私生活を充実させながら楽しく働ける職場づくり 丸井グループ 管理職が率先して残業をなくしたら
一人ひとりが見えるように

2008年から残業時間を大幅に削減するなど、働き方改革に取り組んできた丸井グループ。背景には、売上至上主義から利益・生産性重視への転換があった。トップダウンオンリーではなく、一般社員と管理職双方から共創の精神で取り組んだ改革は、長い年月をかけて職場の意識を確実に変えてきた。株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課長 石岡治郎氏、多様性推進課長 山崎美樹子氏に、その具体的な取り組みと経緯を伺った。


売上主義から利益重視へ方針転換頑張るよりも「生産性」を意識

長時間残業が常態化していた丸井グループが働き方を見直そうと改革に動き始めたのは、2008年頃のことだった。「背景には外部環境の変化に伴う業績悪化がありました」と、人事部人材開発課長の石岡治郎氏は説明する。

「当時は売上を伸ばすために休日を返上し、遅くまで働くことがよいという風潮が少なからずありました。しかし、考えてみたら、それって本当に業績回復につながるんだろうか、むしろ、これからは売上ではなく、利益を重視して生産性を向上させていかなければならないのではないかという問題意識から、改革はスタートしました」

改革以前から、社長の青井浩氏も年配の男性社員ばかりが集まって議論する会議に、限界を感じていたという。売上重視から利益重視への転換と私生活を充実させながら楽しく働ける職場づくり。それらを具体化するために発足したのが、「業務改善プロジェクト」と「働くプロジェクト(通称ハタプロ)」だった。

業務内容をすべて洗い出し 何をどう効率化するか議論した

「業務改善プロジェクトはいわゆるボトムアップの活動でした。事業所ごとにまずは日々の業務を棚卸しして、どの業務にどれだけの時間をかけているのかを細かく見える化しました。その上で、業務内容とかけた時間、人数などが適切かどうかを検証し、どうすれば効率化できるのか、を各現場で話し合いました」(石岡氏)

一方、さらに改革を進めるために管理職を中心メンバーとする「ハタプロ」も立ち上げた。「そこで最も強く打ち出したのは、管理職が率先して早く帰ろうというメッセージでした。管理職が遅くまで残っていると、どうしても部下は帰りにくくなってしまう。管理職が率先して早く帰ることで、職場に長くいることが評価されるという考え方を捨てていこうとしました」(石岡氏)

2008年3月期、グループ1人当たりの年間平均残業時間は130時間に上っていた。残業代も総額で年間33.6億円。強引に改革を進めれば、「単に残業代を減らしたいだけだろう」という反発が連鎖的に起こることも考えられた。そうならなかった要因の1つは、「一般社員と管理職が一緒にやり方を考えて進めていった点にある」と石岡氏は説明する。

根本には、丸井グループが掲げる共創経営という考え方があった。共創とは、すべての人の「しあわせ」を社員や顧客を含めたすべてのステークホルダーと共に創り上げていく経営スタイルだ。すべての社員が当事者意識で業務改善に取り組んだ結果、2017年3月期の時点で、1人当たりの年間平均残業時間は44時間に、総残業代も8.2億円にまで減った。

10分刻みで最大50通りの就業パターン
就業開始・終了時間も自分で選ぶ

丸井グループでは現在、約6000人の社員が働いている。店舗に関しては、ショップ長の裁量で、10分刻みで最大50通りの就業パターンでシフト編成を行う。本社に関しても、基本は午前10時から午後7時までの勤務だが、事前の申請なく、個人の業務内容や都合に合わせ、就業開始・終了時間を自由に選べるという。

「店舗改装などがあると、営業担当者は夜遅くまで作業を手伝います。その場合、午後9時の終了時間に合わせて、その分、朝遅めに出勤するなどして売り場責任者が細かく調整しています」と人事部多様性推進課長の山崎美樹子氏。

山崎氏自身、つい最近までの約3カ月間、夜間のビジネススクールに通っていたため、その間は勤務時間をちょうど1時間ずらして、午前9時に出社、午後6時に退社していた。丸井グループではこのように、トータルの勤務時間が変わらず、業務上の支障がなければ、さまざまな勤務パターンを選択することもできる。理由は何であれ、早く帰宅することをとがめる空気はまったくない。

石岡氏によれば、たとえ入社間もない社員でも、「今日は用事があるので早く帰ります」と気軽に言える環境だそう。言われた管理職も「むしろ、嬉しいくらいの感覚です」と語る。

「考えてみると、以前は休日も仕事のことが頭から離れず、悶々とすることがありました。いまはいい意味で、割り切ることができている。一人ひとりが仕事以外の時間を大切にするようになると、おのずと効率的な業務の進め方を考えるようにもなります。休まなければならない用事がある場合は、それに合わせて今日やるべきことを考えて行動したり、チームで補い合ったりしています」(石岡氏)

重要なのは残業時間が減ったことではなく、「一人ひとりが人生を楽しめるようになったことだ」と石岡氏は語る。人生を楽しむ社員が増えた副次的効果として、一人ひとりの個性も浮かび上がってきた。

「結局、メンバー一人ひとりがどんな価値観をもち、どんな風に仕事をしているのかを管理職が把握していないと、理想の風土は作れないのではないでしょうか」と石岡氏は指摘する。

なかにはもちろん、高齢の両親を介護しなくてはならなかったり、通院などさまざまな事情を抱えていたりする社員もいるだろう。

「さまざまな事情を抱えた社員が、躊躇せずそれを打ち明けられる環境づくりが大事だと思っています」と山崎氏。すべての社員がより働きやすくなるよう、希望する職場には、テレワークの導入も検討中だ。

【text:曲沼美恵】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.51特集1「ミドルマネジャーのワーク・ライフ・エンリッチメント」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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