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企業事例

活躍モデル設計における適性検査データの活用 伊藤忠商事

機械学習を用いた 活躍予測モデルの設計を目指して

  • 公開日:2019/08/26
  • 更新日:2024/03/18
機械学習を用いた活躍予測モデルの設計を目指して

人事データを分析して活用する動きが、広がっている。その際、何が課題となり、どのような点に注意して進めていけばいいのだろうか。機械学習を用いた活躍予測モデルの設計について、伊藤忠商事株式会社 人事・総務部長代行 澤瀉久修氏、人事・総務部 次世代HRタスクフォース 兼 人材開発室 能登隆太氏にお話を伺った。

「次世代HRタスクフォース」の発足
入社9年目から15年目までを対象に
ありのままに受け止めつつデータを信じすぎない

「次世代HRタスクフォース」の発足

伊藤忠商事人事・総務部に「次世代HRタスクフォース」が発足したのは、2018年7月のことだ。「中期経営計画において『商いの次世代化』を謳うなか、商材ごとに分けられたカンパニーを超えた人材の流動化も求められるようになってきました。そんな折、採用や配属・育成の支援に関しても、AIやHR Techを活用して、より戦略的にできないかと考えました」と人事・総務部長代行の澤瀉久修(おもだかひさなが)氏は、タスクフォース発足の背景を説明する。

専任で担当することになったのが、能登隆太氏だ。他に兼務者が2人いて、うち1人はITに詳しい人材を選んだ。新しいテクノロジーの導入やデータベースの構築において、スピーディーに物事を動かしていく上では、ITのセキュリティ面や基盤に詳しい人材は不可欠だと考えた。

入社9年目から15年目までを対象に

タスクフォースでは、活躍人材に共通する特徴を見つけ出すため、採用時の適性検査データを活用した機械学習による人材の活躍予測モデルの設計に取り組んでいる。どのような社内データを活用すべきかに関しては、慎重に議論を重ねて絞り込んでいったという。

分析対象は、活躍を予測したいターゲットである入社9年目から15年目までの社員だ。伊藤忠商事では、8年目までを「教育期間」と位置付けている。15年目までとしたのは、「それ以降だと役職者も増え、評価基準が変わってきてしまうから」(能登氏)。収集できたのは700人弱の人事データで、うち高評価者と定義した「活躍人材」に相当したのは200 人弱だった。

ありのままに受け止めつつデータを信じすぎない

半年の取り組みで、一定の成果は見えてきた。しかし、採用や配属は会社としての重要な意思決定である。真の活用を実現するためには、予測に磨きをかけ続ける必要がある。当初は、活躍予測モデルを即、採用や配属に生かすことも考えていたが、データの蓄積や活用のあり方の検討に継続的に取り組むこととした。その一方で、新入社員の立ち上げ支援の1つとして、新入社員と配属先の上司や指導社員の相互理解を深めるために適性検査を用いることに着手した。2019年4月入社の新入社員を対象に、入社前に受けた適性検査の結果を本人と上司・指導社員に配布し、一人ひとりに対してより適切なコミュニケーションを考えるきっかけづくりを行った。

今回の取り組みのなかで、データ活用にあたり意識していたことがあったという。データをいかに正確に解析できたとしても、現場の理解が得られるとは限らない。偏見の助長や統計的差別につながってしまう恐れもある。「われわれ人事としては、まずは分析結果をありのまま受け止め、自身や組織にどんなバイアスがあったのか意識すること。加えて、予測精度など信頼に足る結果かどうかにも留意して、データを信じすぎないこと。この2つの点には、特に注意しています。データはあくまで意思決定をする上で、経験や勘を補足する参考情報として扱うべきだと思っています」と能登氏は語る。

仮に100人採用したとして、カンパニーに合ったモデルの人材のみを採用・配属できるとは限らない。あてはまる人材がいたとしても、会社の育成方針として、違う部署に配属しなければならないケースもある。モデルを実用化するには、さらなる慎重な検討が必要だという。「ツールがあるとつい、それを使って何ができるかを優先して考えがち。ツールありきではなく、まずは着手すべき人事課題が何かを探ることからスタートし、どんなデータをどう使えばそれを解決できるのか、より質の高い意思決定ができるのかを考えながらデータを生かしていくことが大事です」と両氏は語る。今後、活躍予測モデルを、戦略的な採用・配属・育成に生かしていきたい考えだ。

【text:曲沼 美恵】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.54 特集2「企業における適性検査活用の新潮流~測定から活用へ~」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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