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調査レポート

今年の新入社員は何を求めているのか?

2020年 新入社員意識調査

  • 公開日:2020/06/29
  • 更新日:2024/03/19
2020年 新入社員意識調査

今年の新入社員は、仕事をする上で何を重視し、また、上司や先輩にどのような関わりを求めているのでしょうか? 弊社が実施した、以下2つの意識調査の結果の概要をお伝えします。

■調査1
本記事で主に述べている調査は、2020年3月2日〜5月14日に弊社の新入社員向けのeラーニングサービス「ビジネスマナー」や「ビジネスパーソンの基本行動とスタンス」の受講者1680名(300名未満企業比率:21.4%)に対して、仕事をする上で重視するキーワード、職場・上司・先輩に求めること、スタンスに対する意識について回答いただきました。

■調査2
補足する調査として、2020年3月24日〜4月2日に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の当該期間での受講者350名(300名未満企業比率:63.1%)に対し、上司や職場に期待すること、期待や不安などに関する質問について、あてはまるものを最大3つまで選択する形式で回答いただきました。
 

鍛え合いや競争よりも、互いに助け合い成長していく職場が理想
ファーストペンギンは避けたい……?
不動の人気である「傾聴・丁寧な指導・認知」の上司像。 求められる「フィードバック」とは?
最後に

鍛え合いや競争よりも、互いに助け合い成長していく職場が理想

はじめに、今年の新入社員は、仕事をするうえで何を重視しているのかを見てみましょう(調査1)。

図表1-1:調査1
図表1-2:調査1

図表1にあるように、自分の「成長」と共に「貢献」というキーワードが共に30%超え、続いて「やりがい」や「仲間」が続く結果となりましたが、「達成」「創造」「仕事以外」「金銭」「ビジョン」「競争」というキーワードは10%以下の選択率になりました。

最下位だった「競争」というキーワードに関連して。図表2の求める職場について「互いによきライバルとして競い合う」に、「あてはまる」と回答した割合が42%であることや、下段の図表3の結果から「皆が1つの目標を共有している」ことや「お互いに鍛え合う」という選択肢がこの10年で下降の一途をたどっていることは納得できます。

図表2:調査1

また、図表2で「あてはまる」の選択率が1位だったのが「困っているときは互いに助け合う」(89%)で、図表3の「お互いに助け合う」という項目もこの10年間で20ポイントも上昇しています。冒頭で述べた、仕事をする上で重要だと思うキーワードとしても、2位に「貢献」がランクインしており、互助の精神が新入社員に支持されているのがよく分かります。

図表3:調査2

なお、両調査でも特徴的なのが、「個性」というワードです。図表2では「考えや価値観を押し付けず、互いに個性を尊重する」が高い支持を得ており、図表3でも「お互いに個性を尊重する」はこの10年間で14.7ポイント上昇しています。近年の多様性を尊重する教育や、働き方やキャリアに対する多様性・自律性に関心が向けられる社会的動向と同様に、新入社員にとっても「個性」というワードは存在感を増しているのかもしれません。

以上のように、新入社員が求めているのは、ここ数年の傾向と同様、活気があって相互に鍛え合う組織というよりも、アットホームにお互い助け合いながら個性を尊重する職場であるといえます。
そんな職場を求める新入社員を受け入れるうえで、受け入れ側が意識すべきことはどのようなことでしょうか。

特に営業組織などでは、業績の達成状況をランキング形式で公開したり、上位者へのインセンティブを掲げたりして、競い合いを生むことで、全体の士気を高める手法を取り入れることがありますが、それは必ずしも新入社員を動機付けるものとは断言できなさそうです。
組織の要請として「業績を達成すること=役割」というメッセージよりも、一人ひとりの成長・貢献に対する想いと組織の要請とを統合した個人最適のメッセージとして期待を伝えていく方が、本人がやりがいや意味を感じて力を発揮でき、結果的に組織目標の達成につながったり、個人の経験学習を回したりすることにつながるでしょう。

しかし、今年の新型コロナウイルスの流行によって、働き方や育て方の変容を強いられる環境においては、新入社員との対話や様子の観察は難しく、関係性をつくるのも容易ではありません。今春の新入社員向けのオンライン研修の場面では、講師やほかの受講者同士とのチャットや画面越しの対話の方が、ある意味リラックスした状態で臨め、フラットな関係性になりやすく、受講者の本音や感情を引き出しやすい特徴もありました。受け入れ側も対面にこだわらず、チャット、メール、オンライン会議など多様な手法を用いて対話・観察を重ねて個人の想いを引き出すなどし、新入社員との相互理解を深めていくことが求められています。

ファーストペンギンは避けたい……?

次に、新入社員が考えるスタンスについて見ていきましょう。
弊社の新入社員研修で「大切にしたいビジネスパーソンの行動や姿勢」として伝えている6つのスタンスについて、それぞれ得意と思うもの、得意ではないと思うもの、今後意識したいものを1つずつ選択してもらった結果、以下(図表4-1)のように、「試行」と「自発」が、あまり得意ではないものと、今後意識したいもののトップ2にランクインしました。

図表4-1:調査1
図表4-2:調査1

以下の図表5からも、「新しい発想や行動で、職場に刺激を与えること」は、この10年間で選択率のポイントが徐々に減少していることが分かります。加えて、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」と「何事も率先して真剣に取り組むこと」という選択肢も、この5年間で数ポイント減少しています。また、先述した仕事をする上で重視するキーワード(図表1-1)でも、「創造」は低い結果でした(9.8%)。

図表5:調査2

新たな狩場を見つけたときに、率先して海へ飛び込んでいく勇気のあるペンギンを、「ファーストペンギン」といいます。上述した調査結果から、新しいものに対して恐れず、率先して試行・挑戦する、まさにファーストペンギンのような志向を持つ新入社員は多くないといえるでしょう。

一方で、新入社員が今後意識的に取り組みたいと思うスタンスも「自発」が23.7%で、次に「試行」が21.6%となっています(図表4-1)。この2つのスタンスについて、不得意だが必要であると感じているものの、意識していきたいとは思っているのです。なお、弊社で過去3年以内に新人育成経験のある上司・育成担当者を対象に行ったWEB調査(回答数=1048、2018年)で、上司・育成担当者が新入社員に特に身につけてほしいスタンスの1位は「自発」でしたが、現状発揮できているかという問いについては5位でした。新人側、受け入れ側双方が特に「自発」のスタンスは意識していきたい、意識してほしいと考えているのです。

では、どうすれば新入社員の「自発」や「試行」の行動を引き出し、促進できるのでしょうか。VUCA※の時代で新たな価値を生み出していくには、既存の概念にとらわれない新たな発想が必要となるため、世代問わず「自発」や「試行」のスタンスを発揮することが要となります。

新人の場合には、上司やOJTリーダーが「自発」「試行」的な行いを認知・観察し、それらのスタンスを意識したことによる成功体験や効力感を、自身で振り返ってもらえるような働きかけを行うことが大切です。また、組織として個人のチャレンジを奨励していける制度・仕組みをつくれると、個人の意識や育成側の働きかけに依存しない環境づくりが可能となるでしょう。

※VUCA:変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)これらの頭文字を取ってVUCA(ブーカ)と呼ぶ

不動の人気である「傾聴・丁寧な指導・認知」の上司像。 求められる「フィードバック」とは?

最後に、新入社員が上司・先輩に求める関わりを見てみましょう。

図表6:調査1

「メンバーが困っている時は相談にのり、フォローする」「よい点があれば積極的に認める/褒める」「メンバーの意見や考え方に耳を傾け、受け止める」について、「あてはまる」と回答した新入社員は80%を超えています。

これは、以下(図表7)の上司に期待することとして挙げている「相手の意見や考え方に耳を傾けること」「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」「よいこと・よい仕事を褒めること」が、この10年で10ポイント前後上昇していることからも頷ける結果です。近年の新入社員は、傾聴、丁寧な指導・フォロー、認知を行う、いわゆる受容型の上司像を理想とし、厳しい指導や背中を見せて「ついてきて」と引っ張っていく関わりはそこまで求めていないのでしょう。

図表7:調査2

ここで注目したいのは、「言うべきことは言い、厳しいフィードバックも行う」という項目について、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した割合は92.5%で、新入社員は「厳しいフィードバックを受け付けない、受けたくない」わけではないということです。しかし、「フィードバック」と聞くと、一般的にネガティブな印象を持たれやすく、「新人・若手に対しては厳しいことを言ってはいけない」と腫れ物を触るように何でもオブラートに包んでしまうと、結果的に何も伝わらず、距離が生まれてしまうこともあります。

「厳しさ」という言葉には解釈の幅があり、表面的な態度、言葉、語気などの厳しさと、内容的な基準に照らした厳しさの2つを想像できます。前者の厳しさは、話し手が本来伝えたい内容や意図が十分に伝わりにくく、溝が生まれてしまい逆効果です。一方、後者の意味合いとして、一人ひとりの持ち味や経験を理解したうえで、フィードバックする基準や、それをやる意味や重要性などに相手が合意・納得している場合の厳しいフィードバックは、「一人ひとりに対して丁寧に指導する」印象になり得ます。

この、後者の意味合いである「厳しさ」の条件として、個人を理解することや、それをする意味・重要性と併せて伝える必要性は、以下(図表8)の結果からもうかがえます。弊社で入社3年目以内の新人・若手社員を対象に行ったWEB調査(回答数=424、2018年)で、耳が痛い指摘やフィードバックを受け止めようと思える理由として、「なぜそれが大事なのかが分かるように伝えてくれるから」「普段から自分のことをよく見て分かってくれている人だから」という項目の選択率が3割を超えていました。

図表8:調査1

新入社員研修でも、学習内容の重要性を伝えて体験学習をした後の、講師や受講者同士のフィードバックにおける本人の内省はとても深く、その後の言動や意識に変化が見られることが多いです。
本人の強みやよい点などポジティブな認知はもちろん大切ですが、同時に厳しいフィードバックも相手にしっかり届くと、本人の自己理解や経験学習が促進されます。新入社員の育成において、「丁寧な指導・傾聴・認知」と「フィードバック」それぞれのよさを生かすことが求められているのではないでしょうか。

最後に

世界的に劇的な変化が起きているこの時期に卒業・入社することになった新入社員にとって、さまざまなことが試行錯誤の連続になっていると思います。今回、「仕事・職場生活をする上で不安に思っていること」という調査項目(図表9)では、「先輩・同僚とうまくやっていけるか」の選択率が昨年から7.0ポイント上がり、「自分が成長できるか」については昨年から4.3ポイント上がりました。特異な環境のもとで、中々上司や先輩に対面で会えない、会えても「密」を避けるコミュニケーションです。また、通常とは異なるインプット・アウトプットの連続で、自身の成長に対する不安が表れているのかもしれません。

図表9:調査2

今回の意識調査で、新入社員は互いに助け合う職場や上司の「傾聴・丁寧な指導・認知」を求め、「自発」や「試行」のスタンスを意識したいことが分かりました。これらの要素は、一人ひとりが存分に力を発揮し、新たな価値を共創していくためにも、役職や立場、世代にかかわらず、あらゆるビジネスパーソン・組織にとって大切なことでもあります。職場・働き方・仕事・人との関わり方など、さまざまな「あり方」を模索しながら再設計し、今後の社会を切り拓いていく今だからこそ、これらの重要性について再認識させてもらえた回答に感謝すると共に、新入社員の方々の活躍を心から祈っています。

執筆者

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小松 苑子

人材派遣会社にて営業職を経験後、新人・若手社員の教育体系の構築、研修の企画・運営、ナレッジマネジメントを行う。 2017年にリクルートマネジメントソリューションズに入社し、主に営業職、新人・若手社員領域のトレーニングの企画・開発に携わる。

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