管理職意向の変化に関する実態調査 管理職になりたくなかった人でも得られる管理職の醍醐味

執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子

管理職になりたくなかった人が、昇進後、管理職という仕事に前向きになれるケースはどれくらいあるのか。あるとしたら、どのような理由が多いのか。意識調査を通じて、その実態を探ってみた。


管理職になりたいかどうか その気持ちは変化する

「管理職になりたがらない人が増えている」「新卒社員の管理職志向が○%アップ」など、管理職志向に関する調査はこれまでも多く行われている。このような志向性は、経験や置かれた環境によって変化していくことは想像に難くない。実際に、弊社が2010年に実施した調査でも、職業人生において、その志向は変化することが確認されている(「昇進と働く意欲に関する調査2012」)【*】。

本調査では、管理職昇進後に焦点を当て、昇進前後で、管理職として仕事をしたい気持ちに変化が見られるのかを明らかにすることを試みる。特に、管理職になりたくなかった人にポジティブな気持ちの変化が見られるケースに着目して、その変化に影響を及ぼしている要因について探っていきたい。

【*】「昇進と働く意欲に関する調査2012」
30 代から50 代前半の回答者において、「ずっと専門職志向」が31.4%と最も多く、「ずっと管理職志向」が28.8%とそれに続き、「専門職志向から管理職志向」に変化したのが21.8%、「管理職志向から専門職志向」に変化したのが18.0%という結果であった。

昇進前後の変化で4群に分類

調査概要は図表1のとおりである。部下をもつ課長相当の管理職に就任して1年以上5年未満の男性正社員を対象として、昇進前に積極的に管理職になりたいと思っていたか(以下、「管理職意向」、ポジティブ群/ネガティブ群)、従業員規模(1000名未満/1000名以上5000名未満/5000名以上)、職種系統(営業系/事務系/技術系)については均等になるようにデータ収集を行った。有効回答数は431である。

なお、昇進前後の管理職意向によってタイプ別に分析できるような設問設計とした。「P→P(ポジティブのまま)」「P→N(ポジティブ→ネガティブ)」「N→P(ネガティブ→ポジティブ)」「N→N(ネガティブのまま)」の4群を設定している(図表2)。

昇進後、半数以上が管理職意向 好転

昇進前の管理職意向ごとに、その変化を確認した結果が図表3である。昇進前に、管理職になりたくなかった人(ネガティブ群)のうち、半数以上が、昇進後にその気持ちがポジティブに変化していることが確認された。一方、管理職になりたかったものの、昇進後にネガティブに変化した人は1割程度であった。

続いて、管理職意向変化タイプ別に、管理職になりたかった理由について確認したのが図表4である。成長感、報酬や会社からの評価において、傾向の違いが見られる。結果の詳細は割愛するが、昇進後にポジティブなまま(P→P群)である理由も、「自分にとって成長が感じられるから」が最も多く選択されていた(46.7%)。P→N群が昇進後にネガティブに変化した理由についても、半数以上が「報酬面でのメリットが少ないから」を選択していた。

管理職になりたくなかった理由と、変化の理由は図表5-1、5-2のとおりである。N→P群は、自分には向いていない、報酬面でメリットが少ないなどの理由から、管理職になりたいと思っていなかったが、実際になってみて、影響力の大きさ、現場の仕事とは違う面白さ、成長感によって、ポジティブに変化していた。N→N群は、N→P群と同様の理由に加えて、統括・運営への興味のなさ、責任の重い仕事をしたくない、専門性が磨かれなくなるなどの理由から、管理職になりたくないと思っていた。昇進後も、ネガティブなままの
理由として、なる前と同様に報酬面でのメリットの少なさ、時間的業務負荷、調整業務の面倒さなどが挙げられており、それを上回るやりがいやメリットを見出せていない様子がうかがえる。

部下のやりがいが自分のやりがいに

ここからは、N→P群の特徴を他の群と比較しながら見ていく。今後のキャリアイメージについては、N→P群は、より高い職位への昇進を望む人が半数以上を占めるP→P群ほど昇進希望があるわけではないが、半数近くがこのまま現在の課長クラスの管理職の仕事を続けていきたいと回答しており、4群で最も選択割合が多い。同じく昇進前に管理職になりたくなかったN→N群では「専門職として仕事をしていく」を4割以上が選択しているのと対照的である(図表6)。

管理職としてのやりがい(「どういうときに管理職としてのやりがいを感じますか」)については、他の3群に比べて、「部下が生き生きと仕事をしているとき」の選択割合が飛びぬけて多い(図表7)。部下の成果や成長については、いずれの群でも選択されているところを見ると、微妙なニュアンスの違いではあるが、部下が仕事にやりがいを感じることが、自分にとってのやりがいに感じられるようになったあたりに、N→P群のポジティブ変化の秘訣が隠されているのかもしれない。

昇進後に、初めて「管理職として仕事をしたい」と思えるようになったエピソードにも同様の傾向が確認された。特に営業系の職種では、「部下の大きな成長を感じた」「担当者では埒があかなかった案件のトラブルを、管理者の権限で解決してあげられたこと」など、部下に関するコメントが複数見られた(図表8)。

ロールモデルがいれば……
とはいえ、やってみるしかない

それでは、昇進前に、管理職の仕事の魅力に気づく方法はあったのだろうか。N→P群に対してたずねたところ、「理想やお手本となる管理職が身近にいること」「実際に管理職になってみるまで、わからないものだ」の選択割合が多かった(図表9)。職種系統別には、前者は事務、技術の、後者は営業の選択割合が多かった。

最後に、N→P群が自由記述で回答した、管理職になりたくない人へのアドバイスを紹介したい(図表10)。なりたくないなら、やらなくてもいいというようなコメントもあった一方、自分の経験をふまえた、やりがいや醍醐味についての前向きなコメントがとても多く寄せられた。もともと管理職になりたくなかったとしても、その仕事を前向きに捉えることができている人が半数以上いること、こんなに力強いメッセージを多く得られたことが今回の調査での大きな収穫である。

コメントを読んでいると、昇進前に管理職になりたかったかどうかはあまり問題にならないことのようにも思えてくる。とはいえ、管理職になりたくない人が組織の要請で昇進した際、本人もやりがいを感じ、期待される成果をあげていく上では、組織としても支援できる部分もあるだろう。働く価値観などによって、管理職になることの意味合いが一律ではないことを理解すること、そして、身近に理想やお手本となる管理職のロールモデルがいるとは限らない状況にあっては、このようなコメントを通じて管理職になる意味を伝えることも、支援の1つになるかもしれない。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.42 特集1「伝えたい マネジャーの醍醐味」より抜粋・一部修正したものです。
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