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THEME 組織開発

特集「仕事を進める」から「新しいアイディアを生み出す」へ

みんなで共創したくなる! オンライン会議の作り方

みんなで共創したくなる! オンライン会議の作り方

新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みのなかで、社内外問わずオンライン会議の実施が一気に増えたと聞きます。

今では「オンライン会議ってどうやるの?」と多くの人が右往左往していた初期の頃が嘘のように、日常的に行われるようになりました。タスクを明確にする、ファシリテーターを設けるといった基本ルールも浸透し、違和感なく業務が進められる手応えを感じている方が多いのではないでしょうか。

しかし、日常化するなかで、物足りなさやオンライン会議の限界を感じる人も増えてきているように思います。そこで今回は、弊社と一緒にさまざまな組織のインナーコミュニケーションのお手伝いをしている、株式会社リクルート インナーコミュニケーション推進グループの田中達也氏、長縄美紀氏から、オンライン会議で、新しいアイディアを生み出していくための「共創」コミュニケーションの方法についてお話をいただきました。ちょっとしたやり方とマインドセットの工夫で、オンラインでもクリエイティブなアイディア交換のコツをご紹介します。

オンラインでの共創会議から生まれた内容ですので、本コラムもお2人の会話形式+ナレッジのご紹介で進行します。

PROFILE

たっちゃん

田中達也(たっちゃん)
株式会社リクルート インナーコミュニケーション推進グループ
シニアインナーコミュニケーションコンサルタント/シニアクリエイティブディレクター

人と組織をつなぐ求人広告の制作を20年手がけるなか、組織・階層を超えたインナーコミュニケーションの活性化を担う社内ベンチャー組織をリクルート内で立ち上げ。以来10数年、従業員が主体的に未来を描き、行動するためのソリューションづくりを手がける

みっきー

長縄美紀(みっきー)
株式会社リクルート インナーコミュニケーション推進グループ
グラフィックコーチ/クリエイティブディレクター/インナーコミュニケーションコンサルタント

約18年間、リクルート内の人と組織の領域で、企業のインナーコミュニケーションの課題解決に従事。描くことで今の自分に気づき、新しい道を歩むことを促すグラフィック・コーチング、対話型組織開発を行うワークショップのデザインとファシリテーション、人と人とのコミュニケーションをよりよくするグッズの企画制作、広告クリエイティブのディレクションを多数行う。

オンライン会議で起こりがちな問題とは?

●すっかり日常になったオンライン会議


たっちゃん「オンライン会議って、初めは戸惑いもあったけど、だいぶ慣れてきたよね。初めてのお客様とも普通にオンラインで商談するようになったし」 

みっきー「移動時間がないので時間も有効に使えますね。プライベートでも普段会えない人とも話せるし、私のように子育てをしている人でも、オンラインなら飲み会に参加できるのは嬉しいです」


●でも、ちょっと限界感じてない? タスクは進んでも……


たっちゃん「でも、行き詰まり感も出てきたね。お客様からも『みんなカメラオフで聴いているから、反応が見えなくてツライ』とか『必ず全員話しましょう!って、いちいち回されると困る』とか『話そうかどうか、一瞬迷っているうちに次の話題へいっちゃって、もやもやが残る』とか、聞くことも増えてきた」

みっきー「アイディア発想系の会議が空中戦になりがちという声は社内でもよく聞きます。あれ? 今、どこまで話してたっけ?とか。ビジョンや方針も、今までは空気感で共有できたけど、オンラインだとそれが難しい……という話もよく出ます」

たっちゃん「これまで緊急事態に対応して“仕事を進める”会議をやることに、みんないっぱいいっぱいだったけど、これからは“新たな方向性をつくり出す”“次の動きを考える”ためのコミュニケーションが必要なフェーズに入ってきていると思う」

●司会だけが、頑張りすぎない。共創を生み出すための共創会議がスタートかも


みっきー「これまでリアルな場の力を借りてつくっていたワイガヤ的な共創を、オンライン環境のなかでは意図してつくり出していくことが必要になっていますよね」

たっちゃん「実は“本当はもっと話したい!”って思っている人が多いよね。ワークショップだとオンラインの方がホンネを話しやすいという声も少なくない。そうした参加者の想いをうまく生かせていないだけなんじゃないかな」

みっきー「テレワーク初期によくいわれた『オンライン会議の進め方』は、司会がファシリテーターとしてすべきことがいっぱいあるけど、司会だけが頑張りすぎる会議はそろそろ限界が来ていると思います」

たっちゃん「そう! 司会と参加者に分かれた瞬間、主体性のスイッチがOFFになる。オンライン会議を何カ月か続けて、 “こういうのはいいな”“こういうのがヤダ……”という“体験”のナレッジはみんなたまっている。だからこそ今、一般的なセオリーから一歩進んで、“自分たちにとってよい会議の進め方”をみんなで生み出していく時期に入っているよね」

●オンライン会議で起こりがちな問題


・周囲の反応が見えず、一方的に伝える形になりやすい
・受け取れていない人が表出せず、そのまま進んでしまう
・保留して考える時間がなく、浅い議論で終わる
・司会に負荷がかかり、参加者の主体性が下がりがち
・自分のパート以外では、内職する人が増えてしまう


たっちゃん「オンライン会議の次のステップとして、タスク管理に終わらず、みんなが主体性を持って、アイディアを出し合う共創会議ができると、組織の力が生かせるよね」

みっきー「そうですね。ではそのやり方について、3つほどご紹介しましょうか」

オンライン会議で、共創を起こす3つのフレーム

●オンライン会議の進め方を共創する取り組み


まずお勧めしたいのは、「会議の進め方自体をみんなで話し合って共創する」という取り組みです。プロジェクトのキックオフや、長時間のアイディア創出会議の冒頭などで行うことをお勧めします。

オンライン会議でもフレームを使って進めることで、ゴールや全体像の共有がしやすくなり、みんなが主体感を持って関わりやすい状態を実現できます。
例えば、OARR(オール)(図表1)。ファシリテーション・グラフィックの元祖と呼ばれるデビッド・シベットが生み出した「みんなでオールを漕ぐように協力し合いながら会議を進めていく」ためのフレームです。

図表 OARRフレーム

(1)Outcome:この会議が終わるときにどんなゴールや成果を生み出したいか?をまずみんなで描きます。何のためにこの場に集まっているのか、意識が揃った状態で会議をスタートさせることができます
(2)Agenda:このOutcomeに至るためにどの話をどの順番でするとよいかを整理します
(3)Role:誰が何の役割を担うのがよいか、コンセンサスを取ります
(4)Rule:この場の約束事を決めます。例えば全員で参加しようとか、拡散のために、粗くてもいろいろな案を出そうとか、参加者が今日みんなで守りたいことを明文化します

みんなでこの絵を眺めながら、「ここ、どう思う?」と一緒に埋めていくことが、共創を引き出すトリガーになります。その日の話題に対して、自分がどのようにふるまえばいいか、お互いに何に気をつけたいか、が共有でき、脱線しても自分たちで修正できるので、司会もサポートに集中できます。

また、みんなで進め方を定義する時間が取れない場合も、主催者がこのフレームを描いて、最初に説明するだけでも、メンバーの参加意識が変わります。

●みんなで創る「オンライン会議をリニューアルしよう!セッション」


現状のオンライン会議が上手くいかないと感じている場合には、今までの“体験のナレッジ”を共有してオンライン会議の進め方をリニューアルすることもお勧めしたいです。
以下のような、30分〜1時間のミニワークショップ形式で進めることをお勧めします。

(1)Why:なぜ、あらためてオンライン会議を変えていきたいか、何を実現したいかなど意図を共有します
(2)Feel:これまで司会として、参加者として感じていた、よかった/つらかった・気になったことを自由に出し合います(感情に着目するのがポイント。批判的にならず、立場を超えて、本質的な“オンライン体験”が出てきやすい)
(3)Sympathize:よかった/つらかった・気になった の意見のなかで特に共感するものを投票。なぜ、どこに共感したかを共有し合い、課題と可能性を整理します
(4)Createじゃあ、どんなオンライン会議になると嬉しいか?を出し合います。ブレスト感覚で、アイディアを拡散します。みんなで守り合いたいルールは?という問いも有効です(守り合う、という相互性が大切です)
(5)Engage:次回から、みんなで共通して守っていきたいことを合意します。5カ条などに明文化してみると運用しやすい

今まで気になっていたことや、よかったことを共有したうえで、みんなで決めることによって、メンバーの納得感やコミットメントはずいぶん変わります。東京大学の梶谷教授が取り組まれている哲学対話(図表2)でも、多くの人が自由に話せるように7つのルールを設定しています。話すことに自信がない人も、明るく一緒に議論に参加できるイメージが湧いてくる内容なので、こうしたものを参考にするのもよいですね。

図表2 「哲学対話」7つのルール

●課題解決にも自然に共創が生まれてくる。そんな「構造」を提示する

図表3 TAPSフレーム

お客様や関係各所と課題解決を進めるときにお薦めなのが、TAPSフレームです(図表3)。このフレームを画面で共有しながら話すと、ゴールに向けた課題整理を共創することができます。

(1)Why:今回はどんな背景でご相談をいただいているのですか?と問いかけ、出てきた声をそのまま描きます
(2)To be:そのために今回起こしたい変化はどんな変化ですか? ありたい状態やゴールはどんなものですか?問い、答えてもらいます。できるだけ全員の声を聴きます
(3)As is:それに対して、現状はどんな状態なのですか?と投げかけ、上がってくる声を記録します。ここまで、それぞれの視界をそのまま絵や言葉にして、フレームに落としこむだけで、現状の全体像が1枚に見える化されます。それを、みんなで“眺めながら”話すことで、議論が整理されてきます
(4)Problem:問題はどんなことでしょう? To beとAs isをつなぐとき、何が障害になりそうですか? 今、なぜつながっていないのですか?
(5)Solution:何が解決策になりそうでしょう? 思いつくことを自由に挙げてみてください

このフレーム自体は今までも課題解決の場面で使われてきたものですが、オンラインで、フレームを眺めながら、その場で話しながら、全員で一緒に作り上げていくことで、その場でイメージが共有され、課題合意までできてしまうという効果につながります。認識のズレも早くわかりますし、解決策もその場で出しながらやりとりすることで、次回はAとBを検討しましょうというコンセンサスがとれる。よりスピード感がある共創が可能です。

オンライン会議を効果的に進める5つのステップ

●オンラインだからこそ、共創を引き出す「構造」「マインドセット」が大切


みっきー「こうして2人で話すだけで、オンラインでも色々アイディア湧いてきますよね」

たっちゃん「あらためて今日話しながら、オンラインで共創を生むための大きな構造とマインドセットが見えてきたね。共創型オンライン会議の5つのステップとしてまとめてみたよ」

●共創型オンライン会議の5steps


(1)Why:場の意図を語ろう
(2)Ask:(タスクの前に)「問い」を立てよう
(3)Involve:「安全」に「巻き込もう」
(4)Visualize:議論を「見える化」しよう
(5)Engage: 合意して関わり合おう
 ⇒ WAIVE=WAVE(波)をつくろう!


みっきー「まず、Whyですよね。主催者がこの場をどんなものにしたいか、意図とか願いをちゃんと言葉にするのが大事。分からないから相談したいのか、しっかり伝えて分担していきたいのか、ワイワイ議論したいのか、分からないことを教えてほしいのか」

たっちゃん「すぐにアジェンダに入って、タスク化してしまいがちだけど、その前提にある想いや悩みも含めて、背景を理解すれば参加者も協力しやすくなる」

みっきー「そのうえで、タスクよりAsk。『何を解決したいのか』『どんなことを考えたいのか』など問いの形にして聞いてもらえるとみんなの発想が広がる。『どうやったらみんなでミスを減らせるだろう?』『どうすれば商品のよさがお客様に伝わるだろう?』とか」

たっちゃんInvolveでは安全性が大事。今日挙げた事例でもいろいろ立場の人が自由に意見を出せるような安全度の工夫がキーになっている。どんな意見を出しても批判されない。何を言ったらいいか混乱しない。そんな『構造』が『見える』ことが、みんなを議論に巻き込むトリガーになる。『対話』を生み出す技術がオンラインでも有効なんだね」

みっきー「そして、議論をVisualizeしていくこと。私はグラフィックレコーディングの講座にここ1年ほど取り組んでいますが、見える化の価値は、このオンラインの環境で増してきていることを感じます。見える化すると、1つのものを見てみんなで話す状態が生まれる。一体感も生まれるし、集中力も生まれる。言葉だけだと認識がズレたり空中戦になったりしがちな場でも、ニュアンスが共有しやすいことも。出た話を描いてあげるだけで、受け止められた、という体験につながって、主体的に参加する場にもなります」

たっちゃん「参加者全員で、今話されていることをしっかり見ながら、対話を続ければ自然と共創は生まれてくる。その共創感があれば、結論をEngageし合って実現を進める共創力も高まる。オンラインで物理的に距離があるなかで、いいWA(I)VEを起こせるかどうかが、企業の共創力→競争力を左右していく。一人ひとりのマネジャーが日常の会議にどう取り組むか?から、それは始まっていると感じます」

最後に

●オンラインだから、試して、変えて、また試してが生まれやすい


みっきー「オンラインで共創したい!という想いさえあれば、工夫できることは本当にいろいろありますね」

たっちゃん「オンライン&新型コロナ環境って、まだ固まったやり方が世界のどこにもないまさにVUCAそのもの。大変だけど逆に『何でもやってみたらいいんじゃない?』という動きが意外なエスタブリッシュ企業にも生まれていることを感じます。オンラインなら『1回これ試してみましょう!』って言いやすいし、賛同する人も出てくる」

みっきー「予測しきれない未来に向かうなかで、失敗も含む試行錯誤をどんどん回す体験を組織がすることはとても重要。テレワークへ移行したおかげで、企業の文化が進化しました!と語る企業がこれからいっぱい生まれてくるんでしょうね」

たっちゃん「我々のチームは、変化に向けて従業員のエンゲージメントをどう引き出すか、一人ひとりのやりたい・できそうをどう育むかについて、組織開発やインナーコミュニケーションを通じて取り組んできたけど、オンラインのなかでそれを加速するお手伝いをもっと進化させていかなければ!」

みっきー「はい! 私は今までやってきたグラフィックレコーディングの講座を進化させて、コラボレーションが生まれるグラフィックレコーディング講座を始めました。映像コンテンツを作り、オンラインでの講座を始めるべく準備しています」

たっちゃん「僕も『オンライン下のマネジメントの兆しと不を共有する』短時間の管理職ワークショップをいろいろな企業と実施しています。朝の1時間半、組織を超えてマネジャーが集まって、リアルな知恵を交換し合うことから、現場発でマネジメントが進化する手応えを感じています」

みっきー「オンラインのおかげで、ワークショップという枠を超えて、Teamsとか現場の日常のコミュニケーションに接続した活動がしやすくなっているのも進化ですね。このコラムに興味を持った方とも、新しい出会いが生まれてオンラインでつながるかもしれない。楽しみですね!」

たっちゃん「そんなメールや場から、また新しい進化が生まれていくはず。半年後の自分たちを予測しきれないワクワクがあるね!」


※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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