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人材育成の研修に利用できる助成金制度は? メリットや受給方法を解説

  • 公開日:2023/11/02
  • 更新日:2024/07/24

労働者のキャリア形成を支援する人材育成に関する助成金として、「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」の2種類をご紹介します。対象者や目的を確認し、自社に合った助成金を申請する参考にして下さい。

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助成金とは

助成金とは、一定の要件を満たす法人や個人事業主が受給申請し、実施結果を報告することで国や地方自治体から給付される資金です。

助成金のなかには雇用促進や人材育成、労働環境の向上などといった人材育成を目的とした助成金も存在します。資金を融資で調達する場合は返済義務とともに金利もかかってくるため、助成金は事業主にとって大きなメリットがある制度といえるでしょう。

補助金との違い

助成金とよく似た制度に「補助金」があります。一定の要件を満たした事業者が取り組んだ事柄について報告することで、国や地方公共団体から返済不要の支援金が給付されるという点では、助成金と近いものがあります。

大きく異なるのは、原則として審査で選ばれた個人事業主や法人のみに給付される点です。つまり、補助金は要件さえ満たせば給付されるものではなく、他の申請者と比較されたなかで自社が対象として選ばれる必要があります。そのため、どのような取り組みをするかを申請書に記載し、他社との差別化をはかることが重要です。

補助金の給付金額は、助成金に比べると高額なものが多い半面、申請要件が厳しかったり申請期間が短かったりする場合もあり、助成金よりも獲得が難しい傾向にあります。

人材育成の研修に助成金を利用するメリット

人材育成の研修に助成金を利用するメリット

企業などの事業主が人材を育成するうえで、研修や教育は欠かせません。しかし、その実施には一定のコストがかかってきます。これに助成金を利用するとどのようなメリットがあるのか、大きく2つのポイントに分けて紹介します。

教育コストを抑えられる

助成金によって、人材育成のために必要な研修費用を一部または全額を補填できます。つまり、企業は少ない費用負担で研修や訓練ができ、教育コスト削減につながります。

また、研修を実施してきた企業の場合、助成金を活用することでより質の高い学びの場を提供できます。例えば、多くの社員を対象にした研修プログラムの実施や、社内OJT(職場で実務を通して学ぶ訓練)だけでなく、研修をノウハウの豊富な専門業者に外注することも検討できるでしょう。研修の量や質の向上は、ひいては社員のレベルアップやスキルアップにつながります。

このように人材育成の研修に利用する助成金は、労使双方にとってメリットがあります。企業には、申請できる助成金は積極的に申請することをお薦めします。

社員のモチベーション向上やスキルアップの機会を提供できる

助成金を利用することで、これまで人材育成をあまり行っていなかった企業も研修を取り入れやすくなるでしょう。

研修の実施は社員のモチベーションを高め、成長意欲を促進するといわれています。社内研修は、日頃行っている業務に関係性の高い知識やスキルなどを学べる貴重な機会です。また、外注での研修では外部のプロから技術や心構えなどを教わり、大きな刺激となるでしょう。

研修を受けることで新しいスキルや知識を習得できるうえ、自発的な取り組みをする者も増え、業務のパフォーマンスが向上することで会社の業績向上という長期的な効果も期待できるでしょう。

近年は人手不足のため、社員をいかに職場に定着させるかが企業の重要問題の1つとなっています。助成金の受給を機に研修を実施することは、働く一人ひとりの職務能力や技術を中長期的に計画する「キャリア開発」の促進にも役立つでしょう。

人材育成の研修に使える2つの助成金

人材育成の研修に使える2つの助成金

社員研修で使える助成金は「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」の2種類です。それぞれの概要とコースを紹介します。

1. 人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)

人材開発支援助成金とは、社員が職務に関する専門知識や技能習得のための研修や訓練をした企業に訓練経費や期間中の賃金の一部などを助成する制度です。

人材開発支援助成金は以下、7つのコースに分かれています。

人材育成支援コース
被保険者に対して職務関連の知識や技能を習得させるための訓練や、非正規雇用労働者に正社員化を目指す訓練などを実施した場合、訓練経費や期間中の賃金の一部が助成されます。

教育訓練休暇等付与コース
有給教育訓練休暇などの制度を導入して実際に同休暇を社員が取得し、訓練を受けた場合に助成されます。

建設労働者認定訓練コース
認定職業訓練や指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合に、訓練期間中の賃金の一部が助成されます。

建設労働者技能実習コース
雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合、訓練経費や期間中の賃金の一部が助成されます。

人への投資促進コース
デジタルや高度人材を育成する訓練、労働者の自発的職業能力開発、定額制訓練などを実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などが助成されます。

障害者職業能力開発コース
障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるために一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置費用や運営費が一部助成されます。

事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げといった事業展開にともない、新たな分野で必要な知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合、訓練経費や期間中の賃金の一部が助成されます。

2. キャリアアップ助成金

有期雇用労働者、短時間労働者といった非正規雇用の労働者の社内でのキャリアアップを推進し、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。

キャリアアップ助成金には、正社員化を支援する「正社員化コース」「障害者正社員化コース」、処遇改善を支援する「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「短時間労働者労働時間延長コース」があります。

正社員化コース
有期雇用労働者(非正規雇用労働者)などを正社員化した事業主に対して助成されます。

障害者正社員化コース
障害のある有期雇用労働者らを正規雇用労働者などに転換させた事業主に対して助成されます。

賃金規定等改定コース
有期雇用労働者らの基本給の賃金規定を改定し、3%以上増額した事業主に対して助成されます。

賃金規定等共通化コース
有期雇用労働者らと正規雇用労働者との共通の賃金規定などを新たに規定、適用した事業主に対して助成されます。

賞与・退職金制度導入コース
有期雇用労働者らに対して賞与または退職金制度を導入して、支給もしくは積み立てを実施した事業主に対して助成されます。

短時間労働者労働時間延長コース
有期雇用労働者らの週所定労働時間を延長し、社会保険を適用した事業主に対して助成されます。

人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金は併用可能

人材開発支援助成金はおもに正社員、キャリアアップ助成金は非正規雇用社員らが対象です。それぞれ対象者への人材育成や訓練、処遇改善などによって受給要件を満たしている場合、助成を受けられます。

この2つの助成金は併用可能です。多様な雇用形態の従業員を抱えている雇用主で、受給要件をクリアしていれば、いずれも申請できます。

近年、人材開発支援助成金に「事業展開等リスキリング支援コース」が新設されるなど助成金も随時、改正がなされています。助成を受けたい場合は事前に厚生労働省の公式ホームページなどでコースや受給要件、併用可能の条件など、注意事項を確認しておきましょう。

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人材開発支援助成金の受給方法

人材開発支援助成金の受給方法

人材開発支援助成金を受給するための手続きを紹介します。

人材開発支援助成金の受給要件

雇用関係助成金は、各助成金の項目に記載されている要件をクリアするほか、共通する以下3つの要件をすべて満たす必要があります。

雇用保険適用事業所の事業主であること
支給申請日および支給決定日の時点で、雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主でなければなりません。

支給のための審査に協力すること
審査には、おもに次の3つの協力が必要です。

1. 審査に必要な書類などを整備、保管していること
2. 審査に必要な書類などの提出を管轄労働局などから求められた場合、応じること
3. 管轄労働局などの実地調査を受け入れること

申請期間内に申請すること
それぞれの助成金が提示する期間内に申請しなければなりません。

人材開発支援助成金の申請方法

2023年6月、厚生労働省の雇用関係助成金を電子申請するページ「雇用関係助成金ポータル」より申請可能になりました。来所が不要であるため、窓口が閉まっている時間でも申請や申請状況の確認ができます(ホームページのメンテナンス時間は除く)。一度入力した情報は以降自動入力されるため、申請書作成の負担も軽減されます。

申請の手順として、まず研修や訓練を企画し申請対象であることを確認し、計画書を作成して提出します。その後、研修や訓練を実施し、支給申請書を提出したら、審査のうえ助成金の支給決定または不支給決定となります。

助成金は融資とは異なり、事前に支給されません。書類などに不備がなく給付される場合も、研修や訓練実施後にその結果報告を含めて申請してから給付となるので注意するとよいでしょう。

キャリアアップ助成金の受給方法

キャリアアップ助成金の申請、受給方法を紹介します。

キャリアアップ助成金の受給要件

助成金の趣旨「事業主の有期雇用労働者らに対するキャリアアップの取り組みを支援することで、有期雇用労働者の雇用の安定や処遇改善を推進する」を十分に理解し、申請するコースの支給対象事業主の要件に該当することを確認します。

全コース共通の以下5つの要件すべてに該当する事業主が対象です。

1. 雇用保険適用事業所の事業主
2. 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている事業主(※)
3. 雇用保険適用事業所ごとに対象労働者にかかわるキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
4. 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況や賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明確できる事業主
5. 計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主

※キャリアアップ管理者は複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。

キャリアアップ助成金の申請方法

キャリアアップ助成金の申請にあたり、まず労働組合などの意見を聞いたうえで各コースを実施する日の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、提出します。

計画届や支給申請に必要な様式は、厚生労働省「申請様式のダウンロード(キャリアアップ助成金)」に掲載されているので利用するとよいでしょう。

支給申請書や添付書類などは、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。

なお、制度の見直しなどがある場合は都度、支給申請様式を改定しています。支給申請書の様式や支給金額は各コースの取り組み日によって変化するので、念のため、提出前に確認しておきましょう。

まとめ

社員育成や生産性向上、ひいては優秀な人材の確保のために研修は欠かせません。

しかし、長引く不況で継続的に人材育成の経費が捻出しづらくなっている企業もあるかもしれません。そんなときは助成金の利用を検討してみましょう。

社員研修で使える助成金は「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」の2種類です。

申請書類の作成などに不安があれば、専門家に相談するのも一案です。各助成金の要件を確認し、申請を検討してみてはいかがでしょうか。

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