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企業事例

ワーク・エンゲージメントを高める人事制度 みずほフィナンシャルグループ

「やりたい仕事」「なりたい自分」を支援する場を作る

  • 公開日:2020/04/13
  • 更新日:2024/03/18
「やりたい仕事」「なりたい自分」を支援する場を作る

金融業界の構造的変化が急速に進むなか、みずほフィナンシャルグループは5カ年計画に基づき人事戦略を大きく変えた。社員のやりがい・モチベーションの向上と会社の発展の好循環を形成することを「エンゲージメント」と位置付け、人事施策の見直しを進めている。株式会社みずほフィナンシャルグループ グローバル人事業務部 企画チーム次長 日置健太氏、企画チーム参事役 久保田祥一氏にお話を伺った。

外部環境と社員の意識の変化を背景に人事戦略を見直す
熱意と専門性をキーワードに自主・自律・挑戦を促す
社員同士が学び合うプラットフォームづくりへ

外部環境と社員の意識の変化を背景に人事戦略を見直す

みずほフィナンシャルグループが人事戦略を見直した背景には、大きく2つの要因がある。1つは金融業界を巡る外部環境の変化。技術革新により預金や貸出、決済などの参入障壁が崩れ、「オープン&コネクト」を軸に、他業態と連携した次世代金融へと転換していくことが強く求められている。

もう1つは、働く側の意識の変化だ。グローバル人事業務部企画チーム次長の日置健太氏が説明する。
「〈みずほ〉では、これまで社内での成功を重視するモデルで人材育成をしてきました。しかし今、そのような人材育成モデルが時代にそぐわなくなってきています。『就社』から『就職』へといわれるように、自分自身の成長や仕事のやりがいを重視する考え方が強くなってきていて、従来型の人材育成では、入社して3~5年で成長を実感したいという若い世代の要求に応えられません。少子高齢化に伴う人生100年時代のキャリアデザインという意味でも、合わなくなってきています」

熱意と専門性をキーワードに自主・自律・挑戦を促す

そうしたなか、新人事戦略で打ち出しているのが「熱意&専門性」というキーワードだ。社内の閉じた競争原理に基づく人事戦略を改め、会社は「やりたい仕事」「なりたい自分」を実現する場へ。社員の価値観・熱意に根差しながら、会社は社員が自主的かつ自律的に挑戦し、社内外で通用する専門性を高めていくための支援をする。そうすることで、社員と会社、双方の成長を促す好循環が形成される状態を目指している。

2019年11月に発表した新人事戦略は、早くも反響を呼んでいる。例えば部署が求人を立て、グループ内の社員がそれに応募する「ジョブ公募」。その2019年度応募者数は820人と、前年度対比で1.5倍以上に増えた。背景には、国内の支店でこれまで事務を担ってきた人材が多く手を挙げて、新しい仕事に挑戦していることなどがある。

「最近では取引先から出向の要請があった社外ポストも、公募の対象としています。出向先はスタートアップ企業やメーカー、コンサルティング会社など。なかでもスタートアップ企業から、管理、財務の分かる人材を派遣してほしいという要請は増えています」と日置氏は語る。加えて、プロジェクトに応じた臨時の公募も実施しており、過去に実施したLINEグループとのジョイントベンチャーや「J-Coin Pay」にかかる公募では、20代から50代まで、約250人もの社員が手を挙げたという。

応募して、そのときは異動が実現しなかった場合のアフターフォローも重要だ。「他に挑戦できる機会を見つけ、手を挙げた人に優先的に声をかけていくなど、決してそのままにはしない」と日置氏。社員一人ひとりの挑戦意欲を大切にする姿勢を徹底している。

また、従来からある「出向」の仕組みを活用し、〈みずほ〉と社外の会社を兼業できる制度も新設した。社員自らが兼業先を持ち込み、提案できる点がポイントだ。〈みずほ〉の外で週何日か勤務することで、事業も個人も成長していく糧とするのがねらい。申請中の案件には、20代の若手がベンチャー企業に週2日出向し、IPO準備や海外のジョイントベンチャー立ち上げなどに従事するケースや、セカンドキャリアも展望し、シニアが人事コンサルタント会社に出向するといったケースもある。

さらに、土日などのプライベートな時間を使い、自分で業を営む形での副業も認めている。コンサルタントや講師、士業などすでに100件を超える申請があり、7割が承認済み、3割が審査中のステータスだ。年齢層は30代から50代が中心。また、最長2年間休職して「学び」に専念する「自分磨き休職」も認めており、実際に、この制度を活用し、広報担当者が米国の大学でコミュニケーションデザインを学ぶなどといったケースが生まれている。

社員同士が学び合うプラットフォームづくりへ

社員一人ひとりのキャリアデザインを実現するため、人事は「デジタルラーニングプラットフォーム」の実現にも取り組む。研修等は、指名型から、基本的に本人の意欲に基づく手挙げ方式へ。社員同士のお薦めによって研修を選択できたり、SNS機能を使って先輩に質問できたり、社員が自分で動画などをアップできたりする学び合いの仕組みも構築中。「異業種交流やアルムナイなど外部とのつながり機能ももたせ、先の兼業や副業などの仕組みも活用しながら、このプラットフォーム上で起業できるようになるのが理想」(日置氏)だ。

「人事が旗を振っても社員が付いてきてくれないのではないかという懸念もありましたが、実際には惚れ惚れするような申請案件が上がってきています。社員一人ひとりの内に秘められた興味関心や意欲、熱意を改めて実感しており、そういう思いを十二分に引き出してあげられるような人事制度でありたい」と、みずほ銀行グローバル人事業務部企画チーム参事役、久保田祥一氏は語る。

「変わらなければ新たな価値創造はできないというメッセージを伝えるツールとして、人事制度は大きな意味をもつ」と日置氏。今後は数カ月間かけて全国に約400ある支店を回り、新人事戦略の説明をしながら、さらなる浸透に取り組んでいく。

【text:曲沼美恵】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.57 特集1「ワーク・エンゲージメントを高める」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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