RMS Forum 2017 「働き方改革の舞台裏」 味の素株式会社 目指すは7時間労働で新たな価値を創造する会社
「味の素流働き方改革」が着実に浸透している理由

世界30カ国・地域に拠点を置き、食品やアミノ酸、医薬品など、さまざまな事業を展開し、130を超える地域で商品を販売している味の素株式会社。真のグローバル企業を目指して、ダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランスの向上に取り組む「味の素流働き方改革」について、グローバル人事部労政グループ長 兼 健康推進センター長 隈部淳二氏にご紹介いただきました。


女性が輝き続けられる会社にしたい

味の素が目指すのは、「日本で最も、女性も活躍する会社」です。なにより代表の西井が、その目標にこだわっています。西井は2013年から2年間、ブラジル社長を務めていました。そこで見たのは、現地の女性が生き生きと働く姿。仕事は定時までにしっかりとやり遂げて、子育てをしながらマネジャーとしての役割もまっとうする優秀な女性社員がいたと言います。「優秀な女性が働き続けられる環境をつくりたい」という西井の原体験は、グローバル展開のなかで得たものでした。

一方、国内に関しては、当社で活躍していた女性が配偶者の海外転居などの理由で退社してしまうこともあるのが実情でした。今は男女ともに台所に立つ時代ですが、味の素の商品を手に取る人の多くはいまだ女性が中心であり、当社で働く社員にとっても、消費者の目線が求められます。その様ななかで、優秀な女性社員が離れていくことは大きな損失です。海外の拠点で働く女性のように、働く環境が変われば伸び伸びと活躍し続けられるはず。女性が輝き続けるための環境づくりが、2009年の再雇用制度を皮切りにスタートしました。以降、「味の素らしさ」にこだわってダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランスを実現させる「働き方改革」に取り組んでいます。

成果と成長を求める人財の後押しをする

ダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランスを実現させることは、働き方改革を始めた当初から「経営目標の1つ」とされていましたが、各部門長に理解を求めるための話し合いでは、考え方については理解を得るも、取り組みはなかなか進展しませんでした。再雇用制度も育児短時間勤務制度も活用できる人が限られており、対象者以外は自分事として捉えられにくかったことが主な原因です。

そのため2013年からは、「Work@A」という名前で、 味の素流の働き方改革をスタート。「テレワーク(在宅勤務、サテライトオフィス勤務)」「スーパーフレックスタイム勤務制度」「裁量労働制」など社員全員に関係する制度を拡充しました。

ただ、導入当初は、「在宅勤務を導入したら業務管理がやりづらくなるのではないか」と、現場のマネジメントから、心配する声があったのも事実です。部下が自分の目の行き届かないところで働くことに不安を感じていた上司もいました。

そこで、「テレワーク」の導入当初は、上司への事前申請や終了後の業務報告を必須にするなど、あえて細かなルールを設けて慎重にスタートしました。ただ、新しい働き方を進めてみると、時間の有効利用やweb会議により社外からでも会議や打ち合わせに参加可能になることなど生産性を高める様々な勤務が可能になることを多くの社員が実感することになりました。

これらの経験を重ねることにより導入当初の心配や不安が和らいできたこともあり、申請や、作業報告などを通じた上司による管理も減らし、働き方を一人ひとりにより委ねるようにしていきました。

「仕事の見える化」も進む

やがて取り組みを進めるにつれ、「部下が子供の看病で1日休むよりも、リモートワークで1時間でも仕事を進めてもらった方が全体の仕事が進む」など、継続することで、現場でもさまざまなメリットが見えてきたようです。実際、社員一人ひとりが、もっとも集中できる環境で仕事へ打ち込めるようになり、生産性も上がっています。

また、上司と部下がお互い見えない場所で働くことが増えたからこそ、「仕事の見える化」も進みました。
例えば、打ち合わせや面談をするにしても、上司が隣にいる部下に声をかけて、「ちょっといい?今から打ち合わせしよう」というようなやり方は減りました。

今では、社員が自ら、PCのスケジューラーを用いてスケジュールと仕事内容を公開するようになり、そこにコミットする習慣も生まれています。

私たちが実現したいのは、より多様な人財が活躍できる環境を整えること。「Work@A」は、成果を出すことや自己成長に意欲的な社員を後押しする施策となりました。

目標は1日7時間労働で新たな価値を創造する会社を実現すること

2016年からは、味の素流働き方改革の第2期がスタートしました。目標は2020年度を目途に、1日の所定労働時間を7時間にして多様な人材が新たな価値を創造する会社を実現すること。

かつては当社でも、長時間労働が必要であるという企業風土がありました。時間生産性よりは長時間働くことで成果の最大化を追求していました。このような状況ですと育児や介護等により時間制約のある人材が活躍できなく、時間制約のある社員よりも長時間働ける社員が結果として評価される環境にどうしてもなってしまいます。そのままでは、グローバル基準で活躍できる企業にはなれません。

時間を忘れて仕事に没頭し、スキルを磨き成果を高めたいという社員にとっては、7時間労働に対して疑問を持つ場合もあるかもしれません。しかしながら、より働く時間への感度を高めて、効率的に仕事を早く終えることによるメリットもあります。その1 つは、社外との接点を持てること。例えば、早朝もしくは定時後(夕方)にビジネススクール等に行くことで、これまで接点のなかった世界に住む人と出会えます。余暇のなかから新商品のアイデアが生まれてくる可能性もあります。これらのこと全体を通じて個人の成長が促されイノベーションを起こすきっかけにもなり得ると考えています。

秘訣は、ルールによる管理から自主性へのシフト

紆余曲折がありながらも働き方改革をここまで進めてくることができたのは、やはり味の素の風土に合わせ、じっくりと粘り強く浸透させてきたからだと思います。1日7時間労働に向けての取り組みも、2018年度までには1,800時間、2020年度までには1,750時間へするという様に、一 歩一歩着実に進める計画です。

また、新しい仕組みを作る際には、社員を信じ自主性を重んじることも大事だと思います。「本当にできるのか?」という不安やリスクに目が向くと、つい細かいルールを作ってしまいがちです。しかし、それでは社員が実践したくなる「働き方改革」にはなりません。

私たちも、細かいルールは徐々に撤廃し、現場の自主性に任せられるようにしてきました。そして、繰り返しになりますが、大切なのは、成果を上げながら、成長していきたいと思っている社員が、働き方改革を通じて活躍できるようになること。その様な社員に対しては、リスク管理より、自主性を土台にすることが大切だと考えています。

また、「社会的に働き改革が求められている」や「トップの指示だから」という理由だけでは、働き方 改革はうまく進まないと思います。企業の環境・制度等を最大限活用しながらいかに成果にコミットし自分を成長させていくのか、社員一人ひとりが腹落ちして、働き方をデザインできるように、人事部門がストーリーを語ることも重要だと思います。そして、人事部門はもちろん、各組織のリーダーが率先して取り組んでいくべきです。

目指すは「働き方改革のトリクルダウン」

労働時間を短縮して生産性を向上させることは、経営・組織・個人の目標に加えられています。大切なのは働き方改革を実現させながら、成果を上げていくことだと考えています。2009年の取り組みから、2015年まで振り返ってみると、営業利益は605億から910億、総実労働時間は2,039時間から1,947時間に。市況の変化など働き方改革以外の影響もありますが、2017年第一四半期も、オンラインで進んでいます。

味の素の働き方改革を進めながら、将来的に実現したい社会的な意義は「働き方改革のトリクルダウン」。自社の働き方改革にとどめることなく、味の素グループ各社、業界の理解を得ながら食品業界の労働慣習も変えていきたいです。そして、それを社会全体へと波及させていければと考えています。

参考になる話ができるのであれば、取り組みの中身を共有させて頂きますし、社員一人ひとりが自社の働き方改革について「味の素ではこんな働き方ができるんです」と、誇りを持って語れるようにしていきたいです。

※本稿は、弊社主催の人事フォーラム RMS Forum 2017内セッション「働き方改革の舞台裏」配布資料より抜粋・一部修正したものです
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

■企業概要
味の素株式会社


1908年、「日本人の栄養状態を改善したい」と強く願っていた池田菊苗教授が、「うま味」を発見。味の素グループの創業者、鈴木三郎助氏が、世界初のうま味調味料「味の素(R)」を発売。さらに「風味調味料」「メニュー調味料」、スープ、即席麺、冷凍食品などへ展開。2008年より、ダイバーシティ&ワー ク・ライフ・バランス向上に向けた取り組みを本格的にスタート。「日本一女性も活躍するグローバル企業」を目指し、「味の素流働き方改革」を進めている。

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