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導入事例

「祈りの経営」を礎とし、挑戦する風土を促進することで「ダスキンらしさ」を取り戻す

株式会社ダスキン

「祈りの経営」を礎とし、挑戦する風土を促進することで「ダスキンらしさ」を取り戻す
  • 公開日:2014/12/17
  • 更新日:2024/04/20

事例概要

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背景・課題

創業者である鈴木清一氏の掲げた「祈りの経営」(経営理念)を大切にしてきたダスキン。しかしながら、会社規模及び加盟店の拡大、それに伴うリスク管理の副作用として、「ダスキンらしさ」が薄れつつありました。

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検討プロセス・実行施策

社長のメッセージを込めた「経営ビジョンBook」の作成を目的に、初の役員合宿を実施するなど、経営理念に関連するテーマで「対話」する機会を増やし、目線合わせをしながらビジョン浸透を進めていきました。

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成果・今後の取り組み

川柳やトークセッションなど職場・個人単位で経営理念を振り返る機会を増やしつつ、「風土改革委員会」という部門横断型のビジョン浸透プロジェクトもスタート。少しずつではありますが、「ダスキンらしさ」を取り戻しつつあります。

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背景・課題

アイデンティティを失うという危機感

アイデンティティを失うという危機感

私たちは、家庭から店舗・オフィスなどに多彩な商品・サービスで「キレイ」や「快適」を提案するクリーンケアグループと、「ミスタードーナツ」をはじめ新しいスイーツメニュー、食事やドリンクを提供するフードグループを主力事業として、世の中の皆様に喜んでいただける企業を目指しています。
かつては、日本でいち早くフランチャイズシステムを導入するなど「挑戦する姿勢」や、創業者が作った経営理念である「祈りの経営」をはじめとするダスキンの哲学が、世の中から注目されたこともありました。働きさん(社員※)も「祈りの経営」をとても大事にしていて、「これは『喜びのタネまき(世の中の人に喜ばれる価値を提供すること)』になっているのかな?」と、独自の共通言語でワイワイと会社を良くするための会話をしていたものです。

しかしながら、近年では職場でこのような会話が聞かれることも少なくなり、「『ダスキンらしさ』が少しずつ薄れてきた」、「挑戦するよりも失敗を避けるほうに意識が向いているのでは」といった声があちこちで聞かれるようになりました。

「祈りの経営」は、ダスキンのアイデンティティだと思っています。ですから、私も含め、昔を知る世代の人たちは「このままではダスキンの良さがなくなる」という危機感を抱くようになっていました。個人的には広報を担当していたときは、働きさんが「祈りの経営」を振り返るために社内報を復活させたり、人事にいたときは他社の理念浸透の事例を学び、自社の研修プログラムに反映させたりと、そのときできることをしてきたつもりです。(遠藤様)

※ダスキンでは「傍を楽にする人」という考えから、社員のことを「働きさん」と呼ぶ

「ダスキンらしさ」を取り戻したい

「ダスキンらしさ」を取り戻したい

さまざまな場面で「ダスキンらしさ」を取り戻したいと訴え続けるうちに、経営企画部に異動する機会を得ました。いよいよ「祈りの経営」の浸透、すなわち理念浸透に向けて、具体的な行動を起こすチャンスが訪れたというわけです。

そこで経営理念の浸透について、組織開発のプロであるリクルートに相談しました。コンサルタントのお二人は、他社における同様の経験・事例などの情報提供や施策全体のプランニングはもちろんのこと、心の支えにもなってくれて、大変頼もしい存在です。「こんなことが必要なんじゃないか」「あんなことをすれば盛り上がるんじゃないか」とディスカッションしているうちに、施策もブラッシュアップされますし、前向きなパワーがわいてきますよね。(遠藤様)

「祈りの経営」を背骨として、経営ビジョン実現を推進している当社の組織開発に関しては、これまで遠藤が情熱を持ってあの手この手で会社に対して提案してきました。私も考えている方向性や課題感が遠藤と同じだったので、「一緒に施策を進めていこう」と応援していました。遠藤の言う通り、「祈りの経営」という経営理念はダスキンのアイデンティティだと思っていますし、「本来のダスキンらしさ」を取り戻し、経営ビジョン実現に向けて挑戦する風土を促進するという彼女の考えにも大賛成でした。また、理念浸透の提案こそが、ダスキンらしい「挑戦」でもあるのです。(写真:藤谷様)

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コンサルタントの声

個々のベクトルが合えば、組織は見違えるほど成長します
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 担当コンサルタント

組織開発とは、組織のなかに存在する力や主体性を引き出し、人と人との関係の変化や相互作用で組織を変化させていくという考え方です。その「力」や「主体性」を引き出すための方法として、ダスキン様では「理念浸透」に取り組んでいらっしゃいます。

もともとダスキン様は、愛社精神をもったパワフルな働きさんが大勢いる会社です。「ダスキンらしさ」が薄れつつあるように感じられるのは一時的に歯車がうまくかみ合っていないだけで、そこを少し調整すれば、組織が見違えるように成長するはずだと信じています。

しかしながら、組織開発は短期間で目に見える成果が出るものではありません。そのため、施策が社内で承認されなかったり、承認されても継続しなかったりする企業も少なくありません。ダスキン様の成功のカギは、遠藤様を中心とする経営企画部の方々があきらめずに訴え続けていらっしゃったこと。そんな姿を間近で見て、「応援しないわけにはいかない」という思いを抱き、私は今、伴走させていただいています。

もちろん、気持ちだけではなく、研究機関から集めたアカデミックな情報や多種多様な企業の成功事例も活用しながら、これからも弊社にしかできない提案と支援を続けていきたいです。

検討プロセス・実行施策

社長の思いを知ってもらいたい

社長の思いを知ってもらいたい

「祈りの経営」の浸透施策(理念浸透施策)の第一歩として、現社長のメッセージである経営ビジョンを届ける「経営ビジョンBook」という冊子の作成に取りかかりました。
社長は判断が早く、言葉も端的であるため、人一倍クールに見られがちだったので、誰よりもダスキンのことを考えている熱い思いや、「人となり」を正しく知ってもらうねらいもありました。

しかも、社長のビジョンというのは、「祈りの経営」をベースにしているので、それを誤解なく届けることは、理念浸透にもつながるというわけです。実のところ、なかなか社内の承認が下りず苦労したのですが、上司の後押しもあり、何とか「経営ビジョンBook」の作成開始にこぎ着けました。

社長が描いている経営ビジョンは「世界一 ひとにやさしいダスキン」。これは一体どういうことなのかを、働きさんたちに伝えるために、まず役員クラスの目線を合わせる必要もありました。そこで1泊2日の役員合宿を開催。リクルートにファシリテーションをお願いして、「ダスキンとはどんな会社なのか」「世界一やさしいとはどういうことなのか」など、全員で徹底的に話し合いをしたのです。夜遅くまで討議した結果、「自分たちが若かった頃は、もっと上司が挑戦させてくれていた。働きさんをもっと支援する義務がある」「もっと対話が必要。しっかり耳を傾けていかなければ」など、社長が描く経営ビジョンの理解はもちろん、「祈りの経営」を振り返り、組織をより元気にするための重要なキーワードも飛び交いました。(写真右:遠藤様)

役員間、部長間でそれぞれ月1回の「対話」の時間を設ける

役員間、部長間でそれぞれ月1回の「対話」の時間を設ける

合宿で出てきた課題の1つ「対話不足」を解消すべく、新たに役員間、部長間で対話の時間を設けました。約1年続けた結果、役員間では早朝に集まってミーティングを開くようになりました。部長間対話も私たち事務局が、「働きさんのモチベーションをどのようにアップさせるか」など、毎回テーマを提供しつつ運営しています。「もっと話したい」と前向きな意見が増え、時間も前期までの30分から90分へと延長しています。(遠藤様)

理念浸透施策を進める上では、現場の現状を把握した上での企画立案が欠かせません。そこで私たちは現場の声を集めるために、各地の事業所を訪問しました。飲み会などにも参加させてもらったのですが、「ダスキンってこんなに温かい会社だったのか」と感動する場面がとても多かったですね。そもそも、心意気を持って日々の仕事に取り組んでいる仲間の存在を再認識し、とても心強く感じました。理念浸透を通じて、みんなのベクトルを合わせていく取り組みはまだ始まったばかりですが、取り組みへの関わりが深まるにつれ、私自身、より一層会社を好きになっています。世代関係なく全国の働きさんが、再びダスキンを見つめ直す機会を経れば、きっと私と同じようにダスキンをもっと好きになってくれると思います。(写真:阿部様)

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コンサルタントの声

改革は「みんなごと化」と「会社ごと化」が鍵になる
株式会社リクルートコミュニケーションズ 担当インナーコミュニケーションコンサルタント

社員一人ひとりが理念や戦略に共感し、「自分ごと化」することは重要です。しかし、職場の中でその思いを共有し具体化しあう「みんなごと化」、それを会社が認め支援する「会社ごと化」の3つがそろわないと、改革は結局足踏みしてしまう。そう最近感じています。
ダスキン様では、経営企画主導で進み始めた活動を、本社の各部門や現場の若手を巻き込んだ部門・階層横断の風土改革委員会に発展させるお手伝いをさせていただきました。一方的な「浸透活動」ではなく、同じ想いに共感する人を増やす「みんなごと化」を進め、それを中期経営計画の一つの柱に位置づける「会社ごと化」まで粘り強く展開されていくパワーには本当に頭が下がります。
会社を愛する思いをつなぎ、個々人のwillを引き出すストーリーを共に描きながら、「世界一 ひとにやさしいダスキン」の実現にこれからも関わっていきたいです。

成果・今後の取り組み

理念がサービスに命を吹き込む

理念がサービスに命を吹き込む

ここまでの取り組みを通じて、少しずつではありますが、「社会のなかで継続的に支えられていく会社であるために、もう一度、自分たちの大切なものを振り返ってみよう」という思いをもった働きさんが増えたように感じています。

やはり当社はサービス業ですので、「祈りの経営」に基づいた考え方や行動が何よりも大切になります。お客様のことを思って、お客様のために物事をさせていただくわけですから、現場で実際にサービスを提供する働きさんにまで浸透していなければなりません。サービスがダスキンの理念に則ったものでなかったら、世の中においてよって立つところを失ってしまいます。会社の戦略についてもそう。「祈りの経営」の裏付けがあってはじめて、ダスキンらしさや強さが出てくると、みんなが再確認しているところです。(藤谷様)

もっと「喜びのタネまき」を

もっと「喜びのタネまき」を

役員、部長の対話による理念浸透を進めつつ、職場・個人単位では参加型の施策を実施しています。具体的には、「経営ビジョン」に則った行動を表現する「川柳」の募集や、「ふらっとフラットセッション」という職場での対話などです。日本全国の拠点間で感謝の気持ちを届け合う「メッセージリレー」など、「ダスキンらしさ」をみんなが感じていた時代の取り組みも現代風にアレンジして復活させました。こうして上からも下からも理念浸透を図ることで、若手もベテランも「祈りの経営」に基づいた言動や行動が、少しずつ増えてきたように感じています。

とはいえ、まだまだ満足できる状況ではありません。横の連携を生み出すための「風土改革委員会」を立ち上げたのはそのため。部門の枠を越えた取り組みが広がれば、もっと「らしさ」が生まれるはずだからです。例えば、本社部門からの通達文にもっと「ダスキンらしさが滲み出る言葉」が使われるようになれば、働きさんの耳の傾け方も違ってくると思います。人事と連携すれば、教育研修も、より現状にマッチした「ダスキンらしい」ものに進化させられるかもしれません。

そして、ゆくゆくは一人ひとりの働きさんが、お客様をはじめとするすべての個を尊重しながら、物事の本質を見据えて行動できる、そんな会社になってほしいのです。言葉で言うほど簡単ではないかもしれませんが、この積み重ねが世の中のためになるし、ダスキンの存在価値につながると信じています。

ポルトガルでは信号待ちの歩行者の安全を守るために、「踊る信号機」を作ったと聞きました。赤信号で待っているとき、「止まれの人」が踊りながら、歩行者を楽しませるというもので、信号無視が大幅に減ったそうです。この「踊る信号機」の事例は、世の中の人に喜ばれる価値を提供したという意味で、私たちの言葉で言う「喜びのタネまき」そのもの。問題が起きないように縛るとか監視するとかではなく、解放的で楽しい選択肢で、本質的な課題と向き合う。そんなことができる会社を、ダスキンの原理・原則に基づきながら、作っていきたいと思っています。(遠藤様)

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対象者の声

河相亮様と田中千香様の顔写真

対話を通じて「誤解」に気付き、「表面だけのやり取り」を反省しました
株式会社ダスキン 商品検査センター 信頼性・使用価値試験室 河相 亮 様(写真右)
株式会社ダスキン 商品検査センター 信頼性・使用価値試験室 田中 千香 様(写真左)

当社では部門内での対話活動を「ふらっとフラットセッション」と呼んでいます。しかし私たちは、部門内のコミュニケーションはとれていたので、新しいチャレンジとして、部門を越えたトークセッションを企画しました。商品検査センターは平たくいえば、ダスキンのあらゆる商品の安全性や使い勝手を評価している部署。多くの事業部とやり取りしていますが、何をしているところか、なかなか理解されにくいのですね。
時に私たち商品検査センターは、商品・サービスに問題があれば問答無用で指摘しますので、「重箱の隅をつついてくる部署」のようなイメージをもっている人もいると思います。できれば、正しい役割と機能を知ってもらった上で「ぜひ頼みたい」と思われるようにしたい。そんな思いで私たちは、商品検査センターを知ってもらう場を用意しました。
「休憩がてら寄っていきませんか?」という感じで、各部署にメールで案内して、顔合わせを兼ねて行ったのがセッションの第1回。2回目、3回目ではお互いの顔も、得意分野も分かったので、「じゃあ次は、一緒にこんなことしましょう?」という話し合いができるようになりました。ふらっとフラットセッションを通じて、たくさんのつながりができて、今では何かあれば気軽に声をかけてくれる人も増えています。
対話を通じて部署間にあった誤解にも気づきました。依頼する側は、こちらにどんな設備があるか知らないので、何ができるのか具体的にイメージできていなかった。またこちらも、「人に聞く前に自分で調べてよ」と思っていたことが、向こうでも調べたけれども、情報に対する良い悪いの評価ができないから、実はその部分で助けを求めていたとか、いろいろ出てくるわけです。「表面だけのやり取りだったんだな」と反省しました。
そうしたことを踏まえて、「世界一 ひとにやさしいダスキン」の考えに基づき、他の事業部に対して、どのようなことをしたら「喜びのタネまき」になるのか、商品検査センターのみんなで考えていきたいと思います。

取材日:2014/12/17

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企業紹介

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