2007年 新入社員意識調査 「安定した環境で成長したい」

リクルートワークス研究所が2006年4月に発表した調査によると、2007年3月卒業予定の大学生・大学院生に対する全国の民間企業の求人総数は82.5万人でした。これは前年同時期から12.6万人(18.1%)の増加で、バブル期(1991年卒)の84万人に次ぐ水準です。一方、学生の民間企業就職希望者数は昨年からほぼ横ばい(+0.1%)の43.7万人で、求人倍率は1.89倍、学生ひとりが平均2社から内定を得る計算となりました(第 23 回ワークス大卒求人倍率調査(2007年卒))。

企業の業績の向上と団塊世代の大量退職を背景に、売り手市場の就職活動を経験してきた今年の新入社員は、仕事や職場に何を期待し、どんな不安を抱えているのでしょうか。 弊社が毎年行っている「新入社員意識調査」の結果から考察してみたいと思います。


調査概要

新入社員意識調査の概要は以下のとおりです。

仕事は安定した収入と自分の成長のため

まず、「あなたにとって働く目的は何ですか?(2つ選択)」に対する回答を見てみましょう。

2005年以来、3年連続で「安定した収入を得る」がトップ、次点は「自己キャリア開発」です。

「あなたは企業、あるいは職場に何を望みますか?(3つ選択)」という質問でも、1位は「安定した収入」という回答でした。以降は「整備された労働環境」「専門知識・スキルの習得の機会」となっています。

企業・職場に望むものとして、「収入」「労働環境」「福利厚生」「フレキシブルな労働時間」といった労働環境や条件に関する回答を選択した人は、いずれも昨年より若干増えています。また、フリーコメントでは「人間関係のよさ」「社風や雰囲気のよさ」という回答も目立ちました。
安定性した収入と、環境、制度、人間関係を含めた「快適な環境」の確保、そして自己成長やキャリアといった、組織ではなく自分を軸にした労働観――これらは3年間で共通する、新人・若手に特徴的なキーワードといえそうです。

彼らの生育環境を考えると、「不況」「リストラ」といった言葉を日常的に耳にしながらも、物質的には不自由なく、個性を尊重されてきています。求人倍率はバブル期並みに高まり、企業の情報はインターネットを通して豊富に手に入る、恵まれた就職環境を経験しました。

多くを望まずとも快適な環境が用意されているけれど、それに甘んじて努力を怠ると「負け組」になってしまう。「なるべく失敗せずに、安全で快適な環境を確保したい。その中で、自分を大事にしながら成長していければベスト」という価値観は、自然なもののように思われます。

将来は 自分を生かして転職・独立? 組織の中で出世?

「成長」「キャリア」という言葉は、新入社員研修の中でも実際によく聞かれ、関心の高さがうかがわれます。具体的にはどのように考えているのでしょうか。「あなたはどのくらいまで出世したいと思っていますか?(1つ選択)」という質問を見てみましょう。

回答全体を見ると、「独立したい」「役員ぐらい」が一定数残る一方で、「課長、または店長などのリーダー職ぐらい」「部長ぐらい」「平社員のままでいい」は伸びています。

「平社員のままでいい」が選択された理由の一つには、高いポジションまで昇りつめたり、独立して起業する自信やイメージはまだない、ということが考えられます。売り手市場の就職環境を背景に、働くことに対するイメージをもちきれていない人が増えているのかもしれません。求人倍率がさらに高まることが見込まれる、来年度の動向にも注目したいところです。

「組織にとらわれずに自分の個性や成長を追求したい」という考えから、自由に転職ができる「平社員ぐらい」のポジションにいたい、あるいはいずれ「独立したい」と考えた人もいるでしょう。今年4月に社会経済生産性本部が発表した今年の新入社員のタイプは「デイトレーダー型」でした。つねによい待遇・よい仕事を求めて、銘柄を乗り換えるように転職を目論むことからの命名だそうです。実際に彼らがそのような行動を取るかは未知数ですが、ここ数年で、転職はより一般的なものとして認知されてきたのは確かです。企業の採用意欲が飛躍的に高まったことと、彼らの志向がマッチした結果だといえます。

これに対して、「課長、店長などのリーダー職ぐらい」や「部長ぐらい」「役員ぐらい」までの出世は、一つの組織に腰を落ち着けて、慣れた人間関係の中で成長し、安定した収入やポジションを得て働きたい、という志向のあらわれと考えられます。

以上のように、大きくは「自分を生かして働きたい」という志向と、「組織の中で安定感をもって働きたい」という志向の二つに傾向が分かれているといえそうです。

二大不安は「仕事」と「人間関係」

続いて、「あなたが仕事をする上で不安に思っていることは何ですか?(あてはまるものすべて選択)」の質問に対する回答は、昨年と変わらず、「仕事についていけるかどうか」「上司や同僚など職場の人間関係」の二つが抜きんでています。成長にかかわる、「自分が成長できるかどうか」「やりたい仕事に就けるかどうか」はその後に続いています。

せっかく入社した組織で、一日も早く仕事を覚え、周りの人たちともうまくやっていきたい、という前向きな気持ちがあるからこそ感じる不安といえるでしょう。先に見たように、「なるべく失敗したくない」「よい人間関係の中でやっていきたい」という気持ちが強いとすれば、こうした不安は真摯なものなのかもしれません。

新入社員を対象とした研修の中でも、受講者は同様の不安を口にします。特に人間関係については、「同世代の人たち以外と付き合ったことがなく不安」という声も多く聞かれます。

「人間関係を大事にして、自分を伸ばしてくれる」上司が理想

最後に、「あなたにとって、理想の上司はどんな上司ですか?(1つ選択)」の質問を見てみましょう。

「業績を正当に評価してくれる」「仕事を任せてくれる」といった選択肢は、まだ仕事や上司に対するイメージがないためか、あまり重視されていません。最も多く選ばれているのは、「人間関係を大事にする」です。この傾向は3年間でますます強まっています。「企業・組織に求めるもの」の回答に見られた、「人間関係がよく、雰囲気のよい組織」をつくってくれる上司と解釈できます。

具体的には、「人をしっかりと見てくれる」「話を聞いてくれる」「その人を見て伸ばしてくれる」など、メンバーのことをしっかりと見て、理解し、伸ばす、よき理解者・支援者といった特徴がフリーコメントに多くあげられていました。

先ほど見たように、初めての環境で「仕事についていけるか」「上司や同僚などの人間関係」といった不安を抱えていることを理解し、サポートしてほしい。そして、自分のよいところを認め、成長できるよう牽引してほしい――そのような気持ちがここにもあらわれているといえます。

新入社員の受け入れにあたって

以上、3年分のアンケートの結果を材料に、新入社員の「働く」ことに対する意識の傾向を見てきました。ここ数年の新入社員の特徴として見えたのは、企業という新たなステージに、「よい人間関係の中で個性を生かして仕事をしたい」「その結果として安定した生活をし、成長し、キャリアを積み上げたい」という期待を強くもっているということです。

しかし、組織における人間関係には学生時代とは異なるルールがあり、不自由さを感じることもあるでしょう。個性を発揮して大きな仕事を成し遂げ、満足感や成長感を得られるまでにも、かつてないほどの時間と労力が必要になるかもしれません。

こうしたギャップは当然といえばそれまでですが、気の合う仲間とだけつきあい、さまざまな情報がすぐに手に入る環境に慣れた世代にとっては、時に激しい違和感となりえます。実際、上司や先輩が忙しくて面倒を見てくれない、仕事が予想外に地道で何につながるのか見えない、学生時代のように自分のよさが発揮できないといった理由で、入社後すぐに離職に至ってしまうケースも見受けられます。彼らが不安を解消し、経験の中で「働く」ことに対する意識を育てていけるよう、必要なコミュニケーションは惜しまないようにしたいものです。

「自分たちの価値観とは大分違う」「考えが甘いのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、育ってきた環境や経験が違えば価値観が異なるのはごく自然なことであり、それぞれのよさもあります。同じ組織の一員として共に歩んでいこうと決めたからには、互いが異なることを前提として、理解し合い、成果を生み出していこうという姿勢が必要なのではないでしょうか。

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