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調査レポート

新入社員へのかかわり方のヒント

2009年 新入社員意識調査

  • 公開日:2009/05/27
  • 更新日:2024/03/21
2009年 新入社員意識調査

昨年4月に発表された第25回ワークス大卒求人倍率調査(2009年卒)では、2009年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象とする、全国の民間企業の求人総数は、2008年卒に比べ1.5万人増加(+1.7%)の94.8万人であり、調査開始以来最高水準を更新しました。しかしながら、今年4月に発表された第26回調査(2010年卒)では、求人総数は94.8万人から72.5万人への23.5%のマイナスとなりました。

急速な景気後退の影響で、就職活動中と入社後の環境がまったく異なることとなった、今年の「エコバック型」(社会経済生産性本部の命名)新入社員を「大きく広げる(育成する)」ポイントは何でしょうか?弊社が行った「新入社員意識調査」の結果をもとに、新入社員に対するかかわり方のヒントを考えていきます。

新入社員意識調査の概要
自分への期待として考えていることは、 “仕事への基本的な姿勢”と“マナー”
不安は、「職場で」「仕事を」“うまくやっていけるかどうか”
新入社員タイプ別に見るかかわり方のヒント
おわりに ~受け入れ側として

新入社員意識調査の概要

新入社員意識調査の概要は以下のとおりです。

新入社員意識調査の概要

自分への期待として考えていることは、 “仕事への基本的な姿勢”と“マナー”

新入社員は、会社や仕事、そして上司・先輩に対してなど、さまざまな期待をふくらませながら、社会人としてのスタートを切っていますが、自分にはどんな期待がかかっていると考えているのでしょうか?図表01は「会社(人事・上司)が新入社員のあなたに一番期待していることは何だと思いますか?」という質問に対する回答結果を示しています。

図表01 「会社(人事・上司)が新入社員のあなたに一番期待していることは何だと思いますか?(最大3つ選ぶ)」

図表01 「会社(人事・上司)が新入社員のあなたに一番期待していることは何だと思いますか?(最大3つ選ぶ)」

「失敗を恐れずにどんどん挑戦してほしい」「何ごとも率先して真剣に取り組んでほしい」「何があってもあきらめずにやりきってほしい」という積極性、仕事へ懸命に向かう姿勢が、スキルや知識の習得や、成果を出すことよりも大きく期待されていると考えているようです。

また、「仕事をするうえで基本となるルール・マナーをはやく身につけなければいけない」と考えている人も多くみられました。

不安は、「職場で」「仕事を」“うまくやっていけるかどうか”

自分への期待をこのように考えている一方、新入社員のほとんどは、社会人のスタートにあたって環境が変わる中で、何らかの不安を感じているようです。図表02は「あなたが仕事・職場生活をするうえで不安に思っていることは何ですか?」という質問に対する回答結果を示しています。

図表02 「あなたが仕事・職場生活をするうえで不安に思っていることは何ですか?(最大3つ選ぶ)」

図表02 「あなたが仕事・職場生活をするうえで不安に思っていることは何ですか?(最大3つ選ぶ)」

「仕事についていけるか」「職場の人とうまくやっていけるか」「生活環境や習慣の変化に対応できるか」が3大不安として突出していることが確認されました。この傾向は、本調査を開始した2005年から変わっていません。

異なる世代の人とかかわる機会や、インターネットやメールではない直接的なコミュニケーションが減っている中で、新入社員は「自分の成長」や「やりたい仕事」よりも、まずはいろいろな世代の人がいる職場の中でうまくやっていけるかどうか、というところに不安を抱いていることがうかがえます。研修中には、例えば、朝早く起きられるか、毎日会社に行けるかなど、慣れてしまえば当たり前と思うようなことであっても、不安に感じるという声も多く出ていました。

新入社員タイプ別に見るかかわり方のヒント

これまでは全体傾向を見てきましたが、ここからは特徴的な3つのタイプをとりあげて、タイプ別の傾向とかかわり方を考えていきたいと思います。

タイプは、本調査の「あなたが会社からの期待に応えるうえで生かせそうな「強み」は何ですか?「弱み」になりそうなもの(足りないと思うもの)は何ですか?(それぞれ最大3つ選択)」の結果をもとに以下のように設定しています。

A:自信ありタイプ
強みに「物事に進んで取り組む力」と、「他人に働きかけ巻き込む力」の両方を選択している人 (98名)

B:価値創造タイプ
強みに「新しい価値を生み出す力」を選択している人 (149名)

C:受け身タイプ
強みに「相手の意見を丁寧に聴く力」、弱みに「自分の意見をわかりやすく伝える力」を選択している人 (309名)

これまでに紹介してきた質問に加え、「一緒に仕事をしたい上司」「価値があると思う仕事」についての回答結果もそれぞれタイプ別に図表03から図表06で示しています。

図表03 タイプ別 「会社(人事・上司)が新入社員のあなたに一番期待していることは何だと思いますか?(最大3つ選ぶ)」

図表03 タイプ別 「会社(人事・上司)が新入社員のあなたに一番期待していることは何だと思いますか?(最大3つ選ぶ)」

図表04 タイプ別 「あなたが仕事・職場生活をするうえで不安に思っていることは何ですか?(最大3つ選ぶ)」

図表04 タイプ別 「あなたが仕事・職場生活をするうえで不安に思っていることは何ですか?(最大3つ選ぶ)」

図表05 タイプ別 「あなたはどんな上司と一緒に仕事をしたいですか?(最もあてはまるものを1つ選ぶ)」

図表05 タイプ別 「あなたはどんな上司と一緒に仕事をしたいですか?(最もあてはまるものを1つ選ぶ)」

図表06 タイプ別 「社会人とは、社会に対して何らかの価値を提供する存在です。あなたが一番価値がある仕事だと思うものを1つ選んでください」

図表06 タイプ別 「社会人とは、社会に対して何らかの価値を提供する存在です。あなたが一番価値がある仕事だと思うものを1つ選んでください」

A.自信ありタイプ:明確な理念を持ち、実力ある上司のもとで、挑戦したい傾向

“仕事や人に積極的にかかわること” に自信があるこのタイプは、任された仕事を確実に進めるよりも、「失敗を恐れず挑戦することが自分に期待されている」と考えている傾向が、他のタイプよりも強くなっています。

一緒に仕事をしたい上司像も、「丁寧に指導してくれる」や「人間関係を大事にする」という要素は他のタイプと変わらず多くの人が求めてはいるものの、他のタイプと比べて、「明確な理念や理想を持っている」「仕事の実力がある」上司を望む傾向が強いといえます。自分が社会で活躍していくうえでの到達像となりうる上司に、自分の力を引き上げてほしいと望んでいることがうかがえます。

仕事をするうえでは、前述の「3大不安」が強いということは変わりませんが、「職場の人とうまくやっていけるか」という対人面での不安は相対的に少なく、これは対人面の自信の裏返しと考えられます。

このタイプの新入社員に接する際には、自信・自尊心を認めながら、少しずつ難易度の高い仕事を任せ、仕事の良し悪しを振り返り、次の仕事を任せていく方法がフィットすると考えられます。

B.価値創造タイプ:やりたい仕事で成果をあげたい傾向

“新しい価値を生み出すこと”に自信があるこのタイプは、他のタイプと比べると「社会人としてのルールやマナーをはやく身につける」ことよりも、「新しい発想や行動で、先輩社員に刺激を与え」、「仕事で高い成果をあげること」を自分への期待として考える傾向が強く出ています。

一緒に仕事をしたい上司像には特徴的な傾向はありませんが、仕事の価値においては、他のタイプに比べて「相手を助けたりサポートしたりする、役に立つ仕事」よりも、「新しい企画やアイディアを形にする仕事」に価値を見いだしている人が多い、という結果が出ています。新しい価値を生み出すことが強みだと思っている以上、その強みを発揮できる仕事に価値を見いだしているといえるのではないでしょうか。また、仕事をするうえでの「3大不安」はあるものの、他のタイプよりはそれが弱いようです。

このタイプの新入社員は、「任された仕事が新しい価値を生み出せるものか」、ということへのこだわりが強いため、仕事をアサインする時には、仕事のプロセスを含め、本人が考え、工夫できる余地の大きい任せ方をすることが肝要です。また、どんな仕事であっても、自分自身の成長や、新しい価値を生み出すことにつながることを、本人にわかるように伝えることも大切だと考えられます。

C.受け身タイプ:雰囲気のよい職場で、丁寧に教えてもらいたい傾向

“人の意見を聴くのは得意、でも自分から伝えるのは苦手”なこのタイプは、「相手のサポートをすること、助けること」に価値をおく割合が他のタイプに比べて高く、また 「仕事についていけるか」「職場の人とうまくやっていけるか」という不安を感じている人がより多いようです。

一緒に仕事をしたい上司も、他のタイプと比べて、「実力がある」の選択率が低く、「丁寧に指導してくれる」が高くなっています。

もともと自分から質問したり、話しかけたりすることが苦手なので、実際に職場の状況を見ると、「忙しそうなのにこんなことを聞いたらダメかな……」などと考えてしまい、より自分から話しかけるハードルを上げてしまうことがあるかもしれません。また、職場になじめるかどうかも不安なため、職場でひとりぽつんといる場面が多いと、「私はきらわれているのかもしれない……」など、だれにも言えずひとりで悩みを抱え込んでしまう可能性があります。

このようなタイプの新入社員には、まずは上司・先輩などからこまめに・丁寧に話しかけるなど、はやく職場になじめるように配慮し、安心感を持ってもらうことが必要だと考えられます。そのうえで、丁寧に指導することでまずは仕事への不安を取り除き、一つひとつステップを踏みながら成長感や達成感を持ってもらうことが必要と思われます。

おわりに ~受け入れ側として

ここまで、新入社員の意識に関する全体傾向と、3つのタイプ別の特徴について見てきました。全体傾向を見ると世代としてのイメージはつきやすくなりますが、今回紹介したようなタイプ別で見てみると、それぞれ異なった特徴も見えてきました。

現実には、受け入れ側は「今どきの」新入社員は……とまとめて扱うこともあります。一方で、人それぞれ違うということを忘れず、相手に合わせたかかわり方をしていくことで、新入社員は社会人としての階段を昇りやすくなるのかもしれません。

新入社員へのかかわり方を考えるための出発点になるのは、一人ひとりそれぞれに興味を持ち、知ることではないでしょうか。意識調査の結果を見ると、新入社員は、「自分への期待=自分の強みだと思っていること」ととらえていることがわかりました。これは当然ともいえ、悪いことではありません。たとえば「自分のどんなところが強みだと思っている?」と聞くことで、相手のタイプや、かかわり方のヒントが得られるかもしれません。

また、新入社員も、上司だけでなく職場一人ひとりの様子や職場の状況についてよく見ています。そんな初めての職場の中で、新入社員は「仕事」や「働くこと」がどういうことかを実感していきます。新入社員の入社を機会として、受け入れ側も、それぞれが自分の仕事の意味・価値を見つめ直し、新入社員とともに職場全体で成長していくことが大切ではないでしょうか。

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