個を生かす人事制度とリーダーシップ ユニリーバ・ジャパン ユニリーバらしいより「あなたらしく」あれ

WAA(Work from Anywhere and Anytime:いつでも、どこにいても働ける)など選択肢の幅広い人事制度で注目を集めるユニリーバ・ジャパン。ここでは個人が組織に合わせるのではなく、社員一人ひとりの個性の積み上げが組織を作る。「らしさ」を生かした経営の根底には、どのような考え方があるのか。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長の島田由香氏にお話を伺った。


「Be Yourself(あなたらしくあれ)」

世界約190カ国でビジネスを展開しているユニリーバ。GEから2008年に転職し、現在、その日本法人で人事総務本部長を務めているのが島田由香氏だ。転職当初から、同じグローバル企業でも「アメリカ生まれのGEとヨーロッパ生まれのユニリーバでは企業文化の違いを感じていました」と語る。

「ひとくちにヨーロッパと言っても、そのなかに約50カ国がひしめき、人種も話す言葉も宗教もそれぞれ違う。多様なバックグラウンドをもつ人々と協働しながら、同じように多様な市場に向かって消費財という製品を開発・販売していくには、より個々人の『らしさ』を大切に、個性を十分に発揮してもらわなくてはなりません。前職のGEでももちろん個性は大事にされていましたが、ユニリーバではよりそれが徹底されていると感じました」

ビジネスパーソンとしてあるべき規範を除けば、社員に対して「ユニリーバらしさ」を求めることはない。代わりによく使われるのが、「Be Yourself(あなたらしくあれ)」という言葉だ。働き方も多様であっていいという考え方から、社内では「Ways of Working」という言葉もよく使われている。島田氏を含む役員が主導する、社員がいつでも、どこでも自由に働くことができる人事制度WAAも、そうした価値観の上に成り立っているという。

「文化的背景の違いから、ミーティングを開いても時間どおりに全員が集まらないことはよくあります。そのような場合でも、全員に時間どおりに来なさいと押し付けるのではなく、例えばそれぞれに敢えて集合時間をずらして伝えておくなど工夫をして対処すればいい。会社として、決して遅れることを是としているわけではありませんが、それも含めて『らしさ』だよねという柔軟な考え方で対応しています」

多様性をマネージするためのコミュニケーションコストは膨大で、当然、調整には時間もかかる。しかしユニリーバでは、それは企業運営には必要なコストであり、世界市場で戦うためにはむしろ不可欠なコストだと認識されている。

「現CEOのポール・ポールマンが2009年に就任してから、more human(より人間らしく)という言葉も盛んに耳にします。リーダーシップに関しても、authentic leadership(ありのままのリーダーシップ)をユニリーバでは大切にしていて、よくvulnerability(弱さや脆さ)という言葉がよく使われる。真のリーダーは弱さも含めてすべてさらけ出すことができるという考え方で、リーダーこそ、より人間らしくあれ、というカギとなるメッセージだと思っています」

ネガティブな感情を受け入れる
リーダーも弱さがあっていい

ビジネスシーンでは一般的に、感情をさらけ出すのは恥ずかしいことで、感情的という言葉はネガティブな文脈で語られることが多い。しかし、「人間はそもそも理屈ではなく感情で動く生き物ではないか」と島田氏は問いかける。

「だとすれば、感情を完全に押し殺したまま働くのは本当にいいことなのでしょうか。私たちはシャンプーの香りひとつにもこだわり、より多くの人に『いいね』と感動してもらい、持続可能でより豊かな生活に貢献したいと願いながらビジネスをしています。にもかかわらず、そこで働いている人間が感情を完全にオフの状態にしていたら、本当の意味でいい商品は作れないでしょう」

リーダーもまた弱みをもった人間であり、当然、間違うこともあるが、「間違ったら素直に謝ればいい。マイナスの感情に関しても、怒りや腹立たしさがあることを認めた上で、その出し方を学んでいけばいい」と島田氏は言う。

「経営コンサルタントのパトリック・レンシオーニは、チームが機能不全に陥る5つの要因をピラミッドの形で説明しています。その一番下の段にあるのが信頼の欠如であり、互いの信頼がなければ何をしてもチームは機能しません。人間が弱さも含めてさらけ出すには、ここでは何を言っても受け入れられるという信頼感と安心感がなくてはなりません。これがリーダーの最も重要な役割だと考えています。リーダーがそのような場を作れているかどうか、ユニリーバでは『シナジー』というワークショップをチーム単位で行い、チームとしての力の向上に取り組んでいます」

個々の人生の目的が会社の目的と合う状態がベスト

ポールマン氏が就任して強化されたことの1つに、IDP(Individual Development Plan)と呼ばれるキャリアディスカッションがある。その際に、「あなたの人生の目的は何ですか」という問いかけから話を始めるのだという。

「真のリーダーとそうでないリーダーの大きな違いは、自分自身の人生の目的を理解しているかどうかにあると考えています。自分自身について考える時間も余裕もなく、ベクトルが常に外に向いた状態になっていると、人間は生きる目的を見失う。このような場合、多くの人はhuman being(人間としてあるべき状態)ではなく、human doing(目的もなく動いている状態)になっています」

社内外問わずトレーニングやセミナーは、外に向きがちなベクトルを自分自身の内側へと向けるきっかけにもなる。島田氏いわく、「人間は本来、どういう状態であればパフォーマンスを発揮できるかを分かっているし、自分らしくいられるときが一番いいパフォーマンスを出せるもの」。だからこそ社員には「ユニリーバらしく」より、「あなたらしく」あることを求める。人間らしくあってほしいから、感情的であることもむやみに否定はしない。

「個人が個人のままで、自分らしさを保った人間らしい存在でいられること。人生の目的にしたがって生きられること。そして、その目的が会社の目的と合っていれば、パフォーマンスもおのずとベストな状態になるはずですし、それがすなわち『Company(仲間)』という言葉がもつ本来の意味に近いあり方だと思っています」

【text:曲沼美恵】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.47 特集1「職場での「自分らしさ」を考える」より抜粋・一部修正したものである。
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