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企業事例

組織文化への適応によって離職率低下を実現したVOYAGE

社員は同じ船に乗る「クルー」 だから理念で採用する

  • 公開日:2015/09/18
  • 更新日:2024/03/26
社員は同じ船に乗る「クルー」 だから理念で採用する

個人のキャリアが多様化していく時代、個人は、新たな環境にどうしたら適応できるのか。また、企業はどのような施策をとり得るのか。組織文化への適応を積極的に促進して社員の離職率低下を実現した企業の事例として、株式会社VOYAGE GROUP 取締役CCO(Chief Culture Officer)新領域事業兼人事部門管轄 青柳智士氏にお話を伺った。

商品やサービスでは競争優位を保てない
言葉と空間の両方で経営理念を表現する
失敗を共有する「座礁学」とノウハウを学ぶ「見聞学」

商品やサービスでは競争優位を保てない

新規参入が相次ぐIT業界は、人材の獲得競争も激しい。
そんななか、スキルフィットと同時にカルチャーフィットを重視した採用を続けているのが株式会社VOYAGE GROUP(以下「VOYAGE」)だ。
世界的な「働きがいのある会社」ランキングで中堅企業のトップに位置し、離職率の低下にも成功している。

「移り変わりの激しいインターネット産業では、商品やサービスではもう競争優位を保てない。大事なのは人です。長く勤め続ける社員がいて、彼らがいかにモチベーションを高く保ち、行動するか。そこが最も重要な競争の源泉になってきています」と取締役CCOの青柳智士氏は言う。そのために、近年、力を注いでいるのが採用だ。

「新卒でも中途でも基本的な考え方は一緒です。スキルと同様にカルチャーフィットも重視する。カルチャーとは具体的に何かと言えば、経営理念です。この部分で合わなければ、いくらスキルがあっても採用はしません」

経営理念は「SOUL(創業時からの想い)」と「CREED(価値観)」の2つから成る。「360°スゴイ」というSOULを体現するために必要なのが、「挑戦し続ける」「自ら考え、自ら動く」「本質を追い求める」などのCREEDで、中途採用の場合は過去の職歴を通じてこれらが顕在化されているか、新卒の場合は、学生時代の経験などからこれらが潜在的にあると感じられるかどうか、を対話を通じて見極めていく。

「ポイントはそれを人事部だけではなく、社員も一緒に見極めること。特に新卒採用では、1人に対して8人前後の社員が面接します。新卒採用プロジェクトに関与しているのは、社員の半数以上。日頃唱えている経営理念について個人が納得できる機会の1つを採用と捉え、組織に浸透させていく。ここもわれわれにとってのねらいの1つです」

商品やサービスでは競争優位を保てない

言葉と空間の両方で経営理念を表現する

年間の応募者は新卒は数千人、中途は100人前後です。一対一で面接する場合もあれば、何人かが同時にまとめて会う場合もある。採否を決めるまでに一度、候補者と社員が社内バー「AJITO」などで一緒に飲むこともある。

「トップを筆頭にVOYAGEの歴史を語り、会社の個性に合った人物を採用することにエネルギーを注ぐ。こちらがカルチャーを強く打ち出せば、それをいいと思う人たちが応募してくれますから、定着率も良くなります。その後に関しても、じつは8割くらいはこの採用時点で決まっていると思います」

始まりは2009年、新たにCCO(最高文化責任者)が誕生し、青柳氏が就任したことだ。青柳氏は、当時社内になんとなく漂っていた停滞感を払拭しようと、オフィスや経営理念の刷新に取りかかった。

「業績がいいときばかりではなく、悪いときもここに残って頑張りたいと思えるような会社にするにはどうすればいいのか、社長の宇佐美(進典)とも真剣に話し合いました」
そのなかで出てきたのが、『海賊』というキーワードだ。

「ベンチャーマインドやベンチャースピリットという言葉はすでに使い古されていました。われわれはそれを、海賊という言葉で言い換えた。これなら『常に挑戦していく』『仲間と事を成す』という、われわれの価値観にもピッタリだと思いました」

そしてオフィスは、海賊である社員が、既存のルールを打ち破り、新しい社会、新しいサービスを創り出していくべく航海を続ける場と定義した。経営理念を体現するオフィスへの刷新プロジェクトは「新時代を切り開く航海―VOYAGE」をコンセプトとし、のちに現在の社名になった。

言葉と空間の両方で経営理念を表現する

失敗を共有する「座礁学」とノウハウを学ぶ「見聞学」

青柳氏らは企業理念を外に向けて強く打ち出すと共に、社内に浸透させることにも熱心に取り組んでいる。先の航海イメージは、社内で開く勉強会の用語などにも貫かれている。
「本部長などを対象にした勉強会を、われわれは『座礁学』と呼びます。これは失敗の経験を共有して、次に生かすためのもの。もう1つは『見聞学』と呼んでいますが、こちらは文字通り、見る、聞くが中心です。例えば、あるメンバーが辞めたいと言ったら、上長としてどのようなコミュニケーションをとればいいかなど。その時々でみなが困っていることをテーマに掲げて、ノウハウを共有する場を設けています」
いずれも「正しい答え」は存在しないため、最終的な判断の拠り所はやはり経営理念になる。

能力に関して、通常は個人のパフォーマンスのみを見て評価しがちだ。しかし、VOYAGEでは、本人の能力とミッションが噛み合っているか、または、ミッションの伝え方に問題はなかったか、など総合的に判断して評価を出している。エンジニアに関しては特に、同じエンジニアの観点とマネジメント側の観点を総合しながら評価をしている。

「われわれは社員をクルーと呼んでいますが、上長とクルーとの間に何か問題があったり、評価に納得がいかないようであれば、すぐに間に入って調整します。基本的に『現場は正しい』という考え方ですが、経営層と現場では視野が違う。その違いを理解しながら、両者をブリッジしていくのが人事の役目だと思っています」

VOYAGEは、定期的な社内アンケートも実施している。その回答率は97%にも上るという。先のような人事の取り組みが、クルーにも理解され、信頼されている証だろう。 「GPTWさんが出している『働きがいのある会社』ランキングで、今年は中堅企業の1位をいただきました。3位だった以前は『人事部が評価されたんでしょ』と人ごとのような感じだったのが、今回は全員が自分事のように喜べた。この変化は大きいし、嬉しい」
一時は15%に上っていた離職率も、最近は8%台とかなり低く抑えることができている。

【text:曲沼美恵】

※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.39特集「『適応』のメカニズムを探る」より抜粋・一部修正したものである。

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