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企業事例

個性を重んじた制度設計 サイボウズ

越境を可能にする「100人いれば、100通りの人事制度」

  • 公開日:2017/01/30
  • 更新日:2024/03/06
越境を可能にする「100人いれば、100通りの人事制度」

一人ひとりの個性が違うことを前提に、それぞれが望む働き方や報酬が実現されればいいという考え方で、公平性よりも個性を重んじた制度設計をしているサイボウズ。
「育自分休暇」制度を導入したり、「副業」をあえて禁止していないのはなぜなのだろう。
サイボウズ株式会社 事業支援本部 人事部 マネージャーの青野 誠氏にお話を伺った。

モチベーションは「理想に対する思いの強さ」
出戻りをサポートする「育自分休暇」
いったん外の世界へ出て戻ると「覚悟」が決まる

モチベーションは「理想に対する思いの強さ」

サイボウズの人事制度は「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という方針に基づいて設計されている。モチベーションを「理想に対する思いの強さ」と定義し、それを支えるための人事制度を次々と作ってきた。いったん退社しても再入社できる「育自分休暇」も、その1つだ。

制度として導入したのは2012年だが、実はそれ以前から、いったん退社しても戻ってくる社員は多くいた。人事部マネージャーの青野誠氏が説明する。

「社内にはない職種を他の会社で経験したいという人や、一度、起業に挑戦したいのでいったん外に出たいという人もいました。しかし、サイボウズという会社は好きなので、機会があれば、また戻りたいという人も多かったんです。それならば、いったん外でチャレンジして自分を磨いた上でまた会社に戻りたいという人を、会社としても支援できる制度を設けようということで、育自分休暇を導入しました」

出戻りをサポートする「育自分休暇」

育自分休暇を申請するのに、35歳以下という年齢制限はあるものの、それ以外、特に条件は設けていない。申し出があった場合、本部長会議で承認し、再入社の機会が得られるパスポートを発行する。手続き上はいったん退社となるが、6年以内であれば戻るのも自由。再入社する場合の職種やポジション、給与などはその時点で双方が改めて話し合い、決めることになっている。2012年の導入以降、2016年9月の時点でパスポートを発行したケースは12件。制度利用者の再入社はまだないが、制度導入以前の出戻り入社は7件にのぼる。

利用申請の理由は転職や独立などさまざまだ。なかには制度を利用し、青年海外協力隊としてアフリカのボツワナ共和国でボランティア活動をしている元社員もいる。

「彼女の場合、当初は2年間の派遣予定でしたが、現地での活動がおもしろいらしくて、1年延長して3年目に入っています。パスポートを発行した人に対して、特にこちらからコンタクトをとったりはしていませんが、職場の人たちとはフェイスブックなどを通じてごく自然につながっていまして、彼女の場合も、一時帰国すると会社に来て、有志を集めてその中間報告をしたり、現地の人たちが作ったアクセサリーを売ったりしています」

「他には、中途入社した女性で、入ってすぐに旦那さんが海外に転勤になってしまったケースがありました。この方も育自分休暇制度を利用していったん退社しましたが、『この制度があって本当によかった』と話していました」

いったん外の世界へ出て戻ると「覚悟」が決まる

「育自分」の意味は人それぞれだが、基本は文字どおり、社内ではできない経験を外の世界で積み、自分自身を成長させた上で、また再入社してもらうことをねらいとしている。「サイボウズにそのままいたら身につかないスキルを得てきたり、違う環境で異文化を体験してきたんだなというのが分かると非常に理想的です」と、青野氏は言う。実際、パスポートの所有者ではないが、サイボウズで営業を担当した後、他社でマーケティングの経験を積み、再びサイボウズに戻ってマーケティングを担当するようになった社員もいる。

「いったん外の世界へ出てから戻ってくると、もやもやしながら働くことが少なくなります。違う環境を肌身で知り、視野が広がった上であえてサイボウズを選んでコミットしていることになるので、それだけ覚悟が決まった状態にもなるんです」

ここで言う「覚悟」とはサイボウズの社内用語で、「組織の理想に対するコミットの度合い」であり、与えられた役割を理解した上で「やる」と自ら選択している状態を指す。サイボウズでは、この「覚悟 ×スキル=信頼」と考え、社内評価の重要な柱の1つとしている。給与を決める仕組みを「社内相対評価」ではなく、「社外相対評価(市場性)」+「社内絶対評価(信頼度)」としたことも、このような制度を導入しやすくしている要因だ。

サイボウズでは、社員の副業も特に禁止はしていない。以前からオークションやアフィリエイト、本の執筆などで副収入を得るケースはあったが、誰でも会社に断りなく副業ができるという「副業(複業)の自由化」を実現したのは2012年からだ。

「週末に居酒屋でアルバイトをするなどの場合は特に申請の必要はなく、社名を使って何かをする場合は申請が必要、というスタンスです。何を副業と認めるかの境界線は難しいのですが、そこは個別に話し合いをしながら解決しています」

企業が副業に関する制度を導入しようとする場合、運用面でつまずくことが多い。それを解決するのは、コミュニケーションだという。

「実は、社内で部署を異動するような場合でも、マイキャリという制度があります。個々人のやりたいことを、1年以内、3年以内、いつか、という3つの時間軸でデータベース化し、上長はそれを元に本人と話し合い、異動できるのか、できないのか、異動できるのであればいつ頃がめどかというフィードバックをします。データベースは半期に一度、更新しています」

内と外の垣根をなるべく低くし、あくまで本人の希望に基づき越境しやすいような制度づくりをする。先に紹介した育自分休暇や副業の自由化も、「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という人事の方針があってこそだ。

【text:曲沼美恵】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.44 特集1「「越境」の効能」より抜粋・一部修正したものです。
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※記事の内容および所属・役職等は取材時点のものとなります。

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