RMS Forum 2017 「働き方改革の舞台裏」 ヤフー株式会社 すべては“才能と情熱を解き放つ”ため 起こるべくして起こったヤフーの「働き方改革」

「週休3日制」や「新幹線通勤」「全館フリーアドレス制」などの制度を次々と打ち出し、働き方改革の旗手として注目されているヤフー株式会社。しかし同社の上級執行役員 コーポレートグループ長、本間浩輔氏は意外にも「働き方改革を企図しているわけではない」と言います。その言葉の裏にはどのような想いが込められているのか語っていただきました。


会社が勝つために働きやすい環境をつくる

率直に言って、私はこれまで「働き方改革」をしようと考えたことはありません。ただひたすら、会社として社員が幸せになることと収益を上げていくことを考えてきました。

あえて社員の「働き方の変化」の起点を挙げるとしたら、それは代表の宮坂を中心とする現執行体制になった2012年です。極端な言い方をすれば、それまではシリコンバレーのビジネスモデルを日本で展開する「タイムマシン経営」や、天才的なトップの頭のなかにある考えを、社員が一生懸命に具現化していくというスタイルでした。そのやり方で設立以来、増収増益を続けてきた一方で、スマートモバイルヘのシフトが急速に進み、PCに依存したサービスだけでは時代に取り残されるという危機感が社内に広がっていました。

モバイルシフトが進むなかで、再び「攻め」の姿勢を取り戻すべく「爆速経営」がスタート。そのときに作られた「課題解決」「爆速」「フォーカス」「ワイルド」というヤフーバリューが、人事制度に落とし込まれていきました。意思決定のスピードを速め、失敗を恐れず次々と挑戦を繰り広げていく組織を目指してきたのです。

当社のコンペティターは、GoogleやFacebook、Amazonなど世界の時価総額上位の企業ばかり。ライバル企業に勝ち、会社を成長させていくために、従業員が働きやすい環境をつくるのは当たり前のことです。時には、条件面でどうしても勝てず、優秀な人材が他社に行ってしまうこともあります。しかし、相手が強いからといって諦めたら勝つことはできません。社員がこの会社にいて楽しいと思えるような、魅力をつくるべきだと考えています。私の頭の中にいつもあるのは、社員が才能と情熱を解き放つために環境を整え、会社として勝つことなのです。

働き方改革をする前に人事評価制度を見直す

社員が“才能と情熱を解き放つ”ために組織づくりを進める上で、人事評価制度の問題が見えてきました。設立以来、短期間で組織が急拡大してきたため、マネジメント適性があるとは言えない、もしくはマネジメントスキルが不十分な上司がいたのも事実でした。なかには、部下は自分を輝かせるためのもの……と考えている上司もいました。働き方を変える以前の問題として、人事評価制度の見直しが必要だったのです。

そこで新たな360度評価を取り入れて、部下に「上司についていきたいか」というアンケートを実施しました。上司はアンケートの点数だけではなく、コメントまで読むことができるので、次のアクションに生かすことができます。現場からの評価を踏まえて、人材の再配置も行い、部下を輝かせる上司が評価される土壌をつくりました。

画一的な人材マネジメントからの脱却を急ぐべき

なぜ働き方改革の前に人事評価制度の見直しが必要なのか。ここ20年、30年の間、日本企業の多くはマス統一管理で、一人ひとりをきちんと見られない体制・ 制度になっているのではないでしょうか。これが、働き方改革が進まない根っこの問題だと思います。

組織のフラット化によりマネジャー1人当たりの部下人数を増やし、またプレイングマネジャーを増やしてきたことで、社員一人ひとりと向き合うことが難しくなり、部下の貢献度も見えなくなりました。現場の人事力も落ちています。

かつては長期雇用が前提でしたから、長期の成果を見ながら評価し、人材を振り分けることができました。しかし、雇用の流動性が高いIT業界では、社員の貢献度を評価するのに長い時間をかけられません。

さらに、高度成長期はチームワークでみんなと同じように働くことがよしとされてきましたが、今そんなことをしていたら競合に負けてしまいます。例えば、ヤフーに天才が入社したとして、「土日のほうが集中できるから、土日に働いて平日は休みます」と言われたとき、それを受け入れられる会社でないと競争には勝てないのです。

日本の多くの企業が、画一的な人材マネジメントになってしまった原因は経営にもあります。人事部門をコストセンターとして捉えて、最小限の体制で効率化しようとしてきた弊害が、今の時代になって出てきているのではないでしょうか。

会社が社員の幸せに積極的に関与する時代

当社の場合は1年、半年というサイクルで、社員を的確に評価し、貢献度においての優劣をつけなくてはなりません。一握りの優秀な人材が全体を支えるビジネスモデルではなく、エンジニア一人ひとりの力に支えられることでヤフーは成り立っているため、一人ひとりの貢献を短期間で細かく評価できるマネジメント体制を整えていくことが不可欠でした。

社員の貢献を正しく評価する人事評価制度といっても、業界や職種、仕事の難易度によってその内容は異なります。自社のビジネスモデル、各業務の特徴などをしっかりと理解して進めるべきです。それと同じで、働き方改革も、他社に倣って進めたり、画一的な働き方を求めたりするものではありません。

社員一人ひとりに目を向けていれば、働き方改革は自然と起こるものだと私は考えています。ヤフーの働き方改革の根底にあるのはダイバーシティの考え方です。育児や介護をしていても働けるのもそうだし、夜型の社員もいれば、家で仕事をしたほうが捗る社員がいるかもしれない。社員が効率よく働くための選択肢は複数あっていいと考えています。

各々のコンディションのいい時間帯や、労働生産性が上がる環境で働けるようにするのはもちろん、労働分配率を上げていくことも真剣に取り組んでいくべきです。一人ひとりがどんな風に働くことができたら幸せなのか考えないと、優秀な人材は入社せず、また会社に残らない時代です。これまで、社員の幸せは社員が自分の力で掴むものであって、会社が与えるものではないと思われてきました。もちろんそれが間違っているとは言いませんが、会社が社員の幸せづくりに積極的に関与する時代がやってきていると思います。

個人だけではなく 組織の労働生産性に目を向けるべき

私は世のなかで言われている働き方改革に疑問を抱いています。個人の労働生産性ばかりに目が向けられているように感じるのです。どれだけ頑張って個人の労働生産性を上げたとしても2倍にはなりません。労働生産性向上を目指して、社員に無理強いをしても、メンタルが痛むだけです。もっと組織としての労働生産性を上げる方法を考えるべきではないでしょうか。

例えば、仕事中によくあるロスの1つに「待ち時間」があります。上司に相談したいけれど席にいないから待つ、決裁を仰いでいるが途中で止まっているなど、待ち時間をなくすことができれば、労働生産性は上がります。また、三交代制の警察や病院、工場のように人々が眠っている時間に仕事ができれば、全体の労働生産性は上がるかもしれません。

仮にマネジャーが2人いて、どちらかが常駐している体制にすれば待ち時間が減るのですが、経営側からは「マネジャーを2人にすると人件費が増える」という反対意見が出てくるでしょう。それで結局何も変わらず「個人が頑張れ」という話になったら意味がないです。

労働生産性の向上は個人だけの問題ではありません。最も無駄を生んでいるのは、むしろトップや上司かもしれない。実際、上司が思いつきで右へ行け、左へ行けと指示を出して従わせたら、物事は前に進まないし、部下たちは疲弊してしまいます。朝令暮改を否定するわけではないですが、本気で労働生産性を上げようと考えるなら、組織全体を俯諏して議論することも必要ではないでしょうか。

※本稿は、弊社主催の人事フォーラム RMS Forum 2017内セッション「働き方改革の舞台裏」配布資料より抜粋・一部修正したものです
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。


■会社概要
ヤフー株式会社
1996年、インターネット上の情報検索サービスの提供を目的として設立。ポータルサイトYahoo! JAPANで広告事業、イーコマース事業、会員サービス事業などを展開。 2012年より、宮坂学社長率いる新執行体制で「爆速」を旗印に経営改革をスタート。「社員の“才能と情熱を解き放つ”」をテーマに労働環境の改善に注力し、「社会課題を解決する働き方」を目指している。

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