- 公開日:2023/03/13
- 更新日:2024/05/16

コロナ禍でつながりが希薄化しがちな今、いかに信頼関係や帰属意識を維持するかが企業の課題である。この状況下でも「仕事に行くことが楽しみ」と答える社員が多く、2023年版「働きがいのある会社(GPTW)ランキング」大規模部門第1位のシスコシステムズが、どう課題と向き合っているか、執行役員 人事本部長の宮川愛氏に聞いた。
ハイブリッドワーク下でのつながりの重要性
働き方改革や工場のIoT化、5G対応など、デジタル化を通じて企業のビジネス変革を支援しているシスコシステムズ。働きがいのある会社(GPTW /世界約100カ国で働きがいに関する調査を行う)のランキングでは、グローバル・国内でトップクラスの評価を得ている。2001年から働き方改革を進め、コロナ禍以前からオフィスとリモートを組み合わせた働き方を実現していたが、現在は約8割がリモートワークである。ハイブリッドワーク下でのつながりの重要性について、執行役員 人事本部長の宮川愛氏は話す。「グローバルのレポートラインで仕事をしているため組織がサイロ化しやすく、ジョブ型雇用でもあるため、日本法人での横のつながりは重要なテーマです。仲間意識の醸成、共感力と信頼関係をさらに高めることが課題です」
ジョブ型が定着しているからこそ、業務範囲の間に落ちてしまうボールがある。お互いの業務範囲を超えて、その範囲の先をカバーするにはどうするか。「組織は違うけれど共通する課題はあります。例えばコロナ禍で入社し、3年間フルリモートで働く中途入社者が約3割います。誰かが隣にいれば当たり前に聞けることを、知らない人も多いはず。そこで、心理的安全性を確保した上で、共通課題について話すセッションをボトムアップで実施しています。ボトムアップだからこそ現場で起きている課題に合ったセッションが実現します」
オフィスにいても隣の組織が何をしているか見えづらいが、リモートになるとますます見えなくなる。そのため、オンライン・オフラインの両方で、自組織以外の職場を体験するシャドウイングという施策を実施し、相互理解を深めている。「例えば、バックオフィスで営業をサポートしている社員が、商談に同席して学ぶことも。その世界が見えるのと見えないのとでは仕事の進め方が変わります。お互いの仕事を見える化することが大切なのです」
リモートであっても関連セクションの仕事を見える化すれば、新たなつながりを生み出せるのだ。
コミュニティ活動や1on1 でつながりを太く、強く育てる
シスコシステムズは、イノベーションの源泉であるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)にも早くから取り組んできた。効果的なコラボレーションでイノベーションを創出することを目指し、同社ではI&C(インクルージョン&コラボレーション)と呼ぶ。女性社員の活躍推進を目的とした「Woman of Cisco」、LGBTQの社員が働きやすい職場づくり「PRIDE」など、6つの分野で展開されるコミュニティ活動が、社内外のつながりを増やしている。「女性活躍推進チームは、社外で同じような目的のチームとつながることで、普段自分たちが見聞きしない情報にアクセスしています。それが刺激となり、視野が広がる。社内のつながりという意味でも、ボトムアップで組織の壁を越えて、同じパッションをもつ仲間がつながり、ネットワークが増える。すると、日常の業務も円滑に進むように。薄くなりがちなつながりを、活動を通じて濃く、太くしていけるのです」
チーム内のつながりを強めるのは、1on1のカルチャーだ。上司と部下がやるべきことの共通認識をもっているからこそ「自由と自律」が生まれる。「1on1を補完する週報ツールにcheck - inがあり、部下が入力する項目には『毎日自分の強みを発揮しましたか?』などに加えて、『先週やる気を得た出来事、削がれた出来事は何ですか?』というものも。出来事ですから、子どもの病気や介護の問題などプライベートなことも含みます。当然、上司のフィードバックによってやる気が削がれたというインプットも。つまり業務と感情をつないで共有する仕組みなのです」
check - inによりマネジャーは、部下と業務を超えて人として向き合い、パフォーマンスの最大化を支援することができ、メンバーも自己認識力が高まる。こうした人事施策の根底には「People Deal」という基本理念がある。会社が社員に提供すること、社員に期待をすること、それぞれその約束事を果たすことで「自由と自律」が成立しているのだ。
マインドセットを共有すればルールによる管理はいらない
人事施策は基本的にトップダウンとボトムアップの双方向アプローチで共創する。最初から完璧は目指さない。「小さな施策・検証を重ねて、アジャイルに(素早く機敏に)進んでいます。できない理由を探さず、どうしたらできるかの議論をする。同時多発的に施策が走り、社員によるフィードバックで進化しているのです」
人事施策に対して社員全員が自分ごととして関わる。グローバル本社から共有された英語の行動指針「Our Principles」も日本の組織で再解釈した。「素晴らしい行動指針も、自分ごとでなければ行動に落とし込めないし、一体感も生まれません。日本の200チームがそれぞれ『チームにとってどういう意味をもつのか』を徹底的に議論しました。最終的にタスクフォースの人たちが集まり、1つにまとめています。例えば『GIVE Your Best』も『目標を達成するために、チームの中でたがいに補い合いながら、生き生きと仕事を楽しみ尽くす』という具合に、社員の思いを込めているのです」
働き方に関しても、会社がトップダウンで週3回出社などのルールを定めるものではない。「会社からは“自由と自律”を前提に、個人およびチームとしてのパフォーマンスを最大化する働き方を個々人が選択しましょうとメッセージしています」
ルールで管理するのではなく、マインドセットを共有しながら新しい働き方をみんなで作る。だから、GPTWのサーベイでも「この会社の人たちは、仕事に行くことを楽しみにしている」と答える社員が多いのだろう。
「日本人は学校や企業でルールに縛られることに慣れています。ルールがなくなったとき、どうしたらいいか分からなくなる人もいる。だから、自分たちが何のためにどこに向かうのか、マインドセットを共有することが大事なのです」
シスコシステムズの働き方改革は、個と組織をより生かすため、常に試行錯誤しながら進んでいる。
【text:外山 武史 photo:柳川 栄子】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.69 特集1 「つながり」を再考する より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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