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企業事例「KDDI版ジョブ型」人事制度の導入 KDDI

成果主義色を強めた新人事制度はむしろコロナ禍にマッチする

成果主義色を強めた新人事制度はむしろコロナ禍にマッチする

2020 年という年の切りがいいからか、昨年は人事制度を刷新した企業が多かった。本格導入は今年4月からだが、ジョブ型に大きく舵を切ったKDDIもその1社だ。そこにコロナ禍が起こった。制度改定は新しい時代にいかに機能するのか。
KDDI株式会社 執行役員 コーポレート統括本部 人事本部長 白岩 徹氏にお話を伺った。

「KDDI版ジョブ型」人事制度導入で重要になるのは1on1

2020年7月、KDDIは「KDDI版ジョブ型」人事制度の導入を発表した。DDI、KDD、IDOの3社が合併し同社が誕生したのが2000年のことだ。それ以来の抜本的な制度改定となる。

その背景について、同社執行役員コーポレート統括本部人事本部長の白岩徹氏が話す。「人口減少の影響や業界内競争の激化もあり、早晩、主力の携帯電話事業だけではやっていけなくなるという危機感があります。実際、当社は通信を母体としながら、金融、教育、エンターテインメントといった異分野にすでに進出しています。そこで活躍しているのは中途入社組です。年間180人ほどですが、私が人事に来た7年前はたった20人でした。彼らは自分の専門領域、つまりジョブを決めて入社してきます」

同社は、新卒採用でもジョブ型を一部で取り入れている。2019年から始めたWILL採用は「この領域の仕事がしたい」という学生の意思(WILL)を尊重する。今年4月に入社予定の新卒者約280人のうち、4割がWILL採用組だ。「これから入ってくる人たちの多くは、会社主導のキャリアになりがちで年功色が濃いメンバーシップ型ではなく、ジョブ型の雇用を志向している。ならば、人事制度もそれに対応したものにしなければと考えたのです」

新制度は現在、2020年8月以降の中途入社組のみに適用されている。今年4月には全組織長と特定分野の専門性を認定されているエキスパートへの適用が決まっているが、それ以外のメンバーに関しては労働組合との交渉でスタート時期が決まる。

ジョブ型を謳うものの、欧米型の細分化した固定的なジョブ型ではない。期初に目標を定め、期末に達成具合を評価する目標管理が、従来と同じように行われるが、「上司と部下が期初と期末に話し合うだけになっていたケースもある従来のやり方をやめ、上司と部下が、短時間でも頻繁に話し合う1on1を取り入れます。変化の激しい時代のなかで目標もその都度、変わっていくだろうと」。

鍵を握るのが組織長だ。「評価の仕組みが大きく変わるため、第一評価者となる組織長に向けた実践的な研修を念入りに行っています。重要になるのは1on1。やり方は対面、ビデオ会議、チャット、電話、何でもいいと伝えています。プロセスを残せるシステムも用意します。月1回はやってほしい」

管理職という言葉は使わない 上下の入れ替えも頻繁に

評価は目標に対する具体的な成果と共に、組織の壁を越えるようなチャレンジ行動をとれたかどうかも対象となる。加えて、同僚、部下、上司からの360度評価も導入し、その結果も勘案する。

しかも以前は、最高評価は何%、最低評価は何%というように、枠が決められた相対評価だったが、各部門に評価ポイント数を預ける形に変えた。絶対評価ではないものの、多くの社員に最高評価をつけることも可能になった(その場合、必然的に低評価者を増やさなければならない)。

使用する言葉も改めた。「上から統制する」という意味合いをもつ管理職を廃し、経営基幹職という名称にした。それ以外の正社員は基幹職となる。

経営基幹職の要件は組織のリーダーであることと、何かの専門領域のエキスパートだと認定されていること。3グレードで構成され、それぞれに給与ゾーンがあり、毎期の評価によって給与が上下する。経営基幹職は全社員における割合を定め、現行の管理職が全員移行できるわけではない。

毎期の評価の積み上げと昇進とは関係がない。組織のリーダーやエキスパートは「任用」されるものだからだ。しかも、今まではいくら優秀でも、新入社員が管理職になるまで最低8年が必要だった。昇進には年功が加味されたからだ。「今回の改定により、最短2年で経営基幹職になれるようになりました。この制度では経営基幹職と基幹職の入れ替わりが頻繁に起こり得ます。今までは試験を受け、管理職になればずっと安泰でしたが、そうではなくなるわけです」

昨年7月以来、今年4月の本格導入に向け、人事主体で社内説明会や部門との対話会を繰り返し開催している。社長や役員が自らスピーカー役となって直接社員にメッセージを発信する場も設けている。「制度のフルモデルチェンジなので、多くの社員が不安を抱いているのは事実です。説明会を開くと、従来制度に長年慣れ親しんできた社員を中心に、変化に対する戸惑いの声が聞こえてきました」

既存社員の場合、ジョブ(得意領域)という概念で自分の仕事を捉えるのは難しいのではないか、という疑問が湧く。これについては、実は2020年4月から社内副業制度という仕組みが走っている。自ら志願し、就業時間の2割程度という条件で、社内の別の業務に副業という形で携わることができる。「今人事では、本籍が営業という社員が採用ホームページを副業として作ってくれています。ホームページの作成が得意だそうです。そうやって、実務を通じて経験を積み、自分の得意なジョブを見つけ、磨いていく。意図したものではありませんでしたが、これが新しい人事制度を支える仕組みになっています」

リアルとオンラインを各部、各自がうまく使い分けよ

さて、昨年来、新型コロナウイルス感染症が世界を揺るがしている。日本ではほとんど普及していなかったテレワークが急速に広まった。2月初めからKDDIも徐々に移行していたが、特に4月7日の緊急事態宣言発出以降、顧客情報を扱う社員や現場での業務が必要となる社員を除き、営業を含め、9割以上の社員が在宅でテレワークをするようになった。

5月25日の解除後は、各部門に目安となる全社一律の出社率を示す形で対処してきたが、9月に入って改めた。会社が具体的な数値目安を示すことはやめ、各部門で、安全かつ最も生産性が高くなるような最適な働き方を適宜、決めるやり方に移行した。「在宅の方が生産性が上がる仕事もあれば、出社してシステムを動かしながらやった方がいい仕事もある。営業と一言で言っても既存のお客様相手の仕事はテレワークで対処できますが、新規開拓となると難しい。そうした事情を勘案し、各部門に一任したのです。実は新人事制度の骨格にあるのが『自律と責任』です。テレワークの判断についても、その方針で各部門に任せたわけです」

新人事制度にとってこのコロナ禍はどんな意味合いがあるのだろうか。

「各自の得意領域で仕事をしてもらい、その成果と行動をきちんと評価する、というのが、今回の人事制度の趣旨です。成果が上がり、良い行動が生まれれば、どこで、いつ働いていようが、構いません。リアルとリモートをうまく組み合わせながら、成果ありきで、最も生産性が上がる働き方を各部、あるいは各自で工夫してほしい。そういう意味では、コロナ禍は制度を確実に浸透させるための追い風になるはずです」


【text:荻野進介】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.61 特集1「リモートが問う人事評価のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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