホールディングス常務執行役員で、サステナビリティ推進本部長の岡田晴奈氏は、同社がどのように「よく生きる」を追求しているのかについて、こう語る。

「『よく生きる』という理念が、教育や介護など各事業で表現され、意思決定の判断軸になっていることが大事です。例えば、幼児向け事業の『こどもちゃれんじ』であれば、子どもが成長過程において愛される存在であると自覚し、自己肯定感を高めて好きなことを見つけ、自分らしく生きる手助けをするために何をすべきかを常に考えて、サービスを展開しています。介護事業で支援しているご入居者の方々に対しても同じ思いです。ある施設に、『サーフボードをしたい』と願った女性がいました。その話を聞いた介護施設スタッフは、医師と共に基礎体力づくりのお手伝いや体調管理を行い、ついに『今日は天気が良いので挑戦してみましょうか』と、夢を実現させたのです。もしも、その女性が一人暮らしをしていたら、難しかったのではと思います」

エピソードのとおり、ベネッセの「よく生きる」は、その人がもっている可能性を引き出して、支援をすることだ。そのために、本人の「思い」を大切にしている。

しかし、近年はM&Aを通じた業務拡大が進むなか、再び「よく生きる」という原点に立ち返る必要性が生じていた。

「われわれがどこを目指すのかを改めて明確にするために、サステナビリティ、ESG、ダイバーシティを統括するサステナビリティ推進本部を設立したのです」

「サステナビリティ」を直訳すると「持続可能性」だが、同社の解釈は、社員含むステークホルダーの「よく生きる」を実現し続けることである。サステナビリティ推進本部は、理念浸透を目的とした研修やグループ内全社員に配布される理念冊子『BATON』の制作と配布などを実施している。冊子の名前には過去、現在、未来へと「志のバトン」をつないでいく意味が込められた。新規事業の立ち上げなど、困難を乗り越えた経験を共有することで、「よく生きる」を考える機会を与えている。オンラインのミートアップ研修で、それぞれの志や経験を語り合うことにより、新規事業のアイディアが生まれることもあるという。

一人ひとりの「思い」を尊重しインクルーシブな働き方を実現



社員一人ひとりの「よく生きる」をかなえるためには、その人にとって「よく生きる」がどういう状態なのか明確にする必要がある。

「『あなたは何をしたいのですか』と一人ひとりと緊密にコミュニケーションをとることが大事だと思います。その上で、会社が目指すものと自分がやりたいことを融合させて、いかにその重なりを広げていくのか。これが、その人自身のインクルーシブな働き方につながると思います。そのための第一歩は、まず本人が何をしたいのか表明することです」

そして、思いの実現にはどんなスキルや経験が必要なのか、どれだけの期間で目指すべき姿に近づくのかを、職場でよく話し合う。ライフステージに応じた働き方やキャリアを自らデザインするのはもちろんだが、異動や転勤の検討においても、本人の事情や思いをできるだけ尊重する。唐突に異動確定の通達が届いたり、2週間前に転勤辞令が出る、といった事態はまず起きない。辞令を出すまでのプロセスで、配転先の期待と本人の意思を十分にすり合わせて決定していくからだという。異動先の上司から期待のコメントが本人に送られることも通例だ。

「障害」と「個性」に着目 業務を分解し得意分野を割り振る



ベネッセグループの理念は、障害者雇用を行う特例子会社、ベネッセビジネスメイト(以下BBM)でも体現されている。BBMは、業務サポート、ファシリティサービス、施設運営(清掃など)の3分野で、サービスを提供している。

BBMでは一塊の仕事を細分化して「見える化」し、一人ひとりの特性に合わせて割り振る「楽ジョブ」という取り組みをしている。例えば、コピー業務を、依頼の受付からコピー作業、検品、課金など、複数のパートに分け、それぞれ特性を生かせる社員に任せた。一人ひとりの特性に合う仕事を続ければ誇りも湧いてくる。やりがいを感じられる職場にすることで、離職率も低く抑えられている。

「ベネッセコーポレーションの新入社員は、入社後の研修期間中に、BBMの障害のある社員からレクチャーを受けて清掃業務を行う実地体験をします。同じエプロンを身につけ、オフィスを掃除していると、さまざまなことが見えてきます。例えば、オフィスが快適なのは、掃除をしてくれる人がいるからだと気づく。『ありがとう』と言われたときの喜びも実感できるし、また掃除している自分たちに関心がない人がいることにも気づきます。その気づきを経て『ありがとうの言葉が飛び交う明るい職場を作りたい』という気持ちが芽生えるのです」

ダイバーシティDAYというグループイベントで、インクルーシブをテーマにした発表を行ったときにも、BBMの社長の話は大きな反響を呼んだ。

「一人ひとりの強みに注目し、仕事を分解し、組み合わせて1つの成果物にしていく。それぞれが成長するのに応じて、柔軟にマネジメントを変えていく。話を聞いた社員から『見学に行きたい』という声が上がりました」

ベネッセのDE&Iの根幹には、一人ひとりの可能性に対する信頼がある。その人の個性を尊重して伸ばす仕掛けを行うと同時に、個性が伸ばせるのは、周囲の支援があるからだと気づかせる機会もある。数々の取り組みを通じて、多様な仲間への敬意と感謝を忘れない企業文化を醸成してきたのである。



【text:外山 武史 photo:伊藤 誠】



※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.71 特集1「障害者雇用・就労から考えるインクルージョン」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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