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THEME 新人/若手

企業事例ピープルアナリティクスでオンボーディングを進化 パナソニック

若手の心の状態を定期的に把握した上で定着・活躍に生かす

若手の心の状態を定期的に把握した上で定着・活躍に生かす

若年層の早期退職や活躍できない状態は、放置できないオンボーディングの課題だ。新人の隠れた不安や不満を明るみにして上司との対話につなげるツールなども活用しながら、ピープルアナリティクスに取り組み、オンボーディングを進化させる企業の例を紹介する。
パナソニック株式会社 プロフェッショナルビジネスサポート部門 リクルート&キャリアクリエイトセンター 企画部 部長 田中和也氏、戦略企画課 課長 坂本 崇氏にお話を伺った。

パルスサーベイでモチベーションを定期的に把握する

日本を代表するメーカー、パナソニックは他の大企業と同じく、「新人が辞めない会社」だったが、この10年ほどで変わった。以前は2%弱だった入社3年以内の離職率が上昇傾向にあるのだ。

カンパニー制を敷く同社において、採用・転身支援部門であるリクルート&キャリアクリエイトセンターに、同社で人事畑をずっと歩んできた田中和也氏が異動してきたのが、2019年10月のこと。本人が話す。「異動前から新人・若手のマネジメントが難しくなってきたことを痛感していました。以前は、元気のない若手がいた場合でも、職場の先輩や上司が積極的にコミュニケーションをとることで、いつの間にか元気になっていた。

ところが昨今、そうした職場の相互作用が弱くなりました。業務が多忙で、若手育成に割ける時間が減っていることもありますが、若手の変容も大きな要因です。自らのキャリアに強い関心をもち、与えられた役割や仕事が成長に寄与しないと判断すると退職してしまう。昨日まで生き生きと働いていたのに、ある日突然、辞めますと」

一方の坂本崇氏は2018年4月からこの部署に在籍している。人と組織に関するデータを分析し、課題解決に生かすピープルアナリティクスを推進する責任者だ。同社では生産技術者としてキャリアをスタートさせ、社内公募で異動してきた。「入社直後はやる気に満ちていた若手が、数年経つと輝きを失い、退職するケースを何度も見て、強い危機感を覚えました。エンジニアとしてのスキルを生かし、何かできないかと思い、手を挙げたのです」

若年層の定着・活躍の強化という問題意識を共有する2人は、2020年9月、社員のモチベーションを定期的に把握するパルスサーベイを全社の新人にトライアル導入する。アンケートを基に本人のモチベーションを5段階で示し、不満やストレスの具体的な中身も明らかにする。1〜2カ月に1回実施し、結果は本人や上司にも知らせる。

「互いに本当のことが話せるようになったと上司と本人、双方に好評です。本人も正直に回答してくれます。担当人事やメンターにも結果を共有し、各上司に、この新人の場合このあたりをケアしてみてください、というアドバイスがタイムリーにできるのも重宝しています」(田中氏) 

効果はすぐに表れ、2020年度は新人の離職者が前年の約5分の1に減った。入社半年後の同サーベイでも、7割弱が高い意欲で働いているという結果が出た。これを受け、今年度は本導入に踏み切り、入社3年目まで実施範囲を広げる。

配属先や仕事とのマッチングを採用段階から強化する

一方、オンボーディングで大きな鍵を握るのが配属だ。同社は技術系で、携わる仕事のイメージがわきやすい「選考コース採用」を実施。2019年度からは事務系の一部でも「職種確約採用コース」を設けている。「過去の入社3年目アンケートでも、やりがいを感じにくい社員の多くが、配属希望がかなわなかった人たち。そういう意味でも配属は非常に重要です。配属は、本人の希望を複数回聴取し、現場の意向も酌みつつ、最後は人事の経験知で行います」(田中氏)

そこを、経験知から仮説を作り、データに基づき行う。坂本氏が取り組んでいるのがそれだ。具体的には、採用時の適性検査と現在の活躍度との関係を探り、配属先で活躍できる人の特徴を改めて把握し直す。「まずはそこに取り組み、その後は入社後の職種や組織とのマッチングに迫りたい。早期退職の場合、仕事は合っているが組織に合わないケースと、組織には適合したものの仕事に向かないケースがある。どちらのミスマッチも防ぎたいんです」

坂本氏は2006年に同社に入った。田中氏同様、学生の変化を肌で感じている。「当時の学生は私を含め、配属先や職種へのこだわり以上に、パナソニックに入社することに重きを置いていた。今は自分がやりたい仕事やキャリアのイメージがあり、それを実現する会社としてパナソニックを選んでいる。期待値が高いのですが、調整がうまくいっていないのです。

配属先や仕事とのマッチングを採用段階から強化したい。そのために必要なのが、データ活用です。ベテラン人事社員の経験や勘を形式知化することで、その世代の方々が抜けても、採用活動の質を担保することを目指しています」(坂本氏)

現在は分析の途上だが、こんな仮説が見えてきた。「配属直後は業務量の少なさを、担当をもつと、逆に業務量の多さを不満に挙げるというように、新人には時期ごとに特徴的な不満があります。ところが意欲の高い新人ほど不満要因が少ない傾向が見えてきました。これは上司が頻繁に対話し、彼らの不安や不満に常に寄り添っているからではないかと。上司の役割が非常に重要ということです。こうした仮説をデータで実証する。この繰り返しが重要です」(坂本氏)

コロナ禍にあってオンボーディングはうまく機能したのだろうか。

田中氏は「テレワークに移行しましたが、特に大きな問題は生じていません。パルスサーベイがあり、何かあればアクションできたのが大きかった」と話す。一方の坂本氏は今後の課題をこう指摘する。「上司や仲間と会えず、パナソニックに入った実感がない、と嘆く新人がいました。こうしたさみしさをどう解消するか、テレワーク全盛時代のオンボーディングの課題だと思います」


【text:荻野進介】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.63 特集1「変わるオンボーディング」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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