企業事例
若手社員を惹きつけるHRM サントリーホールディングス
「グローバルやってみなはれ」若手が活躍できる組織へ
- 公開日:2018/12/21
- 更新日:2024/03/15

大企業からベンチャー企業へと人材が流れていくなか、若手社員を惹きつけ続けているサントリー。そんなサントリーが2030年を見据え、HR分野に関するビジョン策定に取り組んでいる。「就社」という概念が消え、会社への帰属意識が薄れていく時代、何が若手を惹きつける重要な要素となるのだろうか。サントリーホールディングス株式会社 人事部 課長代理 増田 俊樹氏、グローバル人事部 課長代理 小倉 潤氏に同社のビジョンについて伺った。
2030年を見据えたHR分野におけるビジョンづくり
近年、M&Aを通じて経営のグローバル化を推し進めてきたサントリーでは、グループ会社を共通のビジョンでつなぎ、レバレッジをきかせながら全体としてのシナジーを生み出すという難しい課題に挑戦している。そうしたなか、2030年を見据えたHR分野におけるビジョンづくりも始動。ゼロベースの議論に招集されたのは、30代後半を中心とした中堅層の6人。そのなかの1人、ヒューマンリソース本部人事部課長代理の増田俊樹氏が説明する。
「2030年には、国籍・世代共に入り交じった組織がますます増え、働き方や就業観が多様化します。それと同時に、専門領域を中心に人材の獲得競争もさらに激しくなり、雇用の流動性がより高まるでしょう」
より成長できる機会と場所を求めて個人が流動化する時代には、就社意識や会社への帰属意識は薄れていく。一方で、競争力の源泉となる守りたい価値観もある。プロジェクトメンバーの1人で、グローバル人事部課長代理の小倉潤氏が語る。
「例えば、ビール事業で乾坤一擲の販促を展開する際、食品事業やスタッフ部門などの社員が、担当業務の垣根を越えて店頭に立ち、全社一丸となって取り組むことがあります。こういう縦割りではないサントリーとしての一体感は大事にしたい」
予想される変化に対応しつつ、会社としての強みを維持する。2つを念頭に置きながら、何を組織の求心力に据え、グループとしての一体感を保っていくべきか。議論の末に浮かび上がってきたキーワードが「グローバルやってみなはれ集団」だった。
個が有機的につながる中心に「やってみなはれ」を置く
多様化が進むなかでも、グループに集う個性溢れる強い個人が有機的につながり、お互いに仲間として響き合うと同時に、世の中(社外)とも積極的につながり、新たな知見を取り込むことで、イノベーションを生み出し続ける組織でありたい。その核となるのがサントリーの創業精神「やってみなはれ」である。
「やってみなはれ」を加速させる仕掛けとして、グループ各社から事例を募り競わせる「やってみなはれ大賞」も実施中。最終審査に残ったファイナリストを日本に集め、トップを含めた役員の前でプレゼンし、グランプリを役員による投票で決定する。優勝チームは、創業精神を体感できる「プライスレスツアー」に招待される。「非常に好評で、海外グループ企業からの応募も多い」(小倉氏)という。
サントリーにはグループ共通の人材に対する思いや考え方を示した「Suntory People Way」がある。その冒頭に「FAMILY」を掲げ、サントリーに集う人は家族と位置づけている。2030年を見据えたときに、そのニュアンスも従来の「家族」とはやや違ってくる。
「サントリーに集う人々はかけがえのない存在で、長期的な視野で成長機会を提供していくという考えは将来も変わりません。ただし、年齢・経験年数にとらわれず、一人ひとりに成長の機会をより公平に与えることで、弟妹が兄姉を超えてもいい。そうした、愛のなかにも厳しさがある家族、才覚ある子が群生する家族を目指していきます」(増田氏)
今後は、昇降格もこれまで以上に柔軟に運用していく方針だ。また、世の中とつながりを強化するための検討も進めている。
「社外との接点は、個人の成長にもつながるため、ベンチャー企業や異業種との人事交流も積極的に推進していきます」(小倉氏)
同時に、多様な人材が働きやすい環境整備に向け、すでにあるテレワークやフレックス制度に加え、「遠隔地勤務制度」の導入も検討している。
自らのキャリアを自律的に考え行動する機会を増やす
プロジェクトは、「タレントマネジメント」や「働き方」など5つのチームに分かれ、ビジョンをより具体的な施策へと落とし込む検討を進めてきた。このチームメンバーは、手挙げ方式でアサインしており、職位や年次に関係なく「やってみなはれ」精神を発揮し、意欲高く取り組んでもらいたい、というねらいからだ。
「サントリーでは、ジョブローテーションを通じてのキャリア形成が中心となりますが、異動を受動的に捉えるのではなく、能動的に捉えて考動してもらいたい。希望する仕事につけないと感じている若手がいる場合、そのくすぶりをなくす意味でも、『やってみなはれ』精神を発揮して、希望するポジションを自ら掴みにいくことのできる機会を増やしていきたいと考えています。一人ひとりが自らのキャリアについてしっかりと考え、行動する機会を提供していくこと、そして年齢・経験年数にとらわれずに一人ひとりに成長の機会をより公平に与えることが、実力で勝負したいと考えている学生の採用や、グローバルに活躍できる日本人経営人材の輩出につながると考えています」と増田氏は言う。
増田氏と共にビジョンづくりを推進した小倉氏はプロジェクトを振り返ってこんな感想を語った。「ビジョンを策定するにあたり、われわれの世代を集めて議論させたのもサントリーらしさの1つだと思います。ビジョンを確定させるまでに、HR部門管掌の専務とも議論を重ねましたが、プロジェクトメンバーの意見にしっかりと向き合ってもらえる代わりに、真剣勝負を求められる。若手を惹きつけるという意味においても、そういった日々のオープンなコミュニケーションができていることが大切なのではないでしょうか」
【text:曲沼美恵】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.52特集1「リテンションマネジメントを超えて ―若手・中堅の離職が意味すること―」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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