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THEME 人事制度

企業事例多様な人財の活躍と個の自律的な成長を支援する人事制度 第一生命保険

個の能力を開花させ圧倒的な人財力で変革を成し遂げたい

個の能力を開花させ圧倒的な人財力で変革を成し遂げたい

大手企業の間で、長期雇用、年功重視の日本型人事制度を見直す動きが増えている。第一生命保険(以下、第一生命)も、2020年7月から、多様な人財の活躍と、個の自律的な成長を支援する新人事制度を導入した。制度改定の背景やねらい、取り組み内容、今後の展望について、第一生命保険株式会社 人事部 人事企画課長 ラインマネジャー濱田 崇氏に伺った。

人事制度改定のキーワードは「人財力」

第一生命が10年ぶりの人事制度改定に踏み切り、2020年7月から運用をスタートさせている。その内容は後述するとして、まずはその背景について、人事部ラインマネジャーの濱田崇氏が話す。「経営環境の見通しがますます不透明になりました。人口減少の影響を受け、1996年以来、保険の保有契約件数は毎年減少しています。お客様のニーズも変わり、商品もアプローチの仕方も変わってきた。海外企業はもちろん、他業種からの参入も相次いでいます。保障を売る金融業からお客様の生活の質を最大化するサービス業へ、大きな変革が必要になったのです」

さらに、働く側の事情も大きく変わった。「新卒者に限っても、プライベートも充実させたい、ボランティアなど仕事以外の活動にも注力したい、といったように、価値観が多様化しています。雇用の流動化も進み、転職も増えています。職場における女性の活躍も当たり前となりました。これまでの人事制度ではこうした変化に対応できなくなっていました」

ではどのような方向に変えていけばいいのか。

キーワードは「人財力」だ。「上司から指示されたことを忠実に実行し、会社が敷いたレールに乗っていれば、キャリアが自然に積み上がっていく。こうした均質的人事の逆を目指さなければならない。社員一人ひとりが進む方向を自ら考え、課題に挑戦し、キャリアを切り拓いていく。個の能力を開花させた、圧倒的な人財力をもつ会社に脱皮しなければならないと考えたのです」

マネジメント職と専門職どちらでも輝ける

具体的に手掛けたのは、まずは職責グレードの複線化だ。 

以前も職責グレード制を採用していたが、一番下のG8からG1までの単一のものだった。新制度では、これを、マネジメント職向け、すべての若手および専門職向け、さらにその上に位置する、突出した知見と経験を有する専門職向けの3つに分けた。加えて、弁護士やITスペシャリストなど、社外の人材マーケットが明確に存在する中途採用者を想定したグレードも設けた。

旧制度ではG4がライン課長にあたり、ここに到達しないと、給与が大きく上がらない仕組みになっていたので、ややもすると、処遇アップを目的とした昇進が行われることがあった。「処遇面では満足いくかもしれませんが、苦手なマネジメントを強いられるという意味で、本人はもちろん、その部下にとっても喜ばしいことではありませんでした」

そうした弊害をなくし、それぞれの適性に応じたキャリアを歩めるよう、専門職向けのグレードを複数設けたのだ。「その結果、非マネジメント職でも、ライン長と肩を並べるレベルの給与がもらえるようになっています」

職掌についてもメスを入れた。それまでは、基幹(総合)職は、勤務地が変わるグローバル社員、変わらないエリア社員に分かれ、それとは別に定型業務を行うスタッフ社員がいた。「グローバルとエリア社員には仕事や報酬の差はないという触れ込みだったのですが、グローバル社員には『いつ勤務地が変わるか分からない』という生活設計上のリスクに応じた手当が発生していました。例えば、同じライン課長でも25%の給与差が発生しており、『納得いかない』という声が多数上がっていたのです」

そこで、グローバル社員とエリア社員のうち、高付加価値業務を担う人財を基幹総合職(転居を伴う転勤ありのG型・なしのR型)、付加価値創造業務を担う社員を基幹業務職A型とし、スタッフ社員全員を基幹業務職B型に移行させることにした。「アシスタントマネジャー以上の人財は全員、基幹総合職に編入させ、それより下の人財には希望する職掌を選択してもらいました。自ら選択するからこそ、モチベーションもアップする。それに対して、会社はふさわしい難度の仕事を用意し、会社の期待に応えた社員を厚遇する。会社と社員の関係はこうでなくてはならないはずです」

目指すのはマネジメント改革

評価制度も一新させた。それまでは、全社一律の求める人財像に基づく行動目標と、担当業務における業績目標が評価対象だった。

新制度では、全社一律の行動目標に加え、所属ごとに求められるコンピテンシー(成果をあげるための再現性ある行動)や経験、スキルも評価する。さらに業績目標に加えて、インパクトのある成果は加点評価される。「短期業績も重要なのですが、それ以上に、再現性ある行動面に焦点を合わせることで、継続的な業績向上につながると考えました」

そして、全社員に求める行動目標は全社一律で作成する一方、所属(課やグループ単位)別の行動目標、必要な知識、経験を明記した「人財育成ロードマップ」の作成を各部に義務づけた。

これをもとに、各マネジメント職が部下に対し、毎年、4月の期始面談、9月の中間面談、3月の期末面談を行う。評価と育成をセットで回していくのだ。

「今回の人事制度改定で目指したのは、マネジメント改革なのです。マネジメント職は時には耳の痛いことも部下に伝え、育成に真正面から向き合ってほしい。制度がスタートして半年が経ちましたが、苦労しながら頑張っているマネジメント職、時間が足りないと不満を漏らすマネジメント職が混在しており、まだ道半ばです」

上司と部下の日常的な対話の仕組みも織り込んだ。信頼関係づくりと成長支援を目的とした「1 for 1」(第一生命版1on1ミーティング)である。「週1回、いや月1回、30分でもいいんです。継続的な対話の機会が、多様な価値観をもつ一人ひとりの成長に欠かせないと考えています」

この新制度は人事部員が一致協力し、3年ほどかけて作り上げた。「今年1年かけて社員の共感を増やしながら問題点を探っていく。来年はその問題点に対し微修正をかけ、3年目となる2022年4月にようやく根づいてくると考えています。そこまで気を抜かず踏ん張っていきます」

【text:荻野進介】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol. 60 特集2「自立人材が育つHRMへの転換」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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