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企業事例

会社・個人双方の成長を目指す人財マネジメント 日立製作所

「ジョブ型アイディア」を従業員に募集したら3,688件の提案が届いた

  • 公開日:2022/09/05
  • 更新日:2024/05/16
「ジョブ型アイディア」を従業員に募集したら3,688件の提案が届いた

日立製作所は、ジョブ型人財マネジメントを日本でいち早く導入した。いつどのような経緯で導入を決めたのか。早期の導入に至った要因は何なのか。ジョブ型人財マネジメントと個人選択型HRMへの転換をどのように推進しているのか。同社執行役常務Deputy CHROの田中憲一氏に詳しく伺った。

ジョブ型という言葉を使い始めた2017年以前から、実質的な移行は進んでいた
会社と個人は仕事をキーとした「対等なパートナー」だ
「ジョブ型アイディア」を従業員に公募して施策に反映している

ジョブ型という言葉を使い始めた2017年以前から、実質的な移行は進んでいた

日立の人財マネジメント方針の転換は2011年に始まった、と田中氏は語る。「2010年、私たち日立は、当時の中西宏明社長の下、グローバル事業の拡大と社会イノベーション事業の推進に向けて大きく舵を切りました。翌2011年、経営方針の変更に合わせて、人財部門はグローバル共通の人財マネジメント基盤の整備を始めました。今振り返ると、ジョブ型人財マネジメントへの転換はこのときに始まっています」

その後、グローバル人財データベースの構築や日立グローバル・グレード、グローバル・パフォーマンス・マネジメントの導入などを経て、2017年にジョブ型人財マネジメントの具体的な議論を労使でも開始した。しかし実は、それ以前からジョブ型への切り替えは着々と進んでいたという。

「2012年以降、日立グローバル・グレードとグローバル・パフォーマンス・マネジメントの導入によって、年功的な処遇・配置の考え方はなくなっていきました。必要なポジションの役割や責任を設計してから、そのポジションにふさわしい人財を配置する考え方に切り替わったのです。ジョブ型という言葉を使い始めたのは2017年ですが、実質的には、それ以前から少しずつジョブ型に近づいていました」

2017年からは、ジョブ型人財マネジメントという概念を前面に打ち出し、労使で中長期での人財マネジメントの課題を検討するための「Next100労使委員会」を設けた他、毎年の春季交渉においても、ジョブ型人財マネジメントの必要性や考え方、具体的な取り組みの方向性を継続的に議論・確認しているという。

その結果、2021年の従業員サーベイでは、「自分のキャリアを自分で作ることの必要性を理解できたか?」という問いには、87%が「理解できた」「まあまあ理解できた」と答えた。また、「必要スキルを認識し、それを得るために行動しているか?」という問いには、42%が「行動している」、43%が「必要スキルを認識している」と回答した。ジョブ型推進に欠かせない従業員のキャリア自律意識は間違いなく進んでいる。

会社と個人は仕事をキーとした「対等なパートナー」だ

現在は、2024中期経営計画に基づいて、ジョブ型人財マネジメントの方向性を定めている。

「2024中期経営計画では、“プラネタリーバウンダリー(地球の限界)”を超えない社会の維持と、一人ひとりの“ウェルビーイング”の実現を事業キーワードに掲げました。私たちは、この2つが両立する未来を追求すべく、グローバルで社会イノベーション事業を推進し、私たち自身も成長します」

実は、日立は売上収益も従業員数もすでに6割近くが海外で、今後さらに増える見込みだ。今や、名実共にグローバル企業なのだ。さらにグローバルな社会・顧客のニーズ・課題を探索し、解決するためのサービスを提供して、優れたイノベーションをいくつも起こすためには、多様で主体的な人財が場所・時間を超えて働くためのジョブ型人財マネジメントが欠かせない。

「ご存じのとおり、ジョブ型とは、先にポジションがあり、そのポジションに適した人財を配置する適所適財の人財マネジメントです。

今後は例えば、本社のあるポジションの適任者がグループ会社や買収先企業に見つかれば、積極的に異動を促します。また、異動は今後公募制が中心になっていくと思いますが、すべて公募では難しい。従来のようなマネジャーや人事が背中を押す異動も混在するでしょう。なお、特に海外赴任や居住地の変更が伴う場合には、丁寧な話し合いによる本人との合意形成が重要です」

問題は、会社が変わるだけでは、ジョブ型は決して成功しない、ということだ。従業員一人ひとりにも、自分のキャリアを自分で作る姿勢をもってもらうことが必須なのだ。

「私たちは、会社と個人は仕事をキーとした対等なパートナーだと捉えています。私たちは、グローバルでの事業成長と、個人のウェルビーイングの両方を実現し、会社・個人双方の成長を目指します。

今や、個人のモチベーションの後押しがなくては、事業が成長しない時代です。従業員の皆さんが健康で安心して働けること、やりがいのある充実した職業人生を送れることが、事業成長に直結するのです。だからこそ、従業員の皆さんには、忙しいときにも頭の片隅で将来のキャリアについて考え、ウェルビーイングを自ら高める努力をしていただきたい。その積み重ねが、個人のキャリア自律につながると考えています」

「ジョブ型アイディア」を従業員に公募して施策に反映している

ところで、日立はジョブ型を導入するにあたって、ジョブ型に関する施策アイディアを従業員に公募した。大変面白い試みだ。

「人財部門では、2021年にジョブ型情報発信サイトを立ち上げ、並行して『ジョブ型アイディア』を全社員に募りました。正直なところ、募集前はどれだけのアイディアが集まるのか不安に感じていましたが、蓋を開けてみたら、想定をはるかに超える3,688件もの提案が届いたのです。従業員の皆さんの関心と意欲の高さに驚いています。

2022年3~4月にアイディアの審査・表彰を行いましたが、優れた提案が数多くありました。最も多かったのは、AIが個人に応じ最適な研修教材をリコメンドする仕組みなど、リスキリング・アップスキリングに関するものです。現在、2022年度下期をめどに、この従業員アイディアを踏まえた学習体験プラットフォーム(Learning ExperiencePlatform)の導入準備を進めています。この後も、こうした施策化を次々に行う予定です」

今後、社内キャリアエージェントの設置検討、ジョブ型を踏まえた処遇制度の再構築、マネジャー支援、キャリア形成支援、リスキル強化などを推し進め、行動変容の定着に向けて、人財マネジメント全体をさらに変えていくという。これからの日立の改革にも注目だ。

【text:米川 青馬 photo:伊藤 誠】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.67 特集1「個人選択型HRMのこれから」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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