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企業事例自律的な働き方へ「Work Style Innovation」 USEN-NEXT HOLDINGS

働く時間、場所、服装すべてが自由になれば人は自律的に働けるか

働く時間、場所、服装すべてが自由になれば人は自律的に働けるか

2017年12月、映像配信事業を行うU-NEXTと音楽配信事業を手がけるUSENが統合され、USEN-NEXT HOLDINGSが誕生。翌年6月、社員にもっと自律的に働いてもらおうと、同社版の「働き方改革」をスタートさせた。そこから今に至る2年間を改革プロジェクトのリーダー、株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 執行役員コーポレート統括部長 住谷 猛氏に振り返ってもらった。

働く場所や時間にとらわれず、仕事の成果を最大化する

同プロジェクトは「Work Style Innovation」と名づけられ、週休3日も可能となるフレックスタイム制度、テレワーク勤務制度、服装自由、社内公募制度、社員からのInnovationコンテスト、70歳までの定年延長などで構成される。スローガンは「かっこよく、働こう。」

これに加え、翌7月には、本社を東京の港区から品川区に移転し、キャッシュレスのコンビニやカフェを備え、最先端のITを駆使したフリーアドレス制のオフィスらしからぬオフィスを新稼働させている。

「グループ全体が進化を遂げ成長していくためには、働く場所や時間にとらわれず、社員一人ひとりが自律的に働き、仕事の生産性を高めるという変革が必要と考えたのです」と、執行役員コーポレート統括部長の住谷猛氏が、プロジェクトのねらいを語る。

滑り出しは順調だった。特に若手社員がすぐに順応し、仕事を済ませたらさっさと帰宅する。一方、ベテラン社員ほど「上司が残っているのに帰れない」「毎日席が変わるのは落ち着かない」といった反応を示したが、それも2、3カ月で解消に向かう。

「トップの宇野(康秀)と私が、しつこいくらいメッセージし続けましたから。『あなたの責任で成し遂げるべき仕事があり、それを通じ成果を出すことがあなたの役割だ。朝9時にオフィスに来ようが昼に来ようが、あるいは、どの席に座ろうが、はたまた家で仕事しようがすべてあなたの自由。とにかく、仕事の成果を最大化する“仕事オリエンテッド”で働いてください』と」

急速に普及が進んだのがフレックスタイム制度とテレワーク勤務制度の併用だ。

例えば、子どもを保育園に預けている社員の場合、朝10時から16時まではオフィスで仕事し、その後、保育園に子どもを迎えに行き、一緒に自宅に帰る。家事と食事の用意を行い、子どもを寝かせた夜8時から2時間、自宅でテレワークする。「コロナ禍前の時点で、本社の半数以上が、こうしたテレワークを活用した働き方を行っていました」

性悪説のマネジメントを性善説に転換させる

一方、マネジャー層の戸惑いは大きかった。「目の前から部下が消えたからです。部下がさぼらないように朝の出社時間を一律で決めておく。相互監視が利くように、島型のレイアウトで向かい合って座らせる。こうした性悪説のマネジメントを性善説に変えなければならなかったからです」

住谷氏自身、その転換に悩んだ1人だというが、自戒を込め、マネジャー層には「よく考えろ」というメッセージを発した。「部下の働きぶりや心身の状態をどう把握すればいいか、成果をどう測るか、しっかり考えてください」と。

その際、役立ったのが、ビジネス専用のチャットツールやカレンダー共有アプリなどのデジタルツールだ。それらに関する情報提供も積極的に行った。

こうした働き方改革に合わせ、2019年9月には評価制度も一新させた。年功色をさらに弱め、成果をより重視する方向に舵を切った。

ただ、こうやって個の自律を促すと、別の問題が生じかねない。社員同士の横の連携が弱くなり、組織が弱体化してしまうことだ。「うちの社員はもともと仲がいいので、あまり心配していませんでしたが、手は打ちました。誕生日を迎える社員を集めたパーティを2カ月に1回、水曜日の午後6時から8時まで、お酒と料理をふるまうハッピーアワーイベントを2週に1回行うようにしました※」

プロジェクトの始動前と後とで何が変わったのか。住谷氏はある女性社員の例を挙げた。「服装が自由になり、オフィスも刷新され、毎朝、着て行く服に迷うようになったというんです。その日の仕事や、協働するメンバーの顔を思い出しながら、仕事により良い効果が生まれるような服を選ぶようになり、しかも、その時間が楽しいと。意識がまさに仕事により良い効果が生まれるような服を選ぶようになり、しかも、その時間が楽しいと。意識がまさに仕事オリエンテッドになって自ら工夫しているわけです。素晴らしいことだと彼女には伝えました」

労働の価値を時間で測る制度から脱することが必要

一方、場所と時間から社員が解放されると、オフィスの価値が減じてしまうことが懸念される。

住谷氏は「そのとおりです」と同意し、こう続けた。「ただ、オフィスには重要な3つの要素があります。1つはプロダクティビティです。仕事の生産性が最大化するようにオフィスは作られているはずです。2つ目はミートアップ。仲間がいて、カジュアルな話ができて、それが思わぬアイディアにつながる。最後はエンゲージメントです。立派なオフィスで働けることを誇りに思う社員は多いと思います。つまり、組織力の醸成という面で、オフィスの存在価値はいまだ大きい。逆にいえば、その3つを担保できないオフィスならば不要ではないでしょうか」

自律的な働き方の実現を目指したプロジェクトが始動し、2年が経過した。その間、コロナ禍という予想外の事態が発生した。

政府による緊急事態宣言の結果、各自にとっての「自由な働き方」は失われ、会社側がテレワークによる在宅勤務を大半の社員に命令することになった。
「望んでいない社員も在宅勤務を強いられたことで、生産性は若干減衰したかもしれません。私の実感では3割ほど。でも、減衰してもいいんです。労働時間も減ったので、実質の生産性は変わらないか、逆に上がっているかもしれないからです。つまり、本来ならやらなくてもいい無駄な仕事があぶり出されたということかもしれません。4月からの3カ月は貴重な実験の場だったともいえます」

理想の状態を頂上としたら、何合目あたりまで来ているのだろうか。「道半ばですね。というのも、日本の労働法制が労働の価値を成果ではなく時間で測るやり方からいまだに脱していないからです。そこが改まれば、われわれはもっと自律的に働くことができる。よりクリエイティブに価値創造ができるようになるのではないでしょうか」

※誕生パーティやハッピーアワーイベントにつきまして、現在はコロナ禍の影響で開催しておりません。

【text:荻野進介】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.59 特集1「自律的に働く」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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