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THEME 新人/若手

企業事例対話を通じたオンボーディング アカツキ

新卒も中途もつながりを大切に 全社で成長をサポート

新卒も中途もつながりを大切に 全社で成長をサポート

オンボーディングというと、とかく新卒採用者のみを対象と考えがちだが、実は中途採用者に関しても、非常に重要だ。ここでは、新卒、中途双方に対し、社内のつながりを重んじ、よく練られた施策を全社一丸となって実行しているアカツキの例を紹介したい。
株式会社アカツキ Chief of Staff, Games 湯前慶大氏、ゲーム職能本部 企画職能 ゼネラルマネジャー(GM)菅 隆一氏、ゲーム職能本部 職能支援室 高木 瞬氏、ゲーム職能本部 企画職能 小原 彩氏にお話を伺った。

安心できる場の醸成と対話による配属決定

2010年に3名でスタートしたIPプロデュースカンパニー、アカツキ。現在は240名強まで社員が増え、2017年には東証一部に上場した。

この記念すべき年に深刻な問題が発生していた。折角採用した新卒に1年以内に辞めてしまうメンバーが発生したのだ。「本人たち任せで、同期同士のつながり強化や会社に対するロイヤルティの向上といった施策が明らかに不足していました。また、上場を経て規模が急拡大するなか、私たちが彼らに求めるものと、彼らが私たちに求めるものに齟齬が生じていたのかもしれません」(小原彩氏)

配属後の問題もあった。同社の新卒は数十名から200名までのプロジェクト(「課」相当の組織単位)に配属される。「所属したプロジェクトのみならず、アサインされた仕事のなかで人間関係が完結してしまう傾向がありました。アカツキにではなく、プロジェクトに合わなかったら辞める、という流れができていたのです」(菅隆一氏)

中途採用においても問題が発生していた。上位のポジションで採用した人が期待どおりの成果を発揮できなかった。「前職で本人の能力が十分発揮できていたのは、培ってきた人間関係の力が大きく、アカツキに入り、それが使えなくなったから成果を上げづらくなっているのではないかと。こうした人間関係構築上の問題は本人だけで解決できず、われわれがサポートしなければならないと考えました」(湯前慶大氏)

早速、新卒、中途それぞれにオンボーディング施策を導入した。

新卒に対しては、4、5月の入社時基礎研修に、アカツキのミッションや方針と、各自のWill(希望)や価値観との重なりを意識させるコンテンツを用意した。これは同期同士の相互理解も目的にしている。「ここは安心できる場だ、自分を理解してくれる人がたくさんいる、という感覚を早期に醸成したいと思いました」(小原氏)

定期的な1on1も設けた。「直属の上司ではない私が、隔週あるいは月1回といった各自の希望に応じ、全員と1年間、行います。何を話してもいい場として設定し、希望配属先も聴取します」(小原氏)

6月に実施される配属に関しても工夫を凝らした。4月末から職能の育成チームが、先の研修で見えた本人の資質とその年の経営方針を基に、配属案を作り、各プロジェクトリーダーに打診する。新卒には思考行動特性を診断するツールも受検してもらうが、結果は参考程度に活用。本人希望も踏まえ、1カ月にわたる関係者の対話によって配属を決定する。配属の理由は本人にも説明する。

育成責任自覚のため あえてトレーナーと呼ぶ

その際に重要な役割を担うのがトレーナーだ。「新卒配属の場合、鍵を握るのが、誰に就くか、です。弊社はフラットな会社で、上司、部下といった言葉を使いません。そこで、新卒が入ったプロジェクトのリーダーを、育成責任を自覚してもらうためにトレーナーと呼んでいます。人間的相性が合うことも含め、この新卒のここを伸ばしてくれそうだ、という人が適任です」(菅氏)

アカツキは事業組織と機能組織が組み合わさったマトリックス型組織であり、事業組織におけるトレーナーの全員と、機能組織における職能長、職能の育成チームが隔週で集まる会も設けた。

ここでは各新卒の状況報告を行い、必要に応じたサポートを実施する。この三位一体体制を敷いた2018年から新卒離職率は大幅に低下した。

中途に関してはどうか。「2019年から、採用面接の場に、求職者が配属される予定のプロジェクトのメンバーが同席し、組織や仕事との相性を確認するようにしました」(高木瞬氏)

さらに2020年後半から注力した施策が3つある。1つは「職能間の連携強化」で、各職能別に実施されていたオンボーディング施策の横連携を図った。例えば資料フォーマットの共有や、エンジニア職で強化していた、早いタイミングでの成功体験づくりなどだ。

もう1つは「人事と各職能が連携したモニタリング機能の強化」。受け入れがうまくいっているかを関係者が把握できるように、入社前から当該本人の情報を一元管理する仕組みを作り、人事と各職能長が中途採用者の状況について語り合う場を月1回設けるようにした。

最後は「オンボーディングからの人材開発・組織開発」である。例えば、新卒のみに実施されていた定期面談を入社後半年間は中途にも行う。

アカツキ色には染め上げない 中途者は新たな文化の付与役

「文化オンボーディング」という試みもある。ミッションやバリューといったアカツキの組織文化への理解を読書会形式で深めていく。参加者は中途入社者が多く、自然に「同期のつながり」が生まれてくる。

アカツキは「世界をエンターテインする。クリエイターと共振する。」をミッションに掲げ、強い組織文化をもつ企業として知られる。「中途入社者をアカツキの文化に染め上げたいわけではありません。アカツキの文化や価値観を強調しすぎると、彼らが以前在籍していた会社と、当時の本人を否定することになる。そうなると、受け入れられるものも受け入れられません。そうではなく、アカツキがすべて正しいわけではない、むしろ前の会社で優れている点は遠慮なく持ち込んでください、という姿勢です」(湯前氏)

コロナ禍によりアカツキでもテレワークが普及した。新卒向けオンボーディング施策への影響を小原氏が話す。「出社できなかった分、価値観まで含めた同期との相互理解、そして会社とのつながりを意識させる研修を強化しました。結果的に、例年にも増して同期同士のつながりを強めることができました。1on1は1年が原則なのですが、2年目以降も継続してほしいという声があり、希望者とは続けています。オンボーディングはオンラインでも十分可能だと思います」

中途向けに関しては高木氏が話す。「アカツキでは属人的な仕事のやり方が主流で、経費精算など、身近な困りごとは隣の人に聞いて解決していました。出社が減るとそれができなくなるので、必要な情報に誰もがアクセスできるローコンテクストな状況を整備しています。結果としてこれが中途採用者のオンボーディングにも奏功しているはずです」


【text:荻野進介】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.63 特集1「変わるオンボーディング」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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