対話を組織の活性化や強みに変えていく freee ビジネスの原点はコミュニケーション 「1on1」はそのすべて

より高度な変革やスピード感を求め、「1on1」ミーティングを導入する企業は多い。しかし、課題も指摘されている。どのように運用すれば、対話を組織の活性化や強みに変えていけるのだろうか。先駆的なfreee株式会社の取り組みについて、同社CMSO(Chief Member Success Officer) 執行役員 野澤 俊通氏に伺った。


現場の人たちこそが価値提供の重要な源泉

数あるベンチャー企業のなかでも、freeeはかなりフラットな風土をもつ組織として知られている。それを象徴するのが組織長に対する「ジャーマネ」という呼び方だ。そこには「管理する者」というニュアンスはないという。

「経営陣を含めた話し合いで、階層はあっても決してそれが『偉い・偉くない』につながらないようにしようと決めました。当社の場合、組織図は横向きに階層を表現しており、上下が必要なときには直接お客様に接しているメンバーが一番上で、トップが一番下。チームを束ねるジャーマネはあくまでメンバーを支えるために存在していますし、メンバーが最も輝ける状況をお膳立てするのがジャーマネの役割です」と同社執行役員でCMSO(Chief Member Success Officer)の野澤俊通氏は説明する。背景には、創業者のこんな想いもある。

「代表の佐々木大輔にはもともと、ヒエラルキーで動く組織への強い反発がありました。グレードが細かく定められ、それによってできる仕事の中身まで規定されているような、かっちりした組織ではなく、フラットな組織をつくりたかった。世の中の旬な情報を仕入れ、マーケットに向き合っているのは現場の人たちです。現場の人たちこそが価値提供の重要な源泉であり、その人たちが輝ける環境があれば事業も自ずと発展していく。だからこそ、現場の人たちに自信をつけさせたり、輝ける環境をつくったりすることがジャーマネの重要な役割なのです」

週1回の「1on1」は ジャーマネの重要な仕事

ジャーマネは週に1回、チームメンバーと1対1で対話することが原則として決められている。1カ月から四半期に1回のペースで、階層を超えた対話をしているケースもある。時間は1人あたり15分から30分が目安で、個々のメンバーがいきいき働ける状態(メンバーサクセス)を主眼に、背中を押したり、業務上の悩みや困りごとについて相談に乗ったり、気持ちよく前向きに働けるようアドバイスしたりしている。

freeeの役員には創業者で代表取締役CEOの佐々木氏をはじめ、Googleに勤務していた経歴の持ち主が多い。野澤氏も前職はGoogleで新規セールスの日本代表を務めていた。組織づくりに関してはGoogleからもち込んだ文化とそうでないものの両面があるなか、この1on1ミーティングは「もち込んだもの」の1つだという。

「社員数が70人を超えたくらいから、単にフラットなだけでは全体に声が届かない状況も出てきました。そのときに、個々の役員が管掌するエリアを決めるなど組織だった仕組みをつくりました。スピード感をもって事業を展開しようとすれば、いわゆるトップダウン的な意思決定も必要ですが、それがトップダウンにならないポイントはコミュニケーション。階層があってもそれに縛られない組織は、日頃から十分なコミュニケーションがとれています」

トップが方針を発表すれば、時にはそれに対する反発も含めた「カオス」が起きる。新たな基盤はこのカオスの揺らぎのなかからしか生まれてこないが、カオスを放置すれば、組織は崩壊してしまう。そうならないためには十分な対話が必要であり、創業メンバーを含む経営陣は、ごく自然と1on1ミーティングをするようになっていった。

メンバーサクセスと成果
二兎を追うためにも対話が必要

1on1に関して、「いつ、何を話したらいいのか分からない」という管理職の声も世間一般には少なくない。freeeでも組織の急拡大に伴ってジャーマネの数が急増し、育成が追いつかなくなった段階で、同じような不安の声が相次いだ時期があった。野澤氏によれば、そのようなプロセスのなかから改めて1on1ミーティングの意味を問い直し、定義づけた結果、現在の形になった。個々のメンバーがいきいき働ける状態を下支えする「メンバーサクセス」がジャーマネの重要な役割であるという考え方も、同時に明確になっていったという。

「一方でジャーマネにはもう1つ、与えられた責任領域において最大の成果を創出するという重要な役割があります。メンバーサクセスは重要ですが、そればかりで結果を出せないのもまずい。2つのバランスをとりながらやっていかなくてはならないところが、1on1ミーティングの難しさだと思います」なかには、週に1度の対話を「負担」と感じたり、メンバーの背中を押してあげることを「怖い」と感じたりするジャーマネもいる。そんなジャーマネに対して、野澤氏はこんなことを伝えている。

「当社では『マジ価値』という言葉を使いますが、重要なのはユーザーにとって本質的に価値あるものを提供すること。コード1つ書くのにもいちいちジャーマネに確認しないといけない状況ではいいものはつくれない。いいプロダクトをつくるには、現場が自由にトライできる環境と、自分の判断で決められる安心感が必要。そのためにも常日頃から対話をしておくことが大事です」

「1on1」は相互作用 伝達も目的の1つ

とはいえ、毎回、深刻な話をする必要はない。休日に何をして、誰と会ったかなどの話を聞くだけでも、メンバーにとってはモチベーションアップにつながる。

「型にはまらず自由に対話の時間を楽しめばいい。人が変わればやり方も違いますし、課題が見えないなかで対話をするうちに新たな課題が出てくるのが面白い。メンバーから学ぶことも多いでしょうし、メンバーもジャーマネを育てるくらいの気持ちになってくれたらすごい組織が生まれる気がします」

ジャーマネ側がメンバーに何かしてほしい場合には、「なぜそうしてほしいか」の理由と背景までを含めて伝えることが重要だ。

「メンバーが最も不満に思うのは、それまで積み上げてきたものを方針転換で覆されること。そのときに、そう決めた背景まで含めて説明を受けて理解していれば『よし、もう1回やってみよう』という気持ちになるかもしれない。1on1はメンバーの話を聞くためだけではなく、経営陣やジャーマネの考えを伝える機会でもあります」

1on1ミーティングで意思疎通上のトラブルが発生することもあるだろう。freeeには「よろず相談」「カルチャー」「ダイバーシティ」などの分野ごとに窓口を設け、それを受け止める機会も用意されている。

「会社で起こる問題のほとんどはコミュニケーションの問題です」と野澤氏は言う。一方で、コミュニケーションがなければ、ビジネスは成立しない。「コミュニケーションはビジネスの原点であり、すべてです」という考え方が、freeeの1on1ミーティングを機能させている。

【text:曲沼美恵】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.52 特集2「対話する組織をつくる1on1ミーティングの戦略的活用に向けて」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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