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人事考課とは? 人事評価との違いや目的を分かりやすく解説

  • 公開日:2024/01/30
  • 更新日:2024/03/10

人事考課とは組織を構成する個々人の特定期間の仕事の成果やプロセスを、一定の基準により評価、判断することです。

人事考課の結果は適切な人材の評価による、公正な処遇や適切な配置(異動、昇進など)の実現などを目的として活用されています。主な評価観点として、情意考課(規律性・責任性・協調性など仕事への取り組みに対する評価)、業績考課(会社や上司が要求した職務基準に対する評価)、能力考課(会社が定めた各等級〈資格〉における標準的な能力に対しての評価)があります。

人事考課と人事評価の違い

人事考課と人事評価は、社員を評価するという点では共通しており、人事考課が人事評価制度の一部として扱われることや、同じ意味として使用されることもあります。人事考課と人事評価が使い分けられる場合には、人事評価は育成や能力開発、人事異動などを含めた広い範囲における判断を指すのに対して、人事考課は、給与や昇進の判断を指すことが多いです。

人事考課の目的

人事考課の目的は、人材を適切に評価し、その後の活躍や成長につながる昇進・昇格や給与・賞与などの処遇を決めることにあります。そのため、人事考課においては、可視化および透明化された査定基準が設けられ、業務内容の差や人間関係による不公平感を排除することで、公平・公正に実施されます。

人事考課において明確な査定基準を設けることによって、組織は各個人に期待することを社員に理解させることができます。一方、社員は人事考課を通して自分の努力や取り組みが評価され、企業の活動や業績とのつながりを実感することによって、業務へのモチベーションを上げることができます。つまり、人事考課の実施が、企業と社員の相互理解を促し、組織を活性化させる可能性があるのです。

また、人事考課を通して、人的資本を公正に評価して現状を客観的に把握することは、戦略人事や組織開発に役立ちます。

人事考課の3つの評価基準

人事考課を行う際には、業績考課・能力効果・情意考課の3つの評価基準があります。実際の人事考課においては、3つの評価基準から1つの評価基準が採用されるのではなく、3つの評価基準を組み合わせて、多角的に評価する必要があります。

1. 業績考課

業績考課では、各従業員に与えられた仕事の結果や成果を評価します。一定期間の業績や目標の達成率など、数値化された指標を使用するため、客観性や公平性を保ちやすい評価基準です。評価項目の例としては、営業職の社員に与えられた売上目標の達成率や、人事担当者の新卒採用計画の達成度などが考えられます。

立場や職種によって会社や上司から求められる業務内容や期待される成果は異なるため、基本的には従業員一人ひとりに異なる評価基準が適用されます。特に、人事や総務、経理などのコーポレート機能を担う間接部門では、開発や製造、営業と比較して定量的な目標が設定しにくく、事前に成果の定義が明確化されていることが重要です。

2. 能力考課

能力考課では、職務で発揮される従業員の持つ能力を評価します。業務の難易度や外部要因の影響を受けてしまう可能性のある業績考課に対して、成果を生み出すための能力が身についているかどうか、という観点が求められます。

能力にはいくつかの区別があります。実際の業務ですでに発揮されている「保有能力」や、まだ業務においては顕在化していないが今後引き出される可能性のある「潜在能力」、業績や成果、業務遂行のために今まさに生かされている「発揮能力」のうち、すべての能力を評価の対象にする企業もあれば、潜在能力を評価しない場合もあります。

3. 情意考課

情意考課では、業務に対する積極性や責任感など姿勢や、日々の行動などの勤務態度を評価します。主観が入りやすく、従業員の日々の様子を観察する必要があるため、公正な判断が難しい場合もありますが、周囲との協調性や企業のビジョンへの共感にもつながる重要な観点です。

情意考課には「積極性」「協調性」「規律性」などの評価要素があります。被評価者の目立った一面だけを過大評価したり、特徴を見出せずメンバー全員に標準値に近い評価を与えたりすることのないよう、十分な注意が必要です。

人事考課の評価手法

人事考課には、さまざまな評価手法が用いられています。なかでも、360度評価や目標管理制度(MBO)、コンピテンシー評価は、多くの企業で採用されている評価手法です。

360度評価

360度評価とは、被観察者の日常の職務行動を、上司だけでなく周囲の同僚や部下も含めた複数名の観察者が評価回答することです。360度評価によって、被観察者が企業人としての標準的な職務遂行能力を備えているかどうか、またそれが日常で発揮されているかどうかを把握することができます。

360度評価のアセスメントツールの導入では、測りたいものを測れるかという「測定内容」や、回答しにくい記述になっていないかという「品質」、結果が分かりやすいかという「施策設計力・支援力」などをポイントに選定すると良いでしょう。

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目標管理制度(MBO)

目標管理制度(MBO)とは、ピーター・ドラッカーが提唱したManagement By Objectiveの略称で、目標管理制度の1つです。2000年前後から日本企業での導入が相次ぎ、現在約8割の企業が導入済みともいわれています。

MBOでは、各メンバーが上司と個別で相談したうえで目標を設定し、目標に対する達成度に応じて評価が決定されます。上司から一方的に与えられる指示とは異なり、被評価者自身も目標設定に関与することに特徴があります。

管理職のための目標管理制度(MBO)の基本 ~よりよいマネジメントのために~(011)

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは職務や状況において、期待される業績を安定的・継続的に達成している人材(ハイパフォーマー)に、一貫して見られる能力や行動の特性を指します。コンピテンシー評価を導入することによって、従業員のさまざまな能力や行動特性のなかから、より具体的な評価項目を抽出し、評価者の主観や被評価者との関係性に左右されにくい、客観的な評価を行うことが可能になります。

また、自社において優れた成果を出す従業員の思考や行動を評価基準とするため、自社のビジョンなどの価値観と評価の方向性を合わせることができます。一方で、自社独自の評価基準を作成する必要があるため、導入までのハードルが高いともいわれています。ハイパフォーマーの分析の段階からつまずくことも多いため、専門コンサルタントに相談するとよいでしょう。

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人事考課の運用方法と運用時のポイント、注意点

最後に、人事考課の運用方法と、実際に運用する際に注意するべきポイントをご紹介します。

人事考課の運用方法

人事考課では、1. 評価の内容(基準・項目・方法)を決定し、2. 各従業員が目標を設定したうえで業務に取り組み、3. 一定の期間で区切って評価を実施、4. 待遇への反映やフィードバックを行う、という流れで運用されるのが一般的です。

利用される社内の制度としては、従業員の評価の内容を企業ごとに定めた「評価制度」や、評価に応じて役職や権限を分類する「等級制度」、評価の結果や等級に応じて給与や賞与などの待遇が決定される「報酬制度」、次の人事考課に向けたフォローとしてスキルや知識を身につけさせる「研修制度」などがあります。人事考課においては、これらの社内制度が個々で運用されるのではなく、連動しています。

人事考課の結果に納得感を持たせる

人事考課は、従業員の給与や等級などの待遇を決定する重要な判断であるため、必要不可欠な取り組みですが、評価に対する不満を避けるために導入を避けたり、廃止したりする企業もあります。人事考課を運用するうえでは、評価の低かった従業員を含めて、被評価者が納得できる内容であることに注意する必要があります。

納得感のある人事考課は、可視化された評価基準が従業員に正しく伝達されていることが前提です。上司とメンバーの間に認識のずれがあり、正しい判断ができなくなる事態を避けるためにも、目標の共有や、業務遂行上の悩みの解消など、人事考課に関わるコミュニケーションを意識的に取るようにするとよいでしょう。

評価者のアンコンシャス・バイアスに注意する

また、評価者は無意識のうちにバイアスがかかっていないか、常に意識することがポイントです。無意識の思い込みは「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれ、人事考課における評価者など、メンバーに対して大きな影響力を持つ立場のアンコンシャス・バイアスは、人や組織に大きな影響を及ばします。

人事考課においては、

・年齢や性別、学歴などによる先入観がないか
・プライベートでの付き合いが評価を甘くしていないか
・評価期間全体ではなく、評価直前の行動の良し悪しだけで判断していないか

といったポイントに注意するとよいでしょう。

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面談を通して考課結果を伝える

人事考課の結果については、できるだけレビュー面談やフィードバック面談などを通して伝えましょう。特に、被評価者にとって望ましくない結果については、「なぜこのような結果なのか」ということを丁寧にフォローすることが求められます。

フィードバックの伝え方の工夫としては、チームの問題において、部下個人がこれからどのように貢献できるか、何をどう改善すればよいかを一緒になって考えるのがよい、という研究結果もあります。

フィードバックの工夫について詳細はこちら

人事考課のまとめ

人事考課は、適切に人材を評価して、その後の活躍や成長につながる処遇を決めることを目的に行われる、企業とその従業員にとって重要な取り組みです。近年では、待遇が年功序列だった時代から大きく変化したことによって、今回解説した基本的な人事考課に加え、社員のランク付けをなくすノーレイティングや、「達成目標(Objectives)」と目標の達成度を測る「主要な成果(Key Results)」を設定することによって企業やチーム、個人が、全力で同じ重要課題に取り組めるようになる目標管理手法であるOKRを取り入れる企業も増えています。

リクルートマネジメントソリューションズでは、人事制度設計のコンサルティングをはじめ、トレーニングサービスとして人事評価制度をマネジメントに活用する研修を提供しています。また、人事評価の公平性・納得性・客観性を高める補完データとしてのアセスメント・サーベイも提供しています。

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