適材適所 セプテーニ・ホールディングス 自社独自の方程式で相性を数値化 育成確率を高める採用・配置を実現

インターネット広告事業を中心に手がけるセプテーニグループには人事部とは別に人的資産研究所という組織があり、自社にふさわしい人材の採用と入社後の適材適所の実現を目指している。どんな人事も頭を悩ませる課題の解決がなぜ可能なのか。株式会社セプテーニ・ホールディングス 人的資産研究所 所長 進藤 竜也氏、赤澤 祥貴氏にお話を伺った。


成長につながる資質と環境の方程式

「当社の施策の根本にあるのが、この方程式です」。人的資産研究所所長の進藤竜也氏が開口一番、見せてくれたのが下の図表だ。

「チーム」は上司や部下、同僚などの人間関係、「仕事」はワークスタイルや職制、職種などを表し、その2つが本人をとりまく職場「環境」を構成する。その「環境」と、生まれもった個性や志向性を表す「資質」との相互作用が人の成長につながる、という意味をもつ。興味深いのは、概念にとどまらず、数値化検証もなされていることだ。

資質の特定や相性のロジックは株式会社ヒューマンロジック研究所が提供するFFS(Five Factors & Stress)理論(5つの因子とストレスの強弱により、個別的特性を数値化)に基づく。方程式が成り立つかという実地検証にあたっては同社の協力を得ているという。肝心の成長をどうやって計測するのか。「20年ほど前から、半年に1回、当社が独自に運用する360度の人事評価を実施しています。特徴は1人につき平均約20人が評価することです。その値、つまり仲間からの評判が高い人ほど成長していると見なし、その数値を方程式の左辺のGに使っています」(進藤氏)

配属先候補の相性スコアを算出 ワークスタイルの違いも勘案

実際、どのようにして適材適所が実現しているのか。新人配属の場面を見てみよう。

社内にはFFSを中心に集めた社員データがあり、それをもとに、新人個々に対して、配属先候補(課単位)ごとに、チーム(個人および全体)との相性スコア(0から100)を算出し、その値が高い課に優先的に配属していく。仕事との相性はどう見るのか。「同じ営業でも、自分から顧客に積極的に提案し成果を出していくスタイルと、諸先輩から基本指導を受けてから顧客に寄り添いつつ成果を着実に上げていくスタイルの2種類があります。当社の研究では、新人は基本的に同じタイプの先輩の下についた方が伸びるという結果が出ていますので、まずは既存データをもとに新人のワークスタイルを類推します。そしてその上で、同じタイプの先輩をつけてください、という旨を伝え分析シートを新人の配属前に配属先の上長にお渡ししています」(進藤氏)

配属後もこの方程式は活用される。研究員の赤澤祥貴氏が話す。「育成期間におけるリテンションにも活用しています。一般にGの数値が低い人ほど離脱リスクが高いのですが、逆に高まることで飽きがきて離脱してしまう人もいます。そこで社員全員の離脱リスクを算出し、その値に近づいた時点で、異動先の候補を提示すると共に異動を促します。上司との相性が肝という人にはそれを重視した異動先を提示します」

諸データは半年に1度行われる組織編成会議に提出される。同じタイミングで上司による部下面談も行われ、異動希望を探る。本人や人事、部門長の意思も加味されて実際の異動が決まるわけだ。

きっかけは1冊の本だった 弱小球団の起死回生策に学ぶ

一連の取り組みのきっかけは『マネー・ボール』(早川書房)という1冊の本だった。資金力に乏しい米メジャーリーグの弱小球団がチーム編成と選手の獲得基準に関する独自の数値目標を決め、そのとおり実行することで豊富な資金力をもつ強豪を打ち破ったというノンフィクションである。

10年ほど前、これを読んだ同社代表の佐藤光紀氏が「うちでもこういうことができたら会社も発展しますよね」と、人事担当役員に話をした。「成長過程のベンチャー企業でしたので、人材を集めるのに苦労していました。ようやく入ってくれた人材も戦力になるかは未知数。そこで『マネー・ボール』を参考に、自社で活躍できる人材を自分たちの基準で見出せればと。そこからプロジェクトがスタートしました。方程式の運用が始まったのが2012年夏で、2016年に人的資産研究所ができました」(進藤氏)

進藤氏の言葉どおり、この方程式が最も活用されているのが実は採用場面なのだ。「AIを使い、応募者の入社3年後の成績、定着率、内定を出した場合の入社確率をそれぞれ3段階で予測できるようにしました。AIの発展は目覚ましく、人間による合否の判断を部分的に上回るようになっています。地方学生向けの採用では、AIによる評価比重を高めることで選考時間を従来の10分の1まで減らし、採用理由をデータに基づき明確にフィードバックすることで、従来の4倍の地方学生に入社を決めてもらうことができました」(赤澤氏)

現在計画しているのが人材育成への適用だ。一律研修ではなく、社員一人ひとりの個性に合わせ、時期や内容の異なる個別プログラムの提供にこの方程式が使えないか、模索しているという。

セプテーニの場合、適材適所の度合いを「仲間からの評価」に置いたわけだが、本人の認知を重視するやり方もあるだろう。AIの発達とビッグデータの普及により、こうした試みが今後、増える可能性がある。
【text:荻野進介】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.49 特集1「適材適所 偶発をデザインする」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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