用語集
女性活躍推進法とは? 女性活躍が推進される背景や企業に求められる取り組みを解説
- 公開日:2023/11/02
- 更新日:2024/06/07
女性活躍推進とは?
女性活躍推進法とは、2015年8月に成立した女性活躍推進を促すための法律です。女性活躍推進とは「就労を望む女性がそれぞれ個性と能力を発揮し、いきいきと活躍できる社会」を目指す一連の施策のことです。近年、女性のより積極的な採用や管理職の登用を図る企業が増加していますが、その背景には女性活躍推進があります。
「男女共同参画社会」と混同されがちですが、こちらは「各々が性別にとらわれず、その個性と能力を発揮できる社会」のことです。1999年に施行された「男女共同参画社会基本法」に基づき、仕事や家庭や地域といったあらゆる分野で性別による差別をなくすことを目的に掲げています。
一方、女性活躍推進は「仕事における女性の活躍を促す」というものであり、目的が異なります。
多様な働き方に対応した研修
公開型研修「リクルートマネジメントスクール」の女性活躍推進支援
2015年から、「女性活躍推進」を管理職向け研修・女性係長向け研修の両輪で継続している
【導入事例】株式会社豊田自動織機様
女性活躍が推進されている背景
女性活躍が推進されている背景には、以下のような問題があります。
・少子高齢化による労働力不足
・女性と男性の賃金の差が大きい
・女性の雇用環境が整っていない
これらの問題を解決するために、女性活躍を推進する必要性があるのです。ここでは、それぞれの問題を詳しく解説していきます。
少子高齢化による労働力不足
2019年に労働政策研究・研修機構が発表した「労働力需給の推計」によれば、2017年から経済成長と労働参加が進まなかった場合、日本の就業者数は2040年時点で1285万人も減少すると予測されています。逆に経済成長と労働参加が適切に進んだ場合、就業者数の減少は506万人に抑えられるとのことです。
将来的に労働者不足が危惧される背景には、少子高齢化の問題があります。総務省が発表している「人口推計」によれば、日本の高齢化率(65歳以上の人口の割合)が2022年10月時点で29.0%となっていますが、これは過去最高です。
女性活躍推進を通じて労働者数を増やすことは、深刻化する労働者不足の解消につながると期待されています。
女性と男性の賃金の差が大きい
世界経済フォーラムが2022年7月に発表した「ジェンダーギャップ指数」によると、日本の順位は146カ国中116位という結果でした。日本は戦後に女性の社会進出が大きく進みましたが、仕事においては世界的に後れをとっています。実際、日本は諸外国に比べて男女の賃金格差が大きいことも判明しています。
男女の賃金格差のおもな原因は、「女性の勤続年数が短いこと」や「管理職に就く女性の割合が少ないこと」です。このような問題を解決する取り組みとして、各企業で女性活躍が推進されていますが、まだまだ賃金格差が改善されたとはいえません。
女性の雇用環境が整っていない
日本企業の多くは定年退職制度を導入していますが、定年まで働く女性は少ない傾向にあります。そして、結婚や妊娠で仕事を辞める女性も多いのが現状です。
子育ての負担が減ったタイミングで再就職を希望しても、雇用形態の問題で活躍を妨げられているケースが少なくありません。例えば、退職前は正社員で働いていた女性が、再就職時には非正規雇用(アルバイト、パート、派遣社員など)で働くこともあります。
女性活躍推進法とは
女性活躍推進法とは、2015年8月に成立した女性活躍推進を促すための法律です。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で、2016年4月に全面施行されました。10年という期限があり、2025年度末までの時限立法です。
この女性活躍推進法では、自らの意思で職業生活を営む、あるいは営もうとする女性が、個性と能力をしっかり発揮できることを重視しています。
このために、以下の基本原則を掲げています。
・女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
・職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
・女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
出典:厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要」
女性の社会進出をサポートする点では、「男女共同参画社会基本法」や「男女雇用機会均等法」といった法律が先に制定されています。ですが、雇用や賃金での格差はまだまだ大きいのが実情です。
このような現状を打開するため、企業に課題分析や行動計画策定などを義務化する女性活躍推進法が制定されました。
2019年・2022年に法改正
女性活躍推進法は2019年に法改正が行われました。
2020年4月と2022年4月に施行された内容は以下のとおりです。
なお、常時雇用の労働者数が100人以下の場合は努力義務となります。
出典:厚生労働省「女性活躍推進法について」
また、2022年7月の法改正では情報公表の項目が変更されました。常時雇用の労働者数が301人以上の企業は、情報公表の必須項目として「男女の賃金の差異」が追加されます。
女性活躍推進法で企業に求められる取り組み
女性活躍推進法では、企業に以下のような取り組みを義務付けています。
・女性活躍の現状・課題の分析
・一般事業主行動計画の策定
・一般事業主行動計画の社内周知・外部公表・届出
・行動計画の実施と効果測定
ここでは、それぞれの概要を解説します。
1. 女性活躍の現状・課題の分析
まず、企業が実施すべき取り組みは、女性労働者が活躍しているかの現状把握をすることです。以下の4つの基礎項目で女性の活躍状況を把握します。
・中途採用者を含む労働者に占める女性の割合
・平均継続勤務年数の男女の差異
・月別の平均残業時間数
・課長以上の管理職に占める女性の割合(役員は除く)
基礎項目に加え、自社の実情に応じて選択項目を活用します。自社が抱えている課題を洗い出し、原因の分析を行いましょう。
2. 一般事業主行動計画の策定
現状把握と課題分析をしたら、自社の課題解決に向けた具体的な施策を「行動計画」として策定します。行動計画に盛り込む内容は、以下の4つです。
・計画期間
・数値目標
・取り組みの内容
・取り組みの実施期間
行動計画の内容はA4用紙1枚に収まる程度で十分ですが、行動計画策定支援ツール(※1)を活用すれば、より効率的に作成できます。
なお、取り組みの内容と実施時期については、男⼥雇用機会均等法に違反しないよう注意が必要です。
3. 一般事業主行動計画の社内周知・外部公表・届出
策定した行動計画は、非正社員を含めたすべての労働者へ社内周知します。社内ポータルサイトへの掲載や計画書の提示、メール送付といった方法で共有するのがよいです。
また、社外への公表も欠かせません。厚生労働省運営の「⼥性の活躍推進企業データベース」に掲載したうえで、自社のホームページにも掲載するのがお薦めです。
社内外に知らせたら、行動計画を策定した旨を管轄の都道府県労働局に届け出る必要があります。提出方法は郵送、電子申請、持参の3種類です。
4. 行動計画の実施と効果測定
行動計画の周知や届出まで完了したら、計画内容に沿って取り組みを実施します。取り組みで終わりにせず、効果測定もセットで行うことが大切です。
行動計画の進捗や数値目標などを定期的に確認しつつ、必要に応じて計画内容の見直しや変更を行うことが基本となります。PDCAサイクルを意識し、取り組みと効果測定を繰り返すことが重要です。
なお、行動計画を変更する場合は、所定の様式で労働局へ届出をし、社内外へも知らせる必要があります。
※1:厚生労働省「『一般事業主行動計画策定支援ツール』をご活用下さい!」
女性活躍推進法のえるぼし認定とは?
えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づく制度です。行動計画を届け出た企業が一定の基準を満たし、女性活躍推進に関して優良な取り組みを行った場合に厚生労働大臣から認定されます。
認定企業は認定マークを自社製品や名刺に載せることができ、企業イメージの向上につながります。また、日本政策金融公庫の低利融資を利用できるケースがあるなど、さまざまなメリットがあります。
えるぼし認定を受けるためには、以下の5つの評価項目で基準を1つ以上満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」にて毎年公表する必要があります。
1. 採用
2. 継続就業
3. 労働時間等の働き方
4. 管理職比率
5. 多様なキャリアコース
えるぼし認定は3段階に分かれていることも特徴です。評価基準を1つまたは2つ満たすと「1段階目」、3つまたは4つ満たすと「2段階目」、すべて満たすと「3段階目」になります。
なお、5つすべての評価基準に加えて別途要件を満たした場合、さらなる優遇措置が適用される「プラチナえるぼし認定」を受けることも可能です。
女性の活躍を推進する4つのポイント
女性の活躍を推進するためには、以下の4つのポイントが重要です。
1. 女性の採用比率を高める
2. 女性社員のキャリアアップを目的とした教育体制の強化
3. 女性が働きやすい労働環境づくり
4. 女性社員が能力を発揮できる体制を整える
それぞれ詳しく解説します。
1. 女性の採用比率を高める
2016年に施行された女性活躍推進法により、多くの企業で女性の採用や管理職登用への取り組みが行われています。特に男性社員が多数を占める企業の場合、求人で女性求職者にアプローチし、女性を積極的に正社員採用することが大切です。
- 女性総合職が少ない部署で複数名を採用
- ワークライフバランスの見直し
- 出産や育児で退職した女性向けの再雇用制度を設ける
このような施策の実施に加えて、女性の採用比率を算出して進展を可視化します。
2. 女性社員のキャリアアップを目的とした教育体制の強化
女性社員のキャリアアップを実現するには、社内研修や教育訓練を行うなどの教育体制の強化が必要です。教育体制が充実することで、活躍する女性社員が増え、さらに優秀な人材の育成にもつながります。
- 女性社員や女性求職者を対象にしたキャリアセミナーの開催
- 女性管理職の育成を前提としたキャリア研修
- 新規業務への配置前後に基礎スキル習得研修の実施
このような施策を通じて、女性社員のキャリアアップを支援することが重要になります。
3. 女性が働きやすい労働環境づくり
女性社員がいきいきと活躍できるかは、企業の労働環境が大きく影響します。在籍している女性社員にヒアリングし、働きやすい環境や制度を整えることも必要不可欠です。
- テレワークや時短勤務といった柔軟な働き方
- 出産および育児と仕事を両立できる労働環境
- 保育料やベビーシッター料金などの補助制度
このような施策を講じることで女性社員が定着し、さらなる活躍も期待できます。
4. 女性社員が能力を発揮できる体制を整える
女性社員の能力を引き出すためには、入社後および昇進後のサポートが欠かせません。
入社後は女性社員のスキルアップを支援しつつ、重要な業務を任せて経験や実績を積む必要があります。さらに、キャリア面談などを通じて、管理職になった際のイメージを共有することも大切です。
昇進後もマネジメント研修などを実施し、管理職としてのスキルアップを支援するのがよいです。
また、結婚や出産といったライフイベントに影響されず、女性社員の活躍を促せるような評価制度も導入すべきです。
まとめ
女性活躍推進とは、就労を望む女性が個性と能力を発揮し、活躍できる社会を目指す施策のことです。今後、男女の賃金格差の是正や女性社員のさらなる活躍が求められるでしょう。
女性活躍推進に向けた取り組みを実施する場合、まずは法改正の内容や環境整備のポイントなどを押さえることが重要です。また、施策だけで終わらせず、定期的な効果測定を行って見直しや改善を図ることも大切です。
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