学びと実践の好循環を生み出す「INPUT ! 365」 電通 多様な仕掛けで全社員の「学び」を誘発

個々人が成長するためには、一定の経験を積む必要がある。だが、経験だけに頼ると、インプットの量や質に偏りも出てきてしまう。一人ひとりが時代の変化を敏感にキャッチし、能動的に知識をアップデートしながら実践で生かしていくには、どのような学びが必要なのだろうか。株式会社電通 執行役員 コーポレート・ブランディング・オフィサー 大内 智重子氏にお話を伺った。


「学びの格差」をどう埋めるかが出発点

電通は約2年前、労働環境改革のなかで経営トップのリーダーシップのもと、全社員の学びと成長を促進する施策の検討を始めた。

「まず、私たちは何に、どれだけの時間を費やしているのか、仕事内容を可視化しました。そのなかで非常にショックだったのが、インプットの時間、つまり学びの時間が全社おしなべて非常に少なく、一般的な企業と比べておよそ5分の1程度という点でした」と、大内智重子氏は振り返る。

背景として、電通ではオン・ザ・ジョブトレーニング(OJT)を重視してきた伝統がある。大内氏によると、「感覚的には9割以上がOJT」というほど、業務を通じた経験を重視する傾向にあった。ただし、時代が大きく変化していくなかで、OJTを通じた学びには限界も生じていたという。

「取引先の数でいいますと、約6000社あり、担当やキャリアの積み方によって、経験には当然、バラつきも出てきます。日々、最先端の技術に触れたり、海外から見た日本を実感できたりする人もいれば、同じ仕事の繰り返しになりがちな人もいるというように、経験の質や環境の違いによる学びの格差も生じていました」(大内氏)

全社的にデジタル化への取り組みや新規事業の創出、事業領域の拡大などが強く求められるようになってきており、めまぐるしい時代の変化に対応しながら会社が成長していくためには、社員一人ひとりが成長できる余白を作り、学びの機会を提供しながら、個々人が能動的に知識をアップデートしていくことが重要だ、と経営陣は考えた。

そして、2019年5月からスタートしたのが「INPUT!365」という全社的ムーブメントだ。

アクション・コンセプトを作り担当局も新設

「INPUT!365」は多様な電通人一人ひとりが自ら成長する意欲をもち続け、日々、能動的にアクションする機運と習慣を作るためのアクション・コンセプト。コストではなく、会社が今後も成長を続けていくための重要な「投資」と位置づけられている。具体的な施策の検討は、2018年春から始めた。2019年1月からは施策を担当する「キャリア・デザイン局」も新設している。キャリア・デザイン局のメンバーは、コーポレートの経験をもつ人財と、クライアントサービスを担当してきた人財の両方で構成。スタート時には社屋1階のスペースを活用し、お勧めの本を1000冊並べて希望する社員に進呈。また社外の旬なオピニオンについてのトークショーも同時開催し、社員の注目を集め「学びへの一歩」を後押しした。これのみならず、すべての「INPUT!365」の施策は社員向けでありながら、クライアントに提案するサービスレベルのクオリティで展開することを目指し、社員の意欲喚起に結びつけている。

鍵となる施策の1つが、非マネジメント層全員を対象とした3泊4日の合宿型プログラム「未来構想キャンプ」だ。1日目と2日目は社外識者などを招き、世の中の変化の理解や、電通をとりまく環境の実感に費やす。それを受け、3日目と4日目には、グループもしくは個人で、自身と電通の強みから目指す未来を描いたり、今後実現したいこと、学びたいことのプランを描いていく。

3月に実施したトライアルもかねた第1回目には、年齢も部署もバラバラの24人が参加した。先輩が後輩に刺激を与えることもあれば、その逆もあったという。参加者同士がお互いに刺激し合うことも、合宿形式で開くねらいの1つ。大内氏が「脳の筋トレ」というほど、合宿の内容は濃い。研修を通じて出てきた今後取り組みたいことや感じたこと、考えたことについては、1on1ミーティングで上長とも共有してもらう。

「見ていると、2日目くらいまではまだ斜に構えている人もいるようですが、3日目、4日目には非常に前向きに取り組み、学びたい意欲もわいてくるようです」と大内氏。過去3回のトライアルでは「参加して良かった」という意見がほとんどで、効果測定では5点満点中4.9以上という結果が出た。9月からの本格始動では1回当たりの参加人数を増やし、4年で全社員を一巡する構想だ。

「気づく」を「動く」へ変える多面的な施策も

「未来構想キャンプ」で受けた刺激を実際の「動き」にも結びつけようと、さまざまな施策も用意している。その1つが社屋全体を旬のネタで包む「INPUT!Wrapping」で、本社のあらゆる場所で関連するさまざまな情報を展示し、社会の変化に触れ、体感してもらうというもの。第1回はAIをテーマに行われた。「INPUT!Channel」は「INPUT!365」のベースとなる施策でいわゆるe-Learning。いつでもどこでも必要な学びを得られる環境づくりを目指している。さらには、隔週水曜日に、ビジネススキルやファイナンス、テクノロジー、トレンド、語学などをテーマに掲げたセミナー「INPUT!Hour」も開催。社内外をゆるくネットワークしながら学ぶ拠点「INPUT!Cafe」も準備中だ。

キャリアプラン形成も後押ししていく

「キャリアに関してはこれまでを振り返ることはあっても、未来志向で考えるキャリアビルディングという発想に乏しかった」と大内氏は指摘する。一連の施策には、自分らしいキャリアプランをいつでも見つめ直せるよう、プロのキャリアカウンセラーに相談できる「CareerINPUT!」も含まれている。気づきを得た後のキャリアを後押しする意味で、誰でも参加可能なセミナーやワークショップを順次開催していく。一方で、現場での経験は非常に重要なので、「今後は個々人がより多様な経験を積みながら能動的に成長していけるよう、最適人材配置との連携も必要」という。

「INPUT!365」は、決して経験を軽視しているわけではない。変化のスピードが速く、先が読めない現代では「新たな挑戦と経験を価値あるものにするためにこそ学びが必要」という考え方に基づいている。学んだことを実践で生かし、生かすことによってさらに経験が豊富になり、新たな気づきへとつながっていく好循環をいかにして作り出せるか、が鍵。今後、学びを実践に生かしている人たちの仕事の事例共有なども進めていきたい考えだ。

【text:曲沼美恵】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.55 特集1「職場の学びはどう変わるか」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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