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THEME 新人/若手

企業事例若者の個を生かして事業変革のスピードを高める NTTデータ

新人の可能性を信じて任せる共創型OJTとは

新人の可能性を信じて任せる共創型OJTとは

新卒のオンボーディングといえば組織に馴染ませた上での早期戦力化を意味する。その場合、既存の組織文化に若者を染めるという図式が濃くなりがちだ。それに対し、染めるどころか、若者の特性を生かし、事業変革のてこにしようというまったく逆の事例を紹介したい。株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 企画部 人事育成担当 部長 矢野忠則氏にお話を伺った。

入社後配属・OJTの新しい試み

舞台はNTTデータ本社近くにあるカフェ。そこで、まずは調理あるいは接客担当として働き、その後は周辺の人流調査や類似店舗の視察に従事。次はデジタル面を中心とした業務改善。さらに自発的にマーケティング論を学び始め、来店者像を明確にした上で、カフェのオーナーや店長と今後のあるべき姿を一緒に考える……。

2021年4月に同社に入り、ITサービス・ペイメント(ITSP)事業本部に配属された新人のうち6名が、4カ月のうちに取り組んだ仕事の一部がこれだ。与えられたミッションは「デジタルデータの活用で当該カフェに貢献し、感謝されること」。取り組む内容はすべて自分たちで考えた。

同事業本部に配属された新人は62名で、うち30名が企画部に所属。この30名が先の6名を含めた5チームに分かれ、2021年6月から2022年3月にかけ、四半期ごとに事業本部内の3事業部を回る。本部内インターンシップというわけだ。

前述のカフェでの仕事に取り組んだ6名の場合、流通大手とNTTデータが組み、NTTデータ本社内にオープンした、レジを通さないキャッシュレス決済方式の無人店舗がその前の職場だ。QRコードで入店の認証とキャッシュレス決済が可能なNTTデータのサービスを活用する実験店で、この立ち上げも別の新人チームが担当した。

残りの新人32名はデジタルペイメント開発室、サービスデザイン統括部に配属。こちらはデジタル人材開発プログラムを提供する「デジタル特区」で働く。最新のソフトウェア開発手法であるアジャイル開発を担えるなど、2年間でデジタル人材のプロとなることが目標だ。

新人だけでチームを組み裁量性の高い業務を付与

前者のインターンシップ、後者のデジタル特区と、新人だけでチームを組み、裁量性の高い業務を任される点が共通している。

そのねらいをITサービス・ペイメント事業本部部長、矢野忠則氏が話す。「私たちはこれを『共創型OJT』と呼んでいます。新人が受ける従来のOJTの場合、やり方も含め、上から与えられるという面が強かった。結果、新人の個を生かすどころか、先輩のコピー人材ができあがってしまう。それは望むところではありません。NTTデータ全体で約500名の新人が毎年入りますが、そのうち60名くらいには先輩が辿っていない経験を積ませ、尖った人材として育ててもいいだろうと」

NTTデータは、電電公社の民営化後に発足したNTTから1988年に分社化して誕生した日本有数のシステムインテグレーターだ。「システム関連の業務に関しては社内に十分な人材がおり、ノウハウもある。一方、デジタル化の進展により、それ以外の業務の比重が年々高まっているのに、人材が追いついていない。ビッグデータ分析、データマーケティング、アジャイル開発といったスキルをもった社員をもっと増やしたいのです」

ITSP事業本部の核となるサービスが、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどを使ったキャッシュレス決済に関するプラットフォーム「CAFIS(キャフィス)」。ここ数年はそのデジタル版に力を入れてきた。「そのDigital CAFISという取り組みに、2017年から毎年2名ずつ、新人を配属させてきました。最初はプログラミングに長けた新人に限っていたのですが、そのうち、まったく素人の新人も入れてみたところ、いきいきと仕事をし、自分たちでスキルや知識を身につけていったんです。この試みを拡大しようと、2020年から始めたのがデジタル特区です」

2020年は新人60名のうち26名がデジタル特区、残りの34名は従来どおりの初期配属が行われた。「前者では新人同士でチームを組むので、心理的安全性が高い状態となります。遠慮なく話ができ、自ら仕事をとりに行ったり、学習したりという姿勢が芽生えるんです。一方の後者では例年、各新人にトレーナーが1人つく。ただし、チームに新人1人となるので、同期が何をやっているかよく分からず、同期の絆も弱くなるし、成長実感も感じづらい」

そこをコロナ禍が襲い、働き方の主流がテレワークとなった。「職場で、いろいろな先輩の行動を観察して学習する。トレーナーが新人の行動を観察して軌道修正をかける。こうした観察学習、観察育成ができなくなり、従来のOJTがうまく機能しなくなってしまった。対照的にデジタル特区に配属された新人たちは元気に仕事をしていました。そこで、共創型OJTを部のすべての新人に適用することにし、2021年から本部内インターンシップをスタートさせたのです」

インターンシップのメインテーマは顧客理解だ。同社は顧客にとっての理想的な「ITパートナー」になろうとしている。「先輩が取り組んでいないことをまず新人にやってもらおうというわけです」

最初のボタンをうまくかけられれば後は自分たちでかけていく

2021年9月にはデジタル特区から大きな成果も表れた。入社2年目の社員で構成される2つのチームが協力し、Digital CAFIS関連の新サービスを立ち上げたのだ。

デジタル特区にせよ、インターンシップにせよ、新人だけで構成される“出島”を本部内に設けた形だが、運用のコツは何か。「各新人と最初に1on1をしっかり行い、心構えやミッションを腹落ちさせることを丁寧にやっています。最初のボタンをかけるところがうまくいけば、後は自分たちでボタンをかけていきます」

サポート体制も気になるところだが、まずデジタル特区においては各チームに中堅社員のPO(プロダクトオーナー)をつけた。2021年はそれも新人が担っている。インターンシップ組に関しては、部門人事から1名、各事業部から1名、計2名の相談係が各チームにつく。「2年間、やってきて分かったのは、新人を何もできない仕事の初心者として扱ってはいけないということ。目的志向が明確な働き方が彼らの成長を加速させます。彼らの可能性を信じてチームに任せてみることです」

果たして、同様の試みはNTTデータの他の事業部あるいは他社でも実施する意味はあるのか。「われわれのように、変革が必要な事業部や、そうした事業を展開している企業はともかく、それ以外においては必要ないかもしれません。ただ、テレワークが広がり、従来型のOJTが機能しづらくなっている昨今、新人育成を現場任せにせず、与えるテーマや環境を人事がしっかりと構築し、主導するという点は参考になるはずです」


【text:荻野 進介 photo:柳川 栄子】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.65 特集2【これから求められる「個を生かすオンボーディング」】より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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