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THEME マネジメント/リーダーシップ

企業事例Fujitsu Management Discoveryプロジェクト 富士通

現場から抽出した優れたマネジメントを全社に広める

人事課題をデータによって解決するHRテックが注目されている。それを使って、自社のマネジャーの在り方を「見える化」し、マネジメント力の向上に役立てている事例を紹介する。「Fujitsu Management Discoveryプロジェクト(優れたマネジメントを発見するプロジェクト)」の概要について、富士通株式会社 総務・人事本部 人材開発部長 佐竹秀彦氏にお話を伺った。

自社の優れたマネジャーをデータによって見える化

優れたマネジャーとはどんな人か。100人に聞いたら、100通りの答えが返ってくるはずだ。だとしたら、組織として、あるマネジャーを優れたマネジャーに育てることも難しいということになる。

その難題に挑んだのが富士通だ。「優れたマネジャー」が具体的に何を行っているかを見える化し、この層を増やすことに取り組んだのだ。具体的な施策は後述するとして、試みの背景から見ていこう。

「きっかけは2017年から取り組んだ働き方改革でした」と、人材開発部長の佐竹秀彦氏が話す。目的は「社員一人ひとりの生産性向上」だ。前段階として、長時間労働の解消と休暇の取得増、テレワークの推進など、多様で柔軟な働き方の実現に取り組み、一定の成果を上げることができた。ただ、問題はそこからだった。それだけで真の生産性向上が実現するとは思えなかったのだ。

佐竹氏は「自律性」に着目した。「自律性には2通りあり、1つは上司から言われたことを自分で咀嚼して進められること。もう1つは課題そのものを自分の頭で考え、周囲もうまく巻き込んで動けること。目指すべきは後者だと思いました。いずれにせよ、大きな意味をもつのが上司のマネジメントです。そこで、2018年度から上司のマネジメント力向上を目的として、一般社員が自身の上司のマネジメントについて答える『職場マネジメントアンケート』を開始しました」

アンケート結果は、上司の気づきと育成を期し、コメントも含めて上司とその上司(統括部長)に渡された。

「『若手と飲みに行き、上司への不満を聞いても、どこまで信じてよいのか分からなかったが、こうした形で出てくると信頼できる』と統括部長から言われました。この結果を本人にフィードバックし、育成に役立てたいと」

上司本人たちからも、「行動の振り返りができてよかった」という好評価が多かった。その上で、以下、大まかに3つの要望が上がってきた。

まずは「われわれだけではなく、統括部長にも同じ調査を」という声だ。その声が通り、今年実施されるというから、富士通の本気度がうかがえる。「マネジャーの負担の大きさを分かってもらいたい」という声も多かった。そして何より、「自身の課題は分かったが、具体的にどうすればよいのか。優れたマネジメントの手法が知りたい」という切実なものもあった。

こうした声を受けて、Fujitsu Management Discoveryプロジェクトが発足した。目指すべき良いマネジメントとはどのようなものか。人事としての答えははっきりしていた。部下にタスクを細かく指示し、管理する上意下達型ではなく、仕事を任せることで自ら考えさせ、力を引き出し、育てるコーチング型だ。「皆、本で読んだりして頭では分かっているのですが、広まらない。その理由は、ファクト(事実)が不足しており、本当にうまくいくのか分からないことと、成果が上がるまでに時間がかかることだと考えました。そこで、優れたマネジャーがどんな特徴をもっているかを、ファクトをもとに研究することにしたのです」

まず「優れたマネジャーは成果達成と部下育成を両立している」という仮説が置かれた。図表1を見ていただきたい。「左上、成果は上げているけれど、部下からのアンケート結果が低いのがストロング型です。右下がその逆の迎合型、部下からのアンケート結果は高いものの、成果はいまひとつのマネジャーです。どちらも低いのが左下の空回り型、どちらも高いのが右上の優れたマネジャー(優秀型)です。優秀型マネジャーの職場では、若手(35歳以下)の退職率が他より低く、業績も中長期的に安定していることを確認しました」

優秀型は部下が辞めにくい持続的な成果も上げられる

右上の優れたマネジャーを増やすことの効果を踏まえた上で、優れたマネジャーの行動が他のマネジャーたちと比べて何が違うのかを明らかにするために、日々のマネジメント行動に関する55の質問を練り上げ、2019年6月から調査を実施した。対象はSE部門の課長、部長(幹部社員と総称)約400名と一般社員約1800名だ。

調査分析からは多くのファクトが得られた。例えば、優秀型はストロング型と比べて、自らの行動を客観的に振り返ったり、新たな技術を学び続けたりといった「変化への対応」が強いこと、加えて、部下が自律的に動けるような仕掛けづくりに優れていることが分かった。片や迎合型と比べてみると、重要な商談やトラブル時に、自分自身が矢面に立つ、前例のない課題に直面したとき、自分なりの判断軸に基づき意思決定をするという点に顕著な違いが見られ、成果へのこだわり・コミットメントの違いが、迎合型と優秀型を分けていることが見受けられた。

こうした研究フェーズを経て、プロジェクトは実践に足を踏み入れている。「優れたマネジメント手法を学ぶワークショップ形式の研修を準備しています。マネジャーは自分がどこに位置しているのか、優れたマネジャーになるためにどういうポイントが大事なのか、についてヒントを得られます。今後は、『部下が多くて困っている』といった個別の悩みに応じた解決策を提供できるプル型のマネジメントサポートシステムの構築も視野に入れています」

現実の職場から抽出した理想のマネジメントスタイルを全社に広めていく。今後の成果に注目したい。

【text:荻野進介】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.58 特集1「マネジャーの役割再考『あれもこれも』からの脱却」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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