【新サービス】マネジャーの早期育成を実現する『M-BT』はなぜ生まれたのか? 今、なぜマネジャーはシンドイのか?
――「管理職を取り巻く3つの変化」を乗り越える方法

「マネジャーがこんなに大変だとは思わなかった」「マネジャー時代はとにかく辛かった」。このような声を最近よく耳にします。そうした背景を踏まえ、私たちは活躍するマネジャーの基本を、実践を通して学ぶWEB併用型マネジメント研修『M-BT(Management Basic Training)』を開発しました。その開発に携わった4名のメンバーが、今、なぜマネジャーはシンドイのか、どうすればやりがいを持って前向きに取り組めるのか、といったことを語り合いました。

開発メンバー紹介
●石橋慶/開発リーダー(ソリューション統括部事業開発部トレーニンググループ)
●齋藤芳明/人材開発トレーナー
●山田香/IT基盤担当(ソリューション統括部事業開発部アセスメント技術グループ)
●片岡綾乃/営業担当(営業統括部営業企画部営業支援グループ)


「WEB学習」「集合研修」「職場実践」の3つを統合した新サービス『M-BT』とは?

――最初に、今回紹介する新しい管理職研修『M-BT』とは何かを簡単に教えていただけたらと思います。

石橋:M-BTは、企業のマネジャーの早期成長を支援するリクルートマネジメントソリューションズの新サービスです。最大の特徴は、「WEB学習」「集合研修」「職場実践」の3つを統合し、3カ月にわたって受講者に伴走、継続的にサービスを提供することです。また、LMS(Learning Management System)という「IT基盤」がサービス全体を支えている点も大きな特徴です。M-BTのサービス詳細については、こちらでお伝えしていますので、興味のある方はぜひご覧いただけたらと思います。

以前よりマネジメントが難しくなり、会社からの期待も高まっている

――なぜ新しい管理職研修としてM-BTを生み出す必要があったのでしょうか?

石橋:一言でいえば、マネジャーという仕事が以前よりずっと難しくなり、負荷が大きくなったからです。実際、管理職を経験した皆さんにインタビューすると、「マネジャーをやってみると、すごくギャップがあった。こんなに大変だとは思わなかった」「今はプレイヤーに戻ったけど、マネジャー時代はとにかく辛かった」といった声が本当に多いのです。

そこには大きく3つの変化があります。1つ目は「環境の変化」です。ひと昔前の日本企業では、課長の前に後輩の育成などのプレマネジメント経験を積んだ上で、課長へと昇進していたのですが、現在は組織のフラット化によって、係長やそれに近いポジションが減り、事前にマネジメントの基礎を培う機会が少なくなっています。また、今やマネジャーのほとんどがプレイングマネジャーで、日々プレイヤーとしても忙しくしています。その結果、マネジメントについて学んだり、考えたりする時間が十分に取れていません。マネジメント研修での学びを反映する余裕もありません。さらに、多くの職場で雇用形態などの多様化が進んだり、コンプライアンスなど気をつけるべきことが増えたりして、マネジメントそのものがどんどん複雑になり、難しくなっています。

齊藤:トレーナーとして、マネジメント集合研修の現場でよく耳にするのは、「どうしても部下に任せきれない」「部下の成長を待っていられない」という声です。本来、部下の育成はマネジャーの重要な役目の一つで、部下一人ひとりの主体的な思考や行動を促す必要があります。しかし一方で、今のマネジャーは失敗が許されない状況に立たされていることが多く、その上、自分がプレイヤーでもあるため、部下の仕事を巻き取ってしまいがちなのです。それから、「部下に細かく気を使うので大変だ」という声も多いですね。
片岡:私も「なかなか部下を叱れない」とよく聞きます。以前に比べると、年上の部下が多かったり、納得できないと簡単に辞めてしまう若手・中堅社員が増えていたりすることが影響しているようです。

石橋:2つ目は「マネジャー自身の変化」です。特に最近よくいわれるのは、「中堅社員の小粒化」です(図表1)。これは先ほどのプレマネジメント経験の不足も一因として考えられますが、任せられる仕事が以前より細分化してしまっていることも背景にあります。その上、昇進意欲は決して高くありません(図表2)。今やマネジャーには昔ほどの権威を認めることは難しく、「ただ辛いだけで魅力のない仕事だ」「マネジャーになるくらいなら、専門家としてキャリアアップしたい」と考える若手・中堅社員が、決して少なくないのです。
山田:最近は「複線型キャリアパス」を採用する企業が増えていて、ラインマネジャーになる道のほかに、スペシャリストとして腕を磨き続ける道も一般的になりつつあります。つまり、必ずしもマネジャーにならなくてもよいわけです。そのため、マネジャーのなり手がさらに少なくなっている面もありますね。

石橋:3つ目は、企業の「マネジャーへの期待の変化」です。図表3のデータから分かるのは、20世紀の経営陣や人事は「マネジャーは、まず目標に向かって意欲的に行動してほしい。その上で、問題を見極めて提案してくれたら嬉しい」と考えていたのですが、近年は「マネジャーは、広い視野でものごとを捉え、その上で、上位者に対して自らの意思・戦略を明確に出せる存在であってほしい」と考える経営陣・人事が増えたということです。また、「マネジャーには、できれば最初から成果を出してほしい」という声もよく耳にします。


つまり、新任マネジャーの能力やモチベーションと、仕事内容や会社の期待とのギャップが、どんどん大きくなっているのです。そのため現在は、会社の十分なサポートがない状態だと、適応できずにドロップアウトするマネジャーが次々に出てきてしまいます。現状、新任マネジャーの5人に1人がマネジメントに適応できていないという調査結果がありますが、今後この比率はさらに高まるでしょう。一方で十分にマネジャーの育成支援ができている企業は決して多くありません(図表4)。この現状を変えたいというのが、M-BT開発の大きな動機の1つです。


立教大学の中原淳教授は、私たちのインタビューのなかで、「メンタリングの機会」と「フォローアップ研修」の2つを会社が提供することが重要だ、とおっしゃっていました。「この2つは、実務担当者とマネジャーの段差を小さくする取り組みです。この段差さえ小さくなれば、新任マネジャーのトランジションはもっとスムーズになるのです」(中原教授・『トランジション・デザイン・ブック』内のインタビューより)。

手前味噌ですが、私たちのM-BTは、まさにこの2つを兼ね備えたサービスであり、現代のマネジャー育成が抱える課題を解決できるマネジャー育成プログラムだと自負しています。

研修中心の発想を捨て、学習をリ・デザインする

――開発背景には、他にどういった世の中の変化があるのでしょうか?

齊藤:M-BTが生まれたもう1つの理由に、実は「働き方改革」があります。数年前まで、管理職を対象とした集合研修は、2日間にわたって朝から晩までやっていました。しかし、労働時間短縮によって、研修にも「時短」の流れが起きており、今は2日間とも、9時から17時までとなっています。つまり、働き方改革によって、マネジメント集合研修の時間を短くせざるを得なくなったのです。当然、どこかを省略するほかにありません。そこで、より少ない時間で集合研修の成果を高め、実践につなげていくために、「ACT1/WEB学習」のフェーズを作り、基礎知識は事前に学んできていただいて、「ACT2/集合学習」で、その学びを深める「反転学習」を行うことにしたのです。

山田:そのWEB学習を実現する上で必要だったのが、私が開発を担当したIT基盤「LMS」です。すでに世の中ではeラーニングが一般的になっており、自分の好きな時間に好きな分だけ学びたいという受講者が増えています。WEB学習の導入は、そうした受講者の皆さんの想いや環境の変化に合わせた側面もありますね。

齊藤:WEB学習だけでなく、「ACT3/職場実践」にもLMSをおおいに活用しています。受講者の皆さんには、集合研修で立てた「アクションプラン」に従って、どういう打ち手を実行したのか、チームや部下にどういった変化が起きているのかを、LMSに入力していただきます。それを見た上司が、定期的に受講者の皆さんをフォローしていく仕組みになっています。この仕組みを通じて、皆さんに「経験学習サイクル」(図表5)を回していただくのです。
経験学習サイクルとは、「経験(やってみる)→省察(振り返る)→概念化(言葉にして何を学んだかを明らかにする)→実験(学びを応用してみる)」の円環で、このサイクルを回していくと経験から効果的に学べるといわれています。M-BTでは、自分なりの打ち手をやってみた後、LMSを使って振り返り、概念化を進め、そこで得たものをさらに応用して、新たな実践につなげていただくというわけです。
 

石橋:言い換えれば、LMSを構築したことで、これまで別々になっていたWEB学習・集合研修・職場実践を一本の線でしっかりとつなぐことができたのです。

山田:さらにいうと、WEB学習、集合研修、職場実践を同じインフラで支え続けることで、ログデータなどをどんどん蓄積できる点にも大きな価値があると考えています。数年後には、LMSのビッグデータが、人事や受講者の皆さんの大きな助けになるはずです。あと、特に職場実践のとき、LMSに受講者の上司の皆さんを巻き込んでいることもポイントの1つですね。

片岡:それは人事の方をサポートする上でも、極めて重要なことです。なぜかというと、これまで上司の皆さんを職場実践に巻き込むには、人事の方々が上司ガイダンスを開いたり、上司の皆さんと細かく連絡を取ったりしなくてはならなかったからです。ところが、M-BTでは、人事の方々が手をかけなくても、効率的・効果的に上司を巻き込んで職場の実践を促せるのです。人事の皆さんも最近はどんどん忙しくなっていますから、できるだけ手間のかからないサービスを求める傾向にあります。実際、M-BTの「手軽さ」は、多くのお客様に喜んでいただいています。

マネジャーには職場のことを共に考える仲間がいた方がいい

――「ACT2/集合研修」について、詳しく伺いたいです。

齊藤:M-BTの集合研修では、「やりたい」「やれそう」と思ってもらえるような、具体的な実践の道筋(アクションプラン)を立てていただくことにフォーカスしています。

また、「受講者同士の相互作用」も大切にしています。そのため、2日間にわたって、ずっと3人もしくは4人1組のグループで研修を受けていただきます。なぜなら、互いの仕事内容やマネジメントの状況などを深く共有し合い、アドバイスし合っていただくことが重要だからです。少グループで話し合うメリットは、「Aさんの抱える問題は、自分の問題と似ている」「Bさんのやり方は、自分のマネジメントの参考になりそうだ」といったことを頻繁に感じていただけることにあります。お互いの経験を共有し、追体験していくと、受講者の引き出しが2倍、3倍になっていくのです。

山田:確かに、受講者のコメントでは、「集合研修で、受講者同士で話し合ったのが、自分にとって大きな学びになった」という声がとても多いです。

石橋:何人かで話し合ったり、考えたりすると、一人で考え込むよりも課題解決の道筋が見えやすくなることを知っていただくこと自体も、大きな価値だと思います。マネジャーはどうしても一人で悩みを抱え込みがちですから。M-BTをきっかけにして、周囲に相談する習慣を身につけていただけたら嬉しいです。マネジャーには、職場のことを共に考える仲間がいた方がいいのです。


山田:それにしても、9時から17時までの2日間で、具体的な実践の道筋まで持ち帰っていただくのは、トレーナーにとって大変なことなのではないでしょうか?

齊藤:確かにそのとおりで、決して簡単ではありませんが、それでも受講者の実践の道筋が抽象的で実行に移せないものになってしまったら、私たちの負けだと思っています。私がトレーナーとして一番気をつけているのは、短い時間のなかで、受講者ご自身の想いをいかに引き出すか、実践の道筋にいかに想いを込めていただくか、ということです。その意味で、私たちRMSが大切にするスタンスは以前から変わっておらず、「答えは本人のなかに」あり、「動ける力は本人が持って」いて、私たちはそれを引き出すのがミッションなのです。

――改めて、RMSの強み、M-BTの強みとは何でしょうか?

石橋:1つは、私たちの「マネジメントに関する知見」や「研究成果」があらゆるところに入っていることです。これまでの実践や組織行動研究所の研究によって、私たちは、「マネジャーはどういったことに悩みがちか」「どのようなマネジャーが苦労する傾向にあるのか」「マネジャーが壁を乗り越えるにはどうしたらよいのか」といったことを熟知しています。これは確実に優位性につながっています。

齊藤:もう1つは、トレーナーが中心となって、「受講者と共に場をつくっていくこと」です。私たちは決して、予定調和の研修を行いません。受講者一人ひとりと深く関わりながら、その場の流れに合わせて、いつも一度限りの研修を用意していくのです。これも、トレーナーが長年マネジャーの皆さんと向き合ってきたからできることだと思います。というのは、受講者と深く関わるには、一人ひとりの感情に触れていく必要がありますが、これはけっこう怖いことなのです。一つ間違えれば、場全体が壊れてしまい、研修が台無しになってしまうかもしれないからです。しかし、私たちは勇気を持って、受講者の感情に触れていきます。これは簡単にできることではないはずです。

マネジメントの仕事に誇りとやりがいを感じるマネジャーを増やしたい

――最後に、M-BTの今後について教えてください。

山田:LMSはまだまだ磨き上げる余地がいくつもあります。特に、職場実践をさらに手厚くサポートできるようにしていきたいと考えています。

石橋:WEB学習のコンテンツをもっと充実させたいという想いもあります。例えば、一人ひとりの悩みに応じたコンテンツを提示するといったことも可能だと考えています。

片岡:今日まさに、お客様に「LMSを、もっとインタラクティブでソーシャルなシステムにできませんか?」と言われました。

山田:検討しましょう。乞うご期待ですね。

齊藤:私たちの調査では、マネジャーの約20%は「マネジャーになって学んだことはない・わからない」と答え、約12%が「忍耐・我慢」と答えています(図表6)。これは本当にもったいないことです。本来、マネジャーには学ぶ機会が山ほどありますし、マネジャーが身につけられる「プロデューサースキル」は、どこで何をするにも役立つ重要な能力なのですから。M-BTを受講する3カ月で、ご自身の変化・成長を少しでも実感していただけたら、それが今後の大きな財産になるはずです。ぜひご自身なりの学びを得ていただきたいと思います。
 

石橋:いずれにしても、どうやったら「マネジメントってやりがいがある」「マネジャーは楽しい!」と思っていただけるかを、みんなでもっともっと追求したいですね。


※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。



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