心理的安全性を生み出す組織づくり ねぎしフードサービス 顧客本位と従業員重視が相互信頼の風土を醸成する

東京と横浜に38店舗を展開しているねぎしフードサービス。1600人を超える従業員数のうち、正社員は1割にも満たず、外国人アルバイトも多い。そんななか、いかにして職場の「心理的安全性」を高めているのか、執行役員で人財共育部長の石野直樹氏にお話を伺った。


ボトムアップ型への転換

東京都内と神奈川県横浜市に牛タン・とろろ・麦めしのチェーン店を38店舗展開している、ねぎしフードサービス(以下、ねぎし)。1970年の創業当初は茨城県、福島県、宮城県の3県にまたがる広範囲な地域に出店していた。

「東京で流行った業態を東北に持っていくと、必ず繁盛したそうです。しかし競合店が出たとたん売上が落ちてしまい、業態転換することの繰り返し。結果、20店舗で10業態。業態が違うと他店の失敗は他人事になってしまい、人も育たず、ひどい場合は従業員が全員、引きぬかれてしまうこともありました」

そのような反省から既存店を順次閉鎖し、1業態に絞り込む方針へ転換したのが1981年。1991年からは毎月、全社員が一堂に会する「改革改善全体会議」を開催するなど、全社的な情報共有にも取り組んできた。本格的にボトムアップ型へと変わってきたのは2005年、経営品質を高めるための取り組みを始めてからだという。

経営の目的の 1 番目に「働く仲間の幸せ」を掲げる

「経営幹部をはじめ全社員で学ぶ経営品質向上プロジェクト活動を通じ、100年企業にはどんな普遍的な価値があるのか、を皆で話し合いました。その際に出てきたのが顧客本位、従業員重視、独自能力、それと社会との調和という4つでした」

顧客本位で考えた場合、組織図は逆ピラミッド型となり、社長はその底辺に位置する存在となる。従業員重視の考え方から自ずと導き出されたのが、全従業員がイキイキと成長できる会社になる、ということだ。ねぎしでは、経営の目的の筆頭に「働く仲間の幸せ」を掲げている。仲間が成長するためにお互いに意見を出し合うことが、奨励されているのだ。

「人が育つために何が必要かといいますと、わが事で仕事に取り組んでいけることでしょう。一般的にPlan Do Check ActionをPDCAサイクルと呼びますが、ねぎしでは実践したことを評価するのではなく、対話を通じて確認するという意味でCheckをCommunicationに置き換えて考えています」

ねぎしが提供する5大商品はQuality(味)、Service(笑顔・元気)、Cleanliness(清潔)、Hospitality(親切)、Atmosphere(楽しさ)だ。これを高いレベルで提供するために必要なのが、アルバイトを含む従業員一人ひとりが、わが事として仕事に取り組める環境づくりだという。

「牛タンは焼きが命です。焼きのレベルを高めるために毎月講習会を開き、優秀な人を『焼士』として認定しています。接客に関しては、年2回、ロールプレイングコンテストを実施しています。1つは社員とアルバイトの大会ですが、もう1つは店長以上を集めて競わせる大会。店長以上の大会には私も参加しますが、社員とアルバイトの大会の入賞者に審査されるため、毎回、緊張します」

店長同士が店の清潔さを評価し合う「クレンリネスコンテスト」は、1996年から実施している。いわば店舗対抗のお掃除大会だが、ねぎしの場合、サポートオフィスやセントラルキッチンも参加する点がユニークだ。このような取り組みはいずれも店長が集まる店長・SOプロジェクトで企画され、自主的に運営されているという。

「顧客のため」だから本音で話し合える

「店は年中無休で運営していますから、コンテストの直前になってきれいにしようと思っても時間がない。日々、アルバイトさんがわが事として掃除をしてくれて初めて店をきれいにできますし、高いレベルの商品を提供できる」と石野氏は話す。

社員であれ、アルバイトであれ、心から顧客の役に立ちたいと思ったときに、良いサービスができるという。そのため、ねぎしではテーブルに常設のアンケートハガキを置き、月間2000通以上を回収。お客様から感謝されたスタッフを毎月、「親切賞」として表彰し、それを冊子にまとめて全員で共有している。

「親切賞は毎月450名以上に出しています。お客様からいただいたコメントをそのまま表彰状にしますので、何度もらっても、1枚ごとに内容が違う。ねぎしで使える1000円分のお食事券を添えていますので、家族にごちそうしてあげたり、勉強のために他の店舗へ食べに行ったりしているスタッフもいるようです。私も店長時代に何枚かいただいたことがありますが、表彰状をもらうとうれしいもので、お客様のためにまた頑張ろうという気持ちになります」

立場を超えて本音で意見を交わし合うことができるのも、「会社のため」ではなく「顧客のため」に働いているという実感があればこそ。これはFパートナーと呼ぶ外国人アルバイトでも同じだといい、ねぎしでは外国人アルバイトの待遇改善についても、当人たちを交えて本音で話し合う文化がある。

「どんな場合も重要視しているのは、コミュニケーションです。これがないまま『はい時間、お疲れ』で終わってしまうと、モノとして扱われているような気がしてしまう。社員でもアルバイトでも、人として認められているという安心感があることが風通しの良さやモチベーションの高さにつながっているのではないでしょうか」

【text:曲沼美恵】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.48 特集1「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」より抜粋・一部修正したものである。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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