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事例から見る新入社員研修のオンライン実施のポイント

互いに学び合うオンライン研修を実施するために

  • 公開日:2020/09/07
  • 更新日:2024/03/25
互いに学び合うオンライン研修を実施するために

2020年度の新入社員研修は、コロナ禍で大きな影響を受けました。緊急事態宣言により対面(集合)型の研修実施が難しい状況のなかで、新入社員をどう育てていくか、自宅からの研修受講をどうサポートするか、試行錯誤された人事のご担当者も多いことと思います。
今回は、オンラインで実施した新入社員研修の事例を振り返りながら、今後のオンライン研修で実践したいポイントをお伝えします。

事例1 A社 ~仕事のリアリティを再現した演習で新入社員が自ら気づき実践するオンライン研修~
事例2 B社 ~通信環境を整え、自宅からの受講で仕事の基本を身につけるオンライン研修~
解説のまとめ
解説1 オンライン研修の企画ポイント
解説2 オンライン研修の準備ポイント
解説3 オンライン研修の運営ポイント
最後に

事例1 A社 ~仕事のリアリティを再現した演習で新入社員が自ら気づき実践するオンライン研修~

A社は、従業員数約1000名の企業。組織が急拡大するなか、2020年度春期は営業職を中心に、新卒約30名を採用しました。

■新入社員に求める人材像を明確にする


テレワーク・リモートワーク下では、上司が新入社員の日々の行動を把握しづらい状況が続きます。そのため、まずは研修で仕事の進め方の基本をしっかりと身につけることが重要でした。企画段階で、新入社員に求める人物像と研修の目的を何度も確認しながらプログラムを設計。新入社員研修の目的は、「どんな環境でも通用する仕事の進め方を身につけること」と「上司や同僚との協働の意識を高めること」の2点に決定しました。弊社プログラムをカスタマイズし、WEB会議サービス「Zoom」を利用して、7月に2日間の日程で研修を行いました。

弊社の新入社員研修プログラムでは、演習と振り返りを通し、職場で信頼され成果をあげていくためのビジネスパーソンの基礎(行動・スタンス)を学ぶことができます。A社でも、特に行動面で重要となる、「目的の理解」や「期待の具体化」の必要性に新入社員が自ら気づき、実践できるようになることを目指しました。

研修1日目は、基礎となる行動やスタンスの概念(図表1)を学び、上司役のトレーナーから指示された企画業務の演習を行いました。しかし、指示された業務の目的を確認しないまま進めてしまい、期待されていた形で企画案を出すことができませんでした。このような失敗経験をグループで振り返り、研修2日目には、さらに複数の演習を通して、上司役のトレーナーとの打ち合わせ回数を増やしたり、その際に目的を確認したりして、期待を捉えた企画ができるようになりました。

図表1 職場で信頼され成果をあげていくためのビジネスパーソンの基礎(行動・スタンス)

■オンラインだからこそリアルな職場に合わせたコミュニケーションを


A社の新入社員研修で最も重視したことは、実際の職場と同じような状況をつくり、リアルな仕事の進め方を学ぶことでした。特に、協働への意識を高めるために、上司役のトレーナーとのコミュニケーション方法を工夫しました。例えば、実際の仕事により近い演習となるよう、上司役のトレーナーへの質問や相談の方法は、内容によって部下である新入社員が選べるようにしました。単なる確認であればメールで、ディスカッションが必要な相談は打ち合わせをセッティングするなど、実際の業務のように工夫できるのがポイントです。
また、実際の職場では上司は成果にコミットするために部下への積極的な支援や介入を行います。今回の演習でも、新入社員の主体的な行動を待つだけではなく、上司役のトレーナーからもコミュニケーションを取り、新入社員と上司役のトレーナーが協働する環境をつくりました。

WEB会議サービス「Zoom」には1つのミーティングを別々のセッションに分け、複数の小グループで部屋を作ることができる「ブレイクアウトルーム機能」があります。このブレイクアウトルームは、ホストである上司役のトレーナーが自由に入退出できます。同時に視聴することはできませんが、上司役からもコミュニケーションを取りやすい環境を整えたことで、自然な形でグループワークに参加し、受講者である新入社員の様子を確認することができました。

研修の目的をぶらすことなく、実際の職場と同じような状況で演習ができるよう工夫したことで、オンラインでも集合型研修と変わらない学びを届け、新入社員が職場で実践できる基礎をつくることができました。

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事例2 B社 ~通信環境を整え、自宅からの受講で仕事の基本を身につけるオンライン研修~

B社は従業員数約650名。ホールディングスでの初主催となる新入社員研修にグループ企業の新入社員約20名が参加しました。B社の新入社員研修は、人事交流を含めた中長期的な人材育成を目的とし、今年度よりグループ横断で実施することになりました。

研修の目的は、受け身にならず、自ら考え行動する姿勢を身につけること。弊社プログラムを、B社にて用意いただいた「Zoom」で実施しました。単なる集合型研修の置き換えではなく、オンライン形式におけるベストな内容を組み立て、集合型研修と同レベルの研修成果をあげるべく、5月中旬の2日間をかけ、新入社員同士が学び合う場としました。

研修プログラムは、図表1のビジネスパーソンの基礎となる行動のうち「Focus(目的の理解・期待の具体化・進め方確認)」を高めることを目指しました。A社と同様、実際の職場と同じような状況をつくり、リアルな仕事の進め方を学ぶため、グループワークではGoogleドライブでスライドを共有し作成するなどしました。昨今の新入社員は、最新のITツールをすぐに使いこなせます。オンライン環境下でも早速分担して作業を行い、最終発表は期待以上の内容になりました。また、最後の相互フィードバックにおいても、物理的な距離を感じさせない、相手の成長を考えた率直な意見交換が行われました。

■受講環境の整備を念入りに進めた


B社の研修を成功させる上でカギとなったのは、受講環境の整備です。新入社員は全国各地の自宅から受講しました。会社貸与のパソコンを配布できる状況ではなく、自宅にパソコンを所有しているか、マイクやカメラは内蔵されているか、自宅にWi-Fi環境があるかなど、一人ひとりの受講環境を確認しました。
さらに、研修前日には30分間のガイダンスを実施し、顔合わせも兼ねて、事務局である人事と受講者で通信チェックを行いました。B社のシステム部門にも参加していただき、当日は事務局と講師がチャットで連携を図るなど、リアルタイムで受講者一人ひとりのフォローを行うことで、大きな通信トラブルを避けることができました。

オンラインで研修を受講するにあたっては、「接続が切れる」「ほかの受講者と同じ進度で学ぶことができない」といったトラブルが、クラスルームの雰囲気や個々人の学びの質を大きく左右します。
B社が初のグループ合同研修をオンライン上で成功させられたのは、研修に集中できる受講空間をきめ細かくに整えたからこそ、といってもよいでしょう。

解説のまとめ

1.オンライン研修の企画ポイント

・研修の目的を明確にし、オンラインでの実現方法を考える
・オンラインだからこそリアルな職場をイメージできるように

2.オンライン研修の準備ポイント

・通信環境に加え、出社してする場合は受講場所も考慮する必要がある

3.オンライン研修の運営ポイント

・フラットなコミュニケーションを促進できるが、過度なリラックスには注意を
・WEB会議ツールを活用して互いに学び合う場をつくる

解説1 オンライン研修の企画ポイント

■研修の目的を明確にし、オンラインでの実現方法を考える


オンライン研修を企画するときのポイントの1つは、新入社員に何を学んでもらうか、学んだ先にどういったことを実現してほしいか、という目的がブレないようにすることです。

事例のA社、B社ともに、研修の大きな目的は「仕事の進め方の基本」を身につけることであり、オンライン化はその手段の1つでした。新入社員がビジネスパーソンの基礎となるスタンスや行動を研修で学び、職場で実践できるようになるため、今までの集合型研修と変わらない効果をオンラインでどのように実現できるかを考える必要があります。

■オンラインだからこそリアルな職場をイメージできるように


まずは、オンラインだからこそ、新入社員研修における演習は、よりリアリティのある場面設定や環境で行うことが重要です。今の新入社員世代の特徴として、自身に役立つと感じたテーマについては「自分ごと」として捉える傾向があり、学習意欲が高まるためです。

そして、オンラインの場合は特に、実際の仕事に向けた実践演習だということを受講者にはっきりと伝えることが研修を成功させるポイントです。研修という配属された職場とは離れた場面でオンライン環境を活用する場合、特に新入社員には、「現実離れ」した受講環境と受け止める人も少なくありません。「先輩が経験した環境とは違う。やむを得ずオンラインで受講するなら、得られることも少なくなるのではないか?」「バーチャルなグループワークが実際の仕事の役に立つのか?」といった疑問を抱くかもしれません。しかし、実際にはオンライン研修だからこそ得られる学びもありますし、対面での仕事に生かせる経験を積むことも可能です。

さらに、今後の職場ではより一層、オンラインを活用したコミュニケーションが増えていくでしょう。VUCAと呼ばれる、正解のない複雑な時代においては、新しい環境に自ら働きかけることで、信頼と成果が生まれます。オンライン研修もまた、新入社員にとっては体験したことのない環境に身を置き、自分から働きかけることで学んでいく大きな機会となるでしょう。

オンラインだからこそリアルな職場をイメージできるように

解説2 オンライン研修の準備ポイント

オンライン研修の準備において重要なポイントは、受講環境の整備です。環境整備を怠ると、学びの機会を最大限に提供できなくなってしまうため、注意が必要です。

■通信環境に加え、出社して参加する場合は受講場所も考慮する必要がある


事例のB社のように自宅での受講となる場合は特に、インターネットなどの通信環境を確認する必要があります。また、受講する場所についても事前に調べておかなければなりません。例えば、オフィスで個室が利用できず、研修中に職場の同僚の声が聞こえてしまったり、一室で3~4名が受講していて、ハウリングが起きたりすることがあります。これらは、4月の自宅受講が多かった頃は分からなかった、出社して受講する場合の注意点です。当日になって適切な受講環境でないことが判明するパターンも多いので、出社してオンライン研修に参加する受講者には個別スペースを確保したり、事前に通信リハーサルを行ったりなどの、準備が必要です。

そのほか、主体性をより引き出し、学びを深めるために、カメラ機能やWEB会議ツールの機能を活用するとよいでしょう。その場合も機能のアップデートなどにも注意しながら、受講者向けのガイダンスを事前に行うなどして、研修当日のトラブルを避けることが望ましいです。

オンライン研修は、受講環境が異なる受講者が集まって、多くの人が慣れないWEB会議ツールの機能を利用することになるため、準備や当日の運営に手間がかかる場合もあります。なるべく当日にトラブルなく、学習効果を維持できるよう、事前に受講環境を整えておくとよいでしょう。

解説3 オンライン研修の運営ポイント

■フラットなコミュニケーションを促進できるが、過度なリラックスには注意を


オンライン研修は、実は集合型よりも心理的安全性を感じるという意見があります。画面越しの限られた情報しか相手には映らず、周囲の声や服装、温度といった周辺情報に気をとられないため、研修内容に集中できる環境といってもよいでしょう。
実際にオンライン研修においては、「遠慮せず気軽に話せた」「対面よりリラックスして構えずに話せた」「いつもの研修よりも意見が言えた」というアンケート結果もあります。また、大学生のオンライン授業では「人から見られていなくて気楽」という声もあり、特に新入社員世代にとっては他者の目を気にせずに、研修に集中できる環境をつくり出せる利点もあります。チャットなどのツールを活用し、よりフラットなコミュニケーションを促進することで、学びを深めていけるでしょう。

一方で、ビジネスマナーや仕事の進め方をテーマにする場合には注意が必要です。実際に、発表者が話しているときにリラックスしすぎてしまい、注意を促してほしいというご要望を人事の方からいただくこともあります。オンラインでは、画面越しの表情や話し方、姿勢でしか相手は判断できません。相手から見えている自分の姿でしか、相手の信頼を獲得することはできないということを研修で伝えられるとよいでしょう。

フラットなコミュニケーションを促進できるが、過度なリラックスには注意を

■WEB会議ツールを活用して互いに学び合う場をつくる


また、心理的安全性が高い半面、オンライン研修は受講者が受け身になりがちです。受講者同士が発言の順番を待ったり、言葉を整理しながら簡潔に話したりすることも多く、互いに会話をしながら互いに学び合うグループ・ダイナミックス(集団心理)が発揮されなくなります。
A社の事例のように、WEB会議ツールの機能やカメラ機能を利用して、受講者が小グループで会話できるように工夫しながら運営することで、オンラインでの効果的な学びが用意できます。

最後に

オンライン研修は、移動の時間がないことに加え、フラットな環境で学べることが最大の利点といえそうです。教える場ではなく、受講者同士が学び合う場をつくりやすい方法だといえるでしょう。
しかしながら、受講環境が整わなければその利点を最大限に生かすことはできません。通信環境だけでなく、個々人の受講環境を準備することが成功への第一歩です。

これからのオンライン研修はより進化していくでしょう。正解のない、複雑なVUCAの時代だからこそ、Try&Learnを重ねて、学び合う場がつくれます。

弊社では、受講者の気づきや実践を第一に、互いに学び合う場をつくる支援をいたします。今後は対面(集合)と非対面(オンライン)のハイブリッド型など、より効果的に学べる手法を活用していきます。

【取材協力:桑原正義、仲山 友、濱田紘成、渡部数満(順不同)】
【text:北嶋理沙】


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