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FIREとは? 早期リタイアとの違いや実現するために必要な条件やステップをご紹介
- 公開日:2024/01/26
- 更新日:2024/03/16
新たな人生の選択肢の1つとして、徐々に広まり始めているFIRE。FIREは投資をもとに労働収入から離れる選択をするスタイルで、かつての早期リタイアにも似ていますが、厳密には異なる新しい考え方です。そこで今回は、FIREの概要や実現方法について解説していきます。
新しいライフスタイル「FIRE」とは
「FIRE」の語源となっているのは、「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」と呼ばれる考え方で、各単語の頭文字を取って造られた言葉です。
FIREでは、基本的に資産運用による不労所得を形成することで、労働収入だけに頼らない人生設計をするのが大きな特徴。特に近年は、働き方や人生観の多様化が進んできた背景などもあり、FIREへの関心が高まってきています。会社に雇用されて定年まで働くだけでなく、若いうちに労働収入から独立した生活基盤を築き、より自由な生き方を追求するのがFIREの目的ともいえるでしょう。
これまでの早期リタイアとの違い
従来の早期リタイアでは、老後も困らない程度の資産が手元にある状態で、貯蓄を切り崩しながら生活するのが一般的でした。もちろん年金が受給できる年齢になれば、それも受け取りながら生活費に充てることになりますが、基本的にはこれまでに貯蓄にまわした収入や退職金をもとに暮らすスタイルです。
一方でFIREでは、資産運用によって生じる利益を得ながら、一定の投資元本は減らさずに生活していきます。投資をもとに利益をあげていくので、FIREも早期リタイアと同様に、退職前にはある程度の資金が必要です。とはいえ元々の資金は守りながら、運用益で生活費をまかなうため、早期リタイアほどの貯蓄がなくても問題はありません。
FIREのメリット・デメリット
FIREでは労働から一歩引いた生き方ができ、日々心身を摩耗せずに生活しやすい点を見れば、何かとメリットは多いように感じるでしょう。とはいえ投資で利益をあげることや、仕事から離れることで生じるデメリットもいくつか存在します。ここからは、FIREにおけるメリットとデメリットを整理していきます。
FIREのメリット
FIREの主なメリットは、大きく分けると次の4つが挙げられます。
仕事や時間にとらわれない生活が送れる
労働収入が自らの経済基盤となっている場合、どうしても仕事中心の生活になりがちです。そうなると時間も仕事に取られやすくなってしまい、プライベートな自由が確保しづらいと感じる場面もよくあるでしょう。そこでFIREによって経済基盤を不労所得にできれば、精神的にも時間的にも余裕が持てるようになり、より豊かな人生を考えることにつながります。FIREによって、仕事以外で実現したい目標に向かって活動したり、自分の趣味に没頭したりしやすい生活環境にできるのがメリットです。
生活する場所が選べる
前述のように仕事に縛られない生活ができるので、住む場所も選択しやすくなる利点があります。基本的に通勤の利便性を考慮する必要がなくなるので、より幅広く居住地を選ぶことが可能です。例えばオフィスが集まる都市部にこだわらず、自然に囲まれたのどかな環境に住まいを置くなど、より自分に合った街で暮らしやすいのもメリットでしょう。
お金に関する知識が身につく
FIREでは、基本的に投資を通じて生活費を捻出していくので、資産運用の知識が不可欠です。さらに一定の資産を守りながら暮らすことになるため、何にどの程度のコストをかけるべきなのか、日々の出費も計画的に考えておく必要があるでしょう。こうして投資のノウハウを学んだり、家計を見直す習慣ができたりすると、資産の増やし方や節約術などのお金に関わる知識も自然に蓄積されていきます。
選択肢が増える
FIREによって、仕事を生活の主軸にしないことで、より自由な生き方がしやすくなります。当然ながら自分自身にとって負担に感じないのであれば、働いて収入を得る選択も可能です。その他にも、例えばFIREのかたわら農業をして自給自足したり、趣味を副業にしたりと、さまざまな人生設計が考えられます。自分にとっての豊かさをとことん追求できるのは、FIREの大きなメリットです。
FIREのデメリット
FIREでは、次のようなデメリットも想定されるため、以下の要素も十分に認識しておくことが大切です。
運用が失敗するリスクがある
投資による運用益は、必ずしも計画的に生み出せるものではなく、場合によっては損失の方が大きくなる危険性もあります。例えば投資先の株価が急激に下落し、元本割れを起こしてしまう可能性もないとは言い切れません。さらに運用益がうまく出せない状況が続けば、投資できる資産が大幅に減ってしまう場合もあります。安定して利益をあげていくのが難しい部分は、FIREのデメリットでしょう。
キャリアが止まってしまう
FIREによって早い段階で仕事を辞めることで、当然ながらキャリアは中断されます。仮にFIREの維持が難しくなって再就職をする際、転職先からは、仕事を辞めている期間には職務経歴がないと判断されてしまうことも。また早期退職によって、周りの同世代よりキャリアに遅れがあり、採用されにくくなるリスクもあります。万が一の備えとして、再就職の必要性も考慮するなら、FIREの期間に何かしら新しい知識やスキルを磨いておくことも重要でしょう。
急な出費に対応できなくなる可能性がある
先ほども出てきたように、安定的な収入の確保が難しい分、何かしらの緊急事態によりまとまった出費が発生した際の対応が難しい可能性も考えられます。投資でうまく利益が出ておらず、手元の資産が少なくなっている時に、病気や事故などに見舞われることがあるかもしれません。また急な出費によって、大幅に資産が減るリスクもあり、FIREではあらかじめ十分な貯蓄をしておくことも不可欠です。
FIREを実現するために必要な条件
ではFIREの本格的な実現に向けて、事前に準備しておきたい資金や心構えについて、解説していきます。
年間支出総額の25倍の金額を投資元本として用意する
FIREを成功させるには、一般的に年間総支出額の25倍は必要とされています。総務省による「家計調査年報(家計収支編)」では、2022年度の全世帯の平均消費支出額は、月間24万4231円。年間にして293万772円となっています。なお単身世帯のみの平均支出額は月間16万1753円で、年間にして194万1036円。毎年の出費額の目安は、大体200万~300万円と考えられます。ここから試算してみると、FIRE準備資金の大まかな目安としては、5000万円~6500万円となります。
生活費を投資元本の4%以内に抑える
この「4%」は、米国株式市場における、平均成長率(7%)と物価上昇率(3%)をもとに算出された割合です。株価の平均的な成長率と物価上昇率の差が4%なので、米国株での投資を想定するなら、この差額内に生活費を抑えることで投資元本を維持できる計算になります。ちなみに先ほど出てきた準備資金の目安も、この4%を基準としています。投資元本を100%と考えて、そのうち生活費を4%とすれば、元手として必要なのは25倍です。数値にあてはめてみると、投資元本6000万円でFIREをする場合、年間240万円(月間20万円)が生活費の上限と想定できます。
仕事をしながら収益を得る「サイドFIRE」という選択肢もある
収入源を投資に限定するのではなく、状況に応じて副業やアルバイトなどで補てんする「サイドFIRE」を検討しておくのもお薦めです。仮に月間の生活費を20万円として、毎月10万円は労働収入として稼ぐとします。ここから逆算してみると、投資による必要収益は年間120万円。ここまでにご紹介したルールにあてはめれば、年間総支出額120万円×25倍の3000万円でFIREが実現できる計算になります。また何かしら仕事をしていた方が、生活にメリハリが出やすく、キャリアを維持することにもつながるでしょう。またサイドFIREを検討しつつ、今後の働き方にも悩んでいる際には、個人向けのキャリアデザインのセミナーなどを参考にしてみるのもよい方法です。
FIREを実現するための3つのステップ
実際のFIREを叶えるためには、以下にご紹介するプロセスに沿って、準備を進めることが大切です。次の3段階を踏むことで、計画的な資金繰りにつなげられます。
ステップ1 年間の必要な生活費を算出する
FIREの実現にあたっては、まず年間どれくらいの生活費を使っているのか、今までの家計を見直すことから始めます。月間支出の平均額×12カ月分で計算すると、より正確な年間出費額の算出が可能。なおかつ月間の生活費の項目を分けて把握できれば、最低限必要な毎月の費用も分かりやすくなります。例えば住宅費を抑えるのは難しいかもしれませんが、娯楽・ファッション・外食などにかかるコストは、削ろうと思えば工夫次第で削れるものです。こうして必要な生活費を精査することで、FIREにともなうライフスタイルもイメージしやすくなるでしょう。また雇用されなくなると、健康保険料や年金などの社会保険料の負担額も変動します。国民健康保険や国民年金に切り替わる場合には、どの程度変わるのか、各自治体のホームページなどで確認してみましょう。
ステップ2 FIRE実現に向けた資産額を算出する
年間総支出額が算出できたら、前述にもあるように、25倍にしてFIREに必要な資産を計算します。加えてマイホームの購入や結婚・出産など、今後のライフイベントが想定される場合には、そのために必要な資金も考慮しておかなければなりません。また退職によって、厚生年金の支払い期間が短くなると、将来的な受給金額は減少します。なお日本年金機構のホームページには、働き方や受給開始年齢などに応じて年金受給額を試算できるシミュレーターがあるので、一度確認してみるのがお薦めです。「年間総支出額×25倍」の投資元本と併せて、ライフイベントや老後なども考慮した資産額を検討してみましょう。
ステップ3 資産を増やすために投資をスタート
投資といっても種類は幅広く、それぞれで運用方法やリスクなどにも違いがあります。よくある例としては株や不動産ですが、投資には正解がなく、種類ごとの特性を調べて自身に適したスタイルを確立することが重要です。
なおFIREと同時に考えておきたい、将来的なキャリアプランに関しては、以下のような講座でもご紹介しています。仕事も含めたライフプランニングでお悩みの際には、ぜひ活用してみてください。
<関連リンク>
未来型キャリアデザイン ~「人生100年時代」のキャリア戦略を考える~(185)
アドラー流!自分軸で描くこれからのライフ&キャリア ~自分と会社の幸せを最大化する「やりがいゾーン」の見つけ方~(201)
まとめ
FIREには、生活を保障する分の収入は最小限の労力で確保しつつ、自分なりの人生の豊かさを手にする目的があります。仕事以外で夢中になれるものがある人や、お金を稼ぐことよりも静かで落ち着いた暮らしに価値を感じる人にとっては、特にFIREが向いているかもしれません。ただしFIREを叶えるには、投資に向けた資産と知識も不可欠。また万が一の備えとして、再就職ができる準備もしておくと無難です。FIREを検討する際には、自らのキャリアプランも含めて、人生設計を一度見直してみましょう。
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