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企業事例

実践と受講者同志の交流に重点を置く管理職研修 オカムラ

学びの日常化と最大化を目指す分散型研修の実際

  • 公開日:2022/01/24
  • 更新日:2024/05/17

受講者が集まり、講師の話を聴講する。そんな学校の授業のような研修が変化しつつある。その代表例を、オフィス家具などのものづくりに加え、オフィスや学校など、さまざまな空間に関するソリューション事業にも力を入れるオカムラの例で見てみよう。 株式会社オカムラ 人財開発部 坂本憲一氏にお話を伺った。

管理職研修の分散型研修への刷新
受講者、受講者の上司、人事担当者にとっての三者ハッピー施策
多様な働き方の実現としてのオンライン研修

管理職研修の分散型研修への刷新

オカムラは2020年、座学での集合研修中心だった従来の管理職向け研修を、実践や受講者同士の交流に重点を置く内容に刷新した。管理職向け研修の対象者は2つに分かれる。1つは新任管理職向けで、目標管理制度を通じたマネジメント全体の理解がプログラムの中心。もう1つは、数年の管理職実績をもつ管理職向けで、こちらは自己の課題を解決するスキルの習得に重きが置かれる。

具体的には、どちらの研修も6カ月の間に、初回研修とフォローアップ(FU)研修2回の計3回の集合研修を設定した上で、初回研修の前にeラーニングによる事前学習プログラムを入れた。

次に、研修と研修の間のそれぞれ2~3カ月間に、各自がアクションプランに基づいて職場での実践を行うと共に、2回のFU研修の直前には、受講者同士でディスカッションする場を設けた。

また、研修の直前には各受講者が直属の上司と、研修の成果や実務への活かし方を話し合う研修面談を実施しているが、終了後にも改めて研修面談を設定した。

しかも、コロナ下という状況のため、集合研修と受講者同士のディスカッションはすべてオンラインで実施した。座学研修を集中型とするならば、分散型であり、実に盛りだくさんの内容である。

受講者、受講者の上司、人事担当者にとっての三者ハッピー施策

人財開発部の坂本憲一氏がねらいをこう話す。「私は一昨年の8月に人財開発部に異動してきました。その前に実感していたのは、当社の研修は受講者が“受け身”だと。ある日突然、人事担当者から受講を促すメールが来て、面倒くさいなと思いながらも参加する。でも、存外面白くて、ためになる内容が多く、一生懸命学ぶのですが、研修後に仕事に戻ると、過半を忘れてしまう。これを何とかしたい。脱・受け身となる自律的な学びを提供し、学びを日常化したいと考えたのです」

まず取り組んだのが研修の事前学習としてのeラーニングの導入だ。こうすれば知識の学習ではなく、主体的な議論を研修の中心にすえることができる。「研修の刷新と同時並行で、オカムラユニバーシティという企業内大学の開設も進めていました。そこでは研修の事前学習以外のeラーニングプログラムも用意しており、コンテンツ提供に役立てると共に、各プログラムの受講者の学習状況を把握できる学習管理システム(LMS : Learning Management System)の導入を決めていました。それを研修の事前学習に使えたのが大きかった」

さらに研修面談の強化も目指した。研修前後に受講者が自分の上司と1on1を行う。それによって研修の当事者、つまり、受講者、受講者の上司、人事担当者すべてにメリットが生まれると考えた。「受講者にとっては、研修前の1on1で上司からの期待が明確になり、心の準備ができます。研修後の1on1では学んだ成果を実務で活かすための振り返りの機会となる。上司にとっては、研修というイベントを通じ、受講者の育成に関する対話が深まる。人事担当者にとってのメリットは、受講者の研修への意欲が高まり、さらに学んだことが実務に活かされることで、研修効果が期待できるということです。私はこれを『三者ハッピー施策』と呼んでいます」

受講者同士の関係強化も図った。そのためにディスカッションの時間を多くとった。時間数にして全体の65%である。これにも坂本氏の実体験があった。「研修の満足度を考えた場合、講師やプログラムの質が大きなカギを握るのは誰でも想像できます。一方で、受講者同士の関係性も大切ではないかと。私も講師の話を拝聴するだけではなく、同じグループになった人と打ち解け、お互い活発な議論ができるような研修は満足度が高いと感じます。そのため、受講者同士の交流ができるような研修であれば、満足度も高く、実務での実践もスムーズに行くと考えたのです」

多様な働き方の実現としてのオンライン研修

結果は予想通りだった。受講者アンケートによれば、全体の満足度が以前より上がった。研修面談と受講者同士の関係性の強化は、いずれも研修の満足度と有効性に対して統計的に有意にポジティブな影響を与えていることも判明した。

脱・受け身が成功しつつあるわけだが、企画の段階で困難はなかったのだろうか。「企画を本格化させたのが2020年4月でした。当初は受講者が対面で集まるリアルの研修を想定していたのですが、コロナの状況が悪化するなか、部内での議論を経てオンラインのみで実施することに決めました。先が見えないなかで時間を有効活用し、より良いプログラムにするためには、リアルかオンラインのどちらかに振り切る必要性を感じていたからです。振り切るならオンラインだ。上司にそうプレゼンして、理解をしてもらいました」

なぜオンラインに振るべきだと思ったのか。「オカムラはコロナ前から多様な働き方の実現に取り組んでいます。街中のあらゆる場所をワークプレイスとみなし、仕事の目的や内容に応じて自らが最適な場所を選択することにより、最も効率が良い働き方を実践しています。『ひと』を中心として『制度』『テクノロジー』『環境』という3要素の改革を働き方改革として取り組んでおり、テクノロジーを駆使した分散型の学びを実践していくことは、一人ひとりの従業員が活き活きと働ける環境の実現の一環でもあると思ったのです」

今後についてはどう考えるか。「効果測定に受講者の上司の視点を加えマルチ分析がしたい。研修後の面談の後に、受講者の上司にもアンケートをとり、分析すると新たな事実が見えてくるのではないかと思います。人財育成は成果に結びつくプロセスが非常に長く、しかも成果の可視化が非常に難しい。だからこそ、しっかり効果測定をしつつ研修内容を地道に向上させていくことが重要だと考えています」

【text:荻野進介】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.64 特集2「変わる企業研修 ―オンラインがもたらした新しい学びのあり方―」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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