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企業事例ピアレビューとバリューにより機能する評価制度 メルカリ

リモートワークでもOKRの評価サイクルはしっかり回っている

リモートワークでもOKRの評価サイクルはしっかり回っている

リモート時代でも、ビフォーコロナとほとんど同じように評価制度が機能しており、社員の不満や不安が少ない会社がある。メルカリもその1社だ。なぜ評価制度が問題なく機能しているのか。コロナ禍にどのような対応をとったのか。株式会社メルカリ 執行役員CHRO 木下達夫氏に詳しく伺った。

2020年2月に原則在宅勤務に切り替えた

メルカリが原則在宅勤務に切り替えたのは、2020年2月の最終週だった。「感染経路不明の感染者が出た時点で、経営陣が社員の安全を最優先すると判断しました」

実は、それ以前のメルカリは、在宅勤務は非推奨だった。社員同士のコミュニケーションを大切にしており、できるだけ出社することを求めていたのだ。在宅勤務は上司の許可を得れば可能だったが、多くはなかったという。「ところが、原則在宅勤務のアナウンスを出した次の日から、社員の相当数が出社しなくなりました。社員の適応はとても早かったです」

緊急事態宣言と学校の休校を受けて、4月にはコアタイムありのフレックスタイム制からフルフレックス制のトライアルを導入した。なお、7月以降は出社してもリモートワークでもよく、サテライトオフィスも試験的に導入している。

リモートワークになって生産性が総じて高まっている

メルカリでは、リモートワークとなってから、社員満足度と生産性が高まったそうだ。「私たちは、従業員ロイヤルティーを計測する指標としてeNPS(SM)を採用していますが、コロナ禍が始まる前と後を比較すると、10ポイント以上伸びています。多くの社員が、コロナ禍における会社の対応に満足しているようです。また、『リモートワークになって生産性が高まった』と回答した社員が30%ほどおり、変わらないと回答した社員が約50%でした。私の実感でも、生産性は総じて高まっています」

一方で、木下氏が課題と感じていることもある。「私たちは今、オンライン面接だけで中途採用をしているのですが、オンライン入社社員のエンゲージメントスコアが下がっています。以前は入社時のエンゲージメントスコアが非常に高いのが普通でしたが、コロナ禍においては入社時から他の社員と同レベルのスコアなのです。時間が経つと、さらに下がる可能性があると危惧しています」

対策として、さまざまな取り組みを始めている。「各チームとも、オンラインでの1on1やチームランチなどを頻繁に行っており、メンバーの受け入れ体制はすでに整っています。ただ、他チームのメンバーと親交を深める機会は十分ではありません。そこで今、CEO対話セッションつきのオフィスツアーを開催したり、オンライン合同ランチを奨励したりしている最中です」

木下氏は、コロナ禍での人事の重要性を実感しているという。「会社と従業員の間をつなぎ、信頼を育む上で、やはり人事は大きな役割を果たすのだと再確認した期間でした」

ピアレビューが評価の精度と納得度を高めている

本題に入ろう。メルカリでは、コロナ禍においてもビフォーコロナとさほど変わらず、評価サイクルがしっかり回っているという。

「私たちは評価制度にOKR(Objectives and Key Results)を採用しており、リモート下でも十分機能しています。気になることがあるとすれば、リモートワーク下でマネジャーがネガティブ評価をオンラインでフィードバックする際、メンバーにうまく伝わらないケースがあることです。飲み会やランチでのフォローアップができなくなったこともあり、メンバーがネガティブ評価を受けたあと前向きになれない懸念があります。今後、オンラインで建設的にフィードバックするスキルをマネジャー研修に織り込む予定です」

メルカリではなぜ、リモート時代でも評価制度が大きな問題なく運用できているのだろうか。

要因の1つは、「ピアレビュー制度」にある。3カ月に1度、身近で働く仲間たちから、「Good」か「Motto」の二択で簡単な評価をしてもらう評価制度だ。「もちろん、3カ月に1度、上司との目標管理面談もあるのですが、上司の評価だけだと、どうしても納得できない社員が出てくるのです。ピアレビューが加わることで、評価の精度と納得度が確実に高まります。特に評価が低い場合、誰もが上司は自分の仕事をよく見ていない、と思いがちです。しかし、ピアレビューでも同様の指摘があれば、上司の評価が的確だと裏づけられます。

ビフォーコロナでは、3カ月に1度、3名のピアレビューをもらうルールでしたが、コロナ禍になってからでは、さらにピアレビューの数を増やして納得度を高めています。リモートワークでも評価に対する不満が少ない要因の1つは、ピアレビューが機能しているからだと思います」

3つのバリューの浸透度が極めて高い会社

評価サイクルがうまく回っているもう1つの要因は、「3つのバリュー」だろうと、木下氏は語る。

「メルカリには、創業まもなく作った3つのバリューがあります。『Go Bold』『All for One』『Be a Pro』の3つです。採用時にバリューとの親和性を重視していることもあり、バリューの浸透度が極めて高い会社です。誰もが日常的にバリューを語り、バリューを体現しようとしています。

Go Boldは、世の中にインパクトを与えるイノベーションを生み出すために、失敗を恐れず大胆にチャレンジしよう、という呼び掛けです。All for Oneは、周りを巻き込みながら、1つの目的に向かって皆で力を合わせ、大きなミッションを実現しようとする姿勢を示しています。Be a Proは、プロの集まりとして自律的に働き、アウトプットにコミットしよう、という考え方です。誰もがバリューを愛しており、特に皆Go Boldが大好きです」

評価とバリューの体現が直結しているから機能している

Be a Proは、自律的に働く必要があり、これまで以上に成果で評価されるリモート時代に適したバリューだ。全員がプロであろうとしていることは、リモートワークでの評価サイクルの好循環に寄与しているに違いない。しかし、それ以上に注目したいのが「Go Bold」だ。なぜなら、Go Boldが評価制度とビジネスをつなげているからだ。

「私たちが採用するOKRは、会社全体の目標を部門・チームに落とし込み、個人目標を設定する点ではMBOと同じです。しかし、決定的に違うのは、MBOの個人目標が網羅的なのに対して、OKRの個人目標は『3つ程度のシンプルなストレッチゴール』だけを設定することです。

特に重要なのは、ストレッチゴールであることです。私たちは、達成できないようなゴールを『ムーンショット』と呼んで奨励しています。なぜなら、ムーンショットを掲げると、Go Boldなチャレンジに果敢に挑むようになり、10X(短期間のビジネス急拡大)の実現可能性が高まるからです。

評価基準は、目標到達率ではなく、『アウトプットのインパクトの総量』です。3つのバリューが浸透しているメルカリでは、この基準に対する不満はほとんどありません」

評価とバリューの体現が直結しているからこそ、メルカリの評価制度は、リモートワークでも変わることなく機能しているのだろう。

なお一方で、メルカリは心理的安全性をもたらす「Trust&Openness」も重視しているという。安心安全が担保されているからこそ、勇気をもってムーンショットに向かっていける。攻めと守りのバランスもとれているのである。


【text:米川青馬】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.61特集1「リモートが問う人事評価のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

リモートワークでもOKRの評価サイクルはしっかり回っている
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