- 公開日:2023/02/06
- 更新日:2024/05/16
コロナ禍における採用・就職活動は、2021年卒以来4年目となった。企業の採用意欲は、コロナ禍前の水準には戻っていないものの回復傾向が見られ、新卒の売り手市場傾向が進んでいる。コロナ禍を経て、選考フェーズに応じた対面とオンラインの使い分けも定着し、採用・就職活動にも変化が生じているなか、採用コミュニケーションにおける新たな問題が表面化しつつある。そのような状況を踏まえ、企業は学生とどのようにコミュニケーションを取るべきなのだろうか。
本記事では、2023年卒を対象に実施した調査から見えてきた昨今の学生の傾向を紹介しながら、新たに生じている問題や採用のあるべき姿、採用時の望ましいコミュニケーションのあり方をお伝えする。
■ 調査
本記事では、2023年卒に向けて就職活動を行った全国の大学4年生、修士2年生、計1316名に対し、2022年7月1日~7月13日に実施した「2023年新卒採用 大学生の就職活動調査」の結果を基に解説する。調査は、2023年卒業予定者の就職活動の実態を明らかにすることを目的とし、就職活動の実施時期、活動量、応募動機、就職にあたって重視することなどに関する質問について、回答いただいたものである。
調査概要
昨今の学生の傾向
始めに、調査から見えてきた昨今の学生の志向・価値観の変化を紹介する。
学生が仕事に求めることTOP3は変わらず、「安定」「貢献」「成長」(図表1)
学生が仕事に求めることは過去7年で見ても順位に大きな変化はなく、仕事に安定・安心を求める傾向は変わらない。
<図表1> 仕事に求めること(上位3つまで選択)
あなたの「仕事に対する価値観(仕事にどのようなことを求めるか)」について特に重要だと思うもの上から3つを選択してください。
※志望している、または入社予定の企業についてではなく、あなた自身の考えに近いものを回答してください。
※あてはまるものがない場合でもお気持ちに近いものをお選びください。
社員との接点量の多さや親密さだけでは志望度向上につながらない(図表2)
学生の志望度が高まる要因1位は、2022年卒に引き続き「自分がこの企業で働くイメージを持つことができた」であった。ここ数年の全体傾向としては、情報を十分に得られること、疑問解消ができること、採用活動の進みの速さ、自分の状況を踏まえたアプローチだと感じさせる対応が支持されている。一方で「より多くの社員と接する機会を設けてくれた」「接点のあった人事・社員にはお世話になったと感じる」の選択率は低下している。
<図表2> 就職活動中の志望度向上に特に影響が大きかったこと
以下の事柄のうち、応募企業への志望度向上に特に影響が大きかったものを上位3つまでお答えください。
※あてはまるものがない場合でもお気持ちに近いものをお選びください。
「就社」ではなく「就職」の意識が高まっている(図表3)
最終的な内定承諾の決め手として、「やりたい仕事(職種)ができる」ことが最も重視されている。また、「勤務地」の重視度も高まっている。2023年卒では「育成に力を入れている」「入社後のキャリアをイメージできる」の選択率も上昇していることが分かる。「社員や社風が魅力的」「制度や待遇」「業績が安定」は上位に挙がっているものの、選択率は年々低下している。
<図表3> 内定承諾の最終的な理由
あなたが入社を決めた企業の内(々)定を承諾した理由はどのようなことでしたか。以下のそれぞれについて、あてはまると思うものを最大3つまで選択してください。また、なかでも最も重要だったものを1つ選んでください。(グラフは最も重要だったもの)
採用コミュニケーションをめぐる新たな問題
上述のとおり、昨今の学生は安定を求める気持ちが強く、仕事内容や働く環境、成長に対して見通しを持ちたいと考える傾向がある。加えて、コロナ禍において非対面の選考が増加したことにより、社風や社員の魅力が伝わりにくく、仕事内容や勤務地の重要度が高まっているといえるだろう。採用をめぐるコミュニケーションのなかで、「自分にとって有用な情報が得られるか」「自分を大事にしてくれているか」を敏感に感じ取っていることも昨今の学生の特徴である。
そうした学生の志向・価値観の変化に対応し、企業側は、職種・勤務地・働き方を特定した「ジョブ型」の要素を取り入れるなど、採用方法を模索している。しかし、職務内容や勤務地、労働時間を限定しない従来の「メンバーシップ型」の考えが依然として残っているのも事実である。このことが、企業と学生のコミュニケーションのズレを生む要因になる可能性がある。
また、学生の志向には一定の傾向が見られるものの、どのような理由でその志向を大切にしているか、その理由をどの程度明確に把握しているかには個人差がある。そのため、採用コミュニケーションでは、学生の自己理解の度合いや本人の真意を確認することが大切になる。企業としても、社員の育成に対する考え方を学生に説明することが必要であろう。いずれにしても、表面的なコミュニケーションを取ってしまうと、企業も学生も判断を誤る恐れがでてくるのである。
※配属ガチャとは、新卒が配属先を選べず、どんな部署に配属されるのかが分からない状況のことをソーシャルゲームのガチャに例えたもの
採用のあるべき姿とは
企業の採用活動のゴールは採用人数を担保することではなく、その先にある。採用した人材が入社後定着・活躍し、組織が強化されることこそが、目指す状態といえる。そのためには、学生と企業の相互理解が欠かせない。採用・就職活動の過程で、企業と学生がお互いに感じる魅力、期待、不安、懸念などを誠実に伝え合い、納得感を持って採用・入社に至ることが重要である。
昨今は変化が激しいなかでも成果をあげ続けるため、従業員のエンゲージメント向上・自律性向上が求められる。しかし、採用時に十分なコミュニケーションが取れずに企業と学生の相互理解が不足すると、内定辞退、早期離職、メンタル不全、活躍の停滞などの諸問題を引き起こすことにつながる。採用活動の過程において、学生とどのようにコミュニケーションを取るかが、入社後にも影響を及ぼすのである。
採用・就職活動における望ましいゴール状態
入社後活躍につながる採用時のコミュニケーション
学生が納得感を持って入社し、入社後活躍へつなげるためには、採用時のコミュニケーションが重要であることをお伝えした。なかでも効果的なのは、企業から学生への“フィードバック”である。
コミュニケーションの鍵を握るのは、企業から学生への“フィードバック”である。ここに、入社時の情報提供が学生の納得度に与える影響について示したデータがある。入社予定先に納得している学生は、それ以外の学生よりも、ネガティブな情報も含めた現実主義的な情報開示(RJP:リアリスティック・ジョブ・プレビュー)を受けたと感じている(図表4)。また、フィードバック(企業からの人物像の印象や評価を伝えられること)に対する印象を聞いてみると、約7割の学生は良い印象を持っていることが分かった(図表5)。そのため企業には、学生の特徴を踏まえたうえで、自社でどのように力を発揮できそうか、入社してから求められそうなことは何かなどを、誠実に伝えることをお薦めしたい。
<図表4> 入社時の情報提供が納得度に与える影響
<図表5> 入社時の情報提供が納得度に与える影響
採用担当や社員からあなたの印象や評価について伝えられる(フィードバックを受ける)ことについて、どのような印象を抱きますか。
最後にフィードバックのポイントをお伝えする。
フィードバックのステップは、「人物像のフィードバック」「情報提供」「働くイメージの提示」の3つに分けられる(図表6)。鍵を握るのは、学生の強みや持ち味、大切にしている価値観・志向をしっかりと理解し、どのように捉えたかを伝えることである。そのうえで、入社後に求められるスタンスや行動を提示することで、学生にとっての納得感を醸成することができる。また、こうしたコミュニケーションを通して学生の自己理解と社会人としての自覚が促されるという副次的効果も期待することができる。
フィードバックの活用によって企業と学生双方が納得感を高め、よりよい採用・就職活動が実現されることを祈っている。
<図表6> フィードバックのポイント -3ステップ-
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