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企業事例

“なないろ”の人財で組織のパフォーマンスアップを図る BIPROGY

役割の明確化により個の多様性を高め新しい価値を作る

  • 公開日:2022/09/12
  • 更新日:2024/05/16
役割の明確化により個の多様性を高め新しい価値を作る

老舗システム会社の日本ユニシスがこの4月、社名を変更した。合併を機にした社名変更はよくあるが、今回のケースは違う。その目的は、ビジネスモデルと企業風土変革の促進といえる。それに関連して人事の改革も推進中だ。その背景と現状を、BIPROGY株式会社 人事部の松尾由香里氏と宮森未来氏に伺い、報告する。

新社名に込められた2つの意味
本人の意思を尊重した柔軟なキャリアを
ユアタイムで行われる上司と部下の対話

新社名に込められた2つの意味

新しい社名はBIPROGY(ビプロジー)という。光が屈折、反射したときに見える7色の英語の頭文字を使った造語である。社内外問わず、さまざまな人々がもつ“光彩”をかけ合わせ、新たな道を照らし出すこと、現実の光彩が状況に応じて変化するように、社会の環境変化に応じ提供する価値を柔軟に変えていくこと、という2つの意味が込められている。「人事という面からは、社員一人ひとりの多様な個性や能力を尊重すると共に、それらを伸ばし、成長を導く意味があります」と、人事部長の松尾由香里氏が説明する。

日本ユニシスは日本の商用コンピュータの先駆けの会社だ。1955年、前身となった会社が、日本初の商用コンピュータを東京証券取引所などに納入している。日本ユニシス自体の発足は1988年で、以後、金融機関など、大手企業を顧客にしたシステム会社として名を馳せてきた。

ところが大きな環境変化が訪れた。クラウドコンピューティングの発達により、SaaS(サース:ソフトウェア・アズ・ア・サービス)をはじめとする新たな利用形態でサービスを提供する企業が台頭、それまでシステム会社が提供してきたのと同じような機能を安価に提供できるようになり、システム会社は従来のビジネスモデルだけでは持続的な成長力を維持することが困難になった。

日本ユニシスも例外ではなかった。2015年から、多様な企業がそれぞれの得意領域を持ち寄って連携し、社会課題を解決する「ビジネスエコシステム」を提唱している。

2021年には自社のPurpose(存在意義)を、「先見性と洞察力でテクノロジーの持つ可能性を引き出し、持続可能な社会を創出します」と発表している。ITではなくテクノロジー、経済価値だけではなく社会価値の創出を目標にしている。

本人の意思を尊重した柔軟なキャリアを

人事面での新しい改革が、2021年4月に導入したROLES(ロールズ)。ROLESとは「業務遂行における役割」のことで、業務遂行(ジョブ)で担う役割や、必要となるスキルを定義したものだ。

ROLESは、(1)タイプ、(2)ROLE本体、(3)ジョブ、(4)スキル、という4つの要素から成る。(1)タイプとは、価値創出軸(ビジネス領域)とコーポレート機能の大分類のことで、それぞれのタイプには、複数のROLEが紐づく。例えば事業創出タイプにおいては、プログラムマネジャー、キャピタリスト、ストラテジストといったようなROLEがある。(3)ジョブとは特定のROLEを担う際に遂行する個別業務を指す。さらに、その個別業務を遂行する上で必要な(4)スキルまで、定義されている。

同じROLEであっても、「基礎」「習熟」「確立」「深掘/拡大」と、4段階で熟達度を定めている。1人の社員にとって、ROLESの担い方は「キャリアのなかで順次に異なるROLEを担う」「同時に複数のROLEを担う」「未経験の新たなROLEを担う」「1つのROLEの熟達度を上げることで専門性を極める」などさまざま。

ROLESは役割等級制度ではなく、評価や報酬とは関係がない。導入のねらいを松尾氏はこう説明する。「今までの当社にはシステムエンジニアやセールスといったジョブベースのキャリアパスしかありませんでした。しかも金融なら金融といったように、多くの場合、顧客の業界ごとに閉じていました。今回、ジョブを統合した役割という考え方を導入したことで、本人の意思を尊重した、もっと柔軟なキャリアパスを提供していきたい」

現時点では、BIPROGY単体で、計147種類のROLEが定義されている。「まず、各自に現在のROLEを選択してもらいます。熟達度は上司が判定します。あわせて、過去担ってきたROLE、中長期で目標とするROLEも登録してもらう。ROLESという共通言語で自分のキャリアを考えることで、個人内の多様性がより開発されると考えています」

ROLESはこうした形で個人のキャリア意識の涵養に活用できると共に、経営戦略に基づき、各部門が必要とする人財の種類や質、量を可視化することも可能で、以下のような使い方ができる。

同社は新規事業創出を目的とし、2021年から「ビジネスプロデュース人財」の育成に注力している。そうした人財の対象となるROLEは現時点では16。そうしたROLEを担う社員に、手挙げ制の研修などを積極的に提供しているのだ。「その代表格が新規事業を自ら考案し形にしていくNext Principalというプログラムです。ここから、保育園向けの業務支援サービス『ChiReaff Space』などが生まれています」(人財開発室室長 宮森未来氏)

ユアタイムで行われる上司と部下の対話

このプログラムは現社長の平岡昭良氏が専務だった2010年、氏の私塾としてスタートした。この他、2016年、毎週3時間、通常業務とは別のことに時間を使う「T3(Time to Think)」をエンジニア部門に導入した。「工数管理が厳しい部門に、新しいことに挑戦できる時間をあえて組み入れたのです」(宮森氏)

システム会社であれば顧客の要求どおりに仕事をし、石橋を叩いて渡るような文化が必須だが、従来のビジネスモデルからの脱却を掲げた以上、新しい発想をもち、自ら動ける人財を育成しなければならない。「ROLESの導入に関しても、平岡の意思が大きい。個の多様性を高めるために、ぜひ導入したいと」(松尾氏)

ただ、そうした多様性を尊重していくには、現場も変わらなければならない。そこで重要になるのが、上司と部下の対話だ。昨今、流行りの1on1だが、同社ではそれを「ユアタイム」と呼ぶ。「あなた、つまり部下の時間であって、上司はしゃべりすぎないでと。2019年からシステム部門で行われていたのが草の根的に広まり、全社の取り組みとなったのが2020年です。業務、キャリア、プライベートなど話題は何でもいいのです。上司が部下の話に真摯に耳を傾け対話を重ねることで信頼関係を築き、部下が自分の仕事に働きがいを感じて自律的に取り組む状態を作ることで、組織としてのパフォーマンスアップを図る目的があります」(松尾氏)

個々の部下が、これから担ってみたいと考えるROLESこそ格好の話題になるだろう。

【text:荻野 進介 photo:柳川 栄子】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.67 特集1「個人選択型HRM のこれから」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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