心理的安全性を生み出す組織づくり カヤック 面白く働くために 権限を1 人に集中させない

ゲームやWEB制作などを手がける「カヤック」は1998年、面白法人カヤックという名の合資会社として設立された。2005年に株式会社化し、現在はユニークな人事制度をもつことでも知られている。「つくる人を増やす」を経営理念に掲げたカヤックにおける心理的安全性と、それを担保する仕組みについて、同社 企画部 ディレクター浜岡範光氏、管理本部 人事 三好晃一氏にお話を伺った。


なぜリーダーの意見に面白くないと言えるのか?

上司のアイディアに「それは面白くない」と意見するのは、勇気がいることだ。査定で不利になるかもしれないという不安が頭をよぎるからだが、「カヤックの場合、それはありません」と企画部の浜岡範光氏は話す。

「設立当初から面白法人を標榜しているように、何をするにもまずは自分が面白がることが1番。次に周囲からも面白い人だと言われること、さらには誰かの人生を面白くすることで世の中全体を面白くしていくという3段階で考えています。社内で何か反論をする場合もごくシンプルに、面白く働きたいからこれは納得できるけれど、これは納得できませんと主張できる。言う側も言われる側も、そこにリスクを感じることはありません」

そんな心理的安全性を担保しているのが、「役割はあっても役職はない」ことだという。事業ごとにリーダーはいるが、彼らは人事権をもっているわけではない。「極論をいえば、CEOの柳澤大輔も給与決定権を握ってはいません」(浜岡氏)。どういうことなのか──。

平均値とサイコロで月給が決まる

カヤックの月給の決め方は、かなりユニークだ。まずは同じ職種・職能の人間をグルーピング。自分が社長だったらどういう順番で高い給料を払うかのランキングをお互いに付けさせ、その平均値で決めている。

「これを誰か1人が決めていたら、その人は自分のことを分かっていないと言えるでしょうが、『みんなの平均点があなたの評価です』と言われたら、受け入れざるを得ないでしょう」と、浜岡氏は説明する。人事や給与に関して、誰か1人に権限を集中させないことがポイントだ。

月給には、サイコロ給が上乗せされる。「月末になると、総務が見ている前で順番にサイコロを振ります。どうしてもその日外出しなくてはならない場合、代振りを頼むこともできます。ランキングで決まった金額が30万円だったとして、3の目が出たら30万円の3%が上乗せされる仕組みです」(浜岡氏)

そこには「評価などしょせんは運、気にするな」という暗黙のメッセージも込められているのだが、それについて管理本部・人事の三好晃一氏は次のように補足する。「カヤックには不確実性や理不尽を享受する文化といいますか、許容するための仕組みがいくつかあり、サイコロ給もその1つです」

CEO 以下、全員の評価を全社員に開示

サイコロ給をもらうには、ある条件を満たさなくてはならないという。それが「スマイル」と「コブシ」だ。毎月、社員同士がランダムにマッチングされ、良い点(スマイル)と悪い点(コブシ)をお互いにコメントし合う。相手は機械的に選択されるため、仕事内容を含めてほとんど知らない場合もある。その際、参考になるのが、全社的に開示されている360度評価だ。

査定に影響する360度評価は半期に一度実施している。質問に答える形で本人が半期ごとの振り返りをし、それに対して同じ職種・職能の人間がコメントしていく。CEOも含めて全社員の評価やコメントを、全員が見られるようになっている。過去に遡って確認することもできるため、社員はお互いにこれまでの評価を見たり、成果物を確認したりしながら、相手の評価を付けていく。

「360度評価のコメントは、みんな気合いを入れて書いています。評価に対する本人のフィードバックも書き込めるようになっている。私も評価の時期は何を書き込まれるのかとドキドキしますが、むしろ、何も書かれないことの方がさみしい。たとえ厳しい評価でも、書いてくれたことに対しては、おおむねポジティブな反応が多いです」(浜岡氏)

自分の成長よりも仲間の成長にコミットすることを重要視しているカヤックでは、「評価を書かないこと」が一番バッシングされるそうだ。

弱みを認めた時点で乗り越えたことになる

半期ごとの査定では、失敗したことは何か、そこから学んだことは何か、を必ず本人に聞いている。「実は一番多く失敗をしているのはCEOの柳澤かもしれない」と浜岡氏。どんなにベテランの社員でも、間違いを指摘されたら、明るく素直に「ごめん」と謝る文化があるという。「弱みを無理に克服しようとしなくてもいい。認めた時点で乗り越えたことになると柳澤も言っています」(三好氏)

その言葉通り、カヤックではうまくいかなかったプロジェクトも、積極的にホームページで公開している。心理的安全性を担保する上で、CEO以下、役員が率先して失敗を認め、弱みをさらけ出していることの意味は大きい。

「良いものを作るためには当然、つらいことや大変なこともあります。アウトプットに対する評価はむしろ厳しいかもしれない。だからといって、人間性を否定されることはない。どんな人でも自分らしく働けるという意味で、心理的安全性は高いといえるかもしれません」(三好氏)

【text:曲沼美恵】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.48 特集1「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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